『柚子森さん』は2016年6月27日より、小学館のwebサイト、やわらかスピリッツにて連載されている漫画です。この作品は、女子高校生と女子小学生の恋を描いた作品で、2017年夏現在、第三巻まで発売されています。

 作品の雰囲気としてはどたばたコメディ…と言えばいいのか、キャラクターにとって真剣な行動が、読者としては面白くて、楽しく、元気を貰えます。女子高校生と女子小学生の恋をしっかりと描きつつ、重くなりすぎず、元気を貰えます。

 この作品は何より絵柄がとてもかわいらしく、読んでいるだけで癒やされます。しっかりと描写された小学生と高校生の体格差がとても素敵。また、この漫画の持っている独特のテンポ感にあっという間に読み終えてしまうことでしょう。

あらすじ

 舞台は日本。普通の女子高校生である”野間みみか”はある日の登校中、とても美しくて可愛らしい女子小学生”柚子森さん”と出会います。この初めましての出会いは、二人にとってきっと運命のガール・ミーツ・ガールだったのです。

ヘタレで意気地なしの高校二年のみみかと、白くて小さくて華著で、凛としていて大人っぽい小学4年生の柚子森さん。この二人のドキドキするような、それでいてほんわかした日常が丁寧に描かれる作品となっています。

 一巻では、ダブル主人公、野間みみかと柚子森さんの出会い。柚子森さんに一目惚れ、惹かれていくみみか。そんなみみかにかけられるロリコン疑惑。はじめてのお家訪問……といきなりフルスロットルで話は進み、二人の関係はどんどんと強いものになっていくのです。

感想

漫画を彩る魅力的なキャラクターたち

 漫画って基本的には「このキャラクターいったいどうなっちゃうんだろう?」という興味がとても大事だと思うんです。その興味はキャラクターの持っている魅力によって生じます。なので、キャラクターをどれだけ好きになれるかどうか、がとても大事なことですよね。その点この漫画は、登場するキャラクター数自体はそれほど多くないものの、どのキャラクターもとても魅力的で、好きになれる子たちが揃っています。その最たる例が先にも述べた、ダブル主人公の”野間みみか”と”柚子森さん”なのです。

ちょっとヘタレで意気地なしで…ひょっとしてロリコン?な高校二年生の野間みみか。彼女は小学4年生・柚子森さんの繰り出す一挙手一投足に全力で揺さぶられて、体全体で喜怒哀楽を表現してしまいます。その様子が鮮烈に描かれていて、一話冒頭6ページを読むだけでも、野間みみかのことを好きになる、とまではならなくとも、好印象を抱くことは間違いないでしょう。彼女の裏表がなくてまっすぐな精神は、とても元気をもらえるのです。

そして、そんな野間みみかに熱烈な感情をむけられる、白くて、華著で、とても綺麗で素敵で大人っぽい小学4年生の柚子森さん。彼女もまた、みみかがそれほどの感情を抱いてしまうのも納得の女性であることが、作中の描写からビシビシと伝わってくるのです。とても目が大きく、笑顔が素敵な柚子森さん。幼いながらも芯が通っていて、格好良い柚子森さん。とても魅力的です。野間みみかがそうなるのも仕方ないと納得させられてしまいます。野間みみかが女子高校生で良かった。

読者を飽きさせないその展開の速度と火力

 この『柚子森さん』という漫画はとにかく展開が早いです。それちょっと生き急いでない?と読者が思ってしまうほどにバシバシ進んでいくのです。一巻一話から、野間みみかと柚子森さんの出会い、そして初めての共同作業を経て友人になるまで一気に到達するのです。一話の掴みならそんなもんじゃないか、と思われる方もいるかもしれません。実際一話だけならまあこんなもんと思われることでしょう。しかし、この漫画は二話以降もガンガン速度を上げていくのです。

 そしてもう一つ、この漫画の展開について触れるのなら、その火力がとにかく高いということです。一話一話、一気に物語が進んでいく上に、その物語の振り幅も凄まじく、ただ読んでいると「えっそこまで踏み込んじゃうの?」「そこまでいっちゃうの?」と思わされることばかりです。ぼーっと気を抜いていると、作品に置き去りにされてしまうのです。しかしそんな内容でも読みづらいなんてことはありません。作者の非常に高い漫画力が伺えます。

 しかし、そんな圧倒的な速度と火力を兼ね揃えたこの作品ですが、しっとりとした見せ場ではゆっくりじっくりとお話を魅せてくるのがとてもニクいのです。普段カッとばしているだけに、エモーショナルな展開をされると、尚更心に染み渡ってくるのです。一巻の締めくくりはとてもドキドキとさせられる締めくくりになっていて、読者としても心を揺さぶられ、みみかに感情を委ねてしまいました。とても次の巻が気になる引きになっていて、それもまた良いですね。

作品とマッチしたその作画クオリティと絵柄

 この作品のさらなる魅力は、この作品の作画の質とその絵柄が、内容と非常にマッチしていることです。先にも述べましたが、ダブル主人公、女子高校生である野間みみかと女子小学生の柚子森さん、二人の体型などの描き分けがしっかりとなされていて、この二人の大きさの差にまずハッとさせられてしまいます。小さい・華著・白い・可愛い……etcとひたすら形容詞が連なる柚子森さんですが、その形容詞に負けない描写になっています。

 また、対する野間みみかも魅力的な女子高校生として描かれています。彼女がしっかりと女子高校生であることで、”小学生との恋愛”という文面だけみると危ういものを、コメディで楽しく読むことのできる存在へと昇華しているのです。柚子森さんにあっちゃこっちゃ揺さぶられる野間みみかが非常にかわいい作画で描かれています。また、みみかの幼馴染で同じ高校に通う、しーちゃんこと”志摩栞”も魅力的なキャラクターになっています。

 可愛らしい絵柄と喜怒哀楽がしっかりと伝わってくる作画、このふたつの両輪があってこそ、この『柚子森さん』という作品は成り立っているのだなと、読んでいてヒシヒシと伝わってきます。柚子森さんにドキドキする野間みみか、この構図だけでは成り立たないのです。それを成立させるにはとても可愛らしい柚子森さんと、あたふたする野間みみかを描ききれることが必要でした。だからこそ、この作品は他にはない唯一無二のものとなっていると感じます。

まとめ

 初めて『柚子森さん』を読んだとき、「こういうのもあるのか!」と、とても衝撃をうけたことを今でも覚えています。女子高校生と女子小学生の恋愛というテーマで、これだけ明るくて、楽しくて、でもギャグに寄りすぎることはなく、しっかりと二人の感情を描いている。そんな作品と出会ったのは、これがはじめてでした。間違いなく唯一無二です。恋愛というテーマから逃げずに、この作風を通しているのはさすがと言うしかありません。

 とはいえ、恋愛というテーマから逃げない、と述べましたが、作風としては”恋愛”というよりは日常モノといったほうがおそらく近いでしょう。二人の日常が描かれつつ、二人の間の恋愛から逃げない、ということです。なので、いわゆる日常モノ、とくにコメディよりの作品が好きな方にもオススメできる作品となっています。ふたりの日々が丁寧に描かれているので、その空気感に浸ることができるのです。そんな作品が好きな方にもオススメです。

 この作品は火力が高いので、はじめて読んでみたとき、その内容に面食らうかもしれません。けれど、柚子森さんに対するみみかの反応はコメディチックに描かれているので、純粋に楽しく、面白く受け取ることができます。そして、柚子森さんやみみかがとにかく可愛らしく生き生きとしていて、そんな彼女たちが一生懸命に日々を過ごしているので、それだけでも癒やされる作品となっています。疲れたときに読み返すと、元気を貰えます。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10