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恋と嘘(7) (マンガボックスコミックス)

昨年アニメ化を果たした『恋と嘘』の第7巻が発売されました。アニメ化以前から原作を追っていた身からすると嬉しい限りです。マンガボックスでの連載も追ってはいるんですが、やはり単行本でまとめて読めると満足感が違いますね。

国が様々なデータから運命の人を算出し、結婚相手を決めてしまう超・少子化対策基本法が施行されている架空の日本を舞台にした本作。『恋と嘘』を読み始めたばかりの頃は設定のインパクトだけで押し切る漫画だと思っていたのですが、物語が進むにつれ本作の描く恋の重さと深さに圧倒され、当時の私はなんて浅はかだったのだろうと反省するばかり……。

ムサヲ先生の持ち味である艶めかしいヒロインたちの姿も魅力の7巻ですが、それ以上に「恋とは何なのか?」と問いかけるメッセージ性が凄まじい!恋と嘘』というタイトルの核心に迫り始めた本巻の魅力について、今回は一気に掘り下げたいと思います!

あらすじ

根島由佳吏(ねじま ゆかり)は政府通知によって決められた結婚相手、真田莉々奈(さなだ りりな)の協力を得て、初恋の相手である高崎美咲(たかさき みさき)と付き合うことになる。政府通知を破棄するためには様々な障害が残っているものの、二人は普通の彼氏と彼女としてデートへ出かける。

束の間のデートを楽しんだあと、二人は口づけを交わし互いの愛情を確かめ合う。これ以上ないくらいお互いを愛し合っていることがわかってもなお、美咲は由桂吏に「莉々菜と幸せになってほしい」と告げる。真意を確かめる間もなく、由桂吏の前から姿を消す美咲。彼女は悲しみを堪えきれず、帰り道で一人泣き崩れてしまう。

美咲の言葉に翻弄される由桂吏。そんな彼の前に現れたのは由桂吏と莉々菜の政府通知担当である厚労省の職員、一条だった。由桂吏の悩みを見抜き、相談に乗る一条。しかし、その様子が突然急変して……。

第7巻の見所

美咲のついた嘘が切なすぎる

由桂吏と莉々菜が政府通知を破棄する決意をし、これでようやく美咲と結ばれることになるかと思いきや、そう簡単にいかないのがこの『恋と嘘』という作品。というかもう最近の流れを見るに由桂吏と美咲が結ばれる未来はないのだろうなと……。そのふわふわとした悪い予感を確固たるものに変えたのが、美咲がデートのあとに由桂吏についた嘘です。

わざわざ「これから嘘をつく」と宣言し、「でも、この嘘はいつか本当にしなきゃいけない」と悲しそうにつぶやき、最後に「莉々菜と幸せになってほしい」と本音混じりの嘘をつく美咲。さっきまで情熱的なキスをしていたのに!「ヘンになっちゃう」とか艶めかしい表情で言ってたのに!そんな切なすぎる嘘をすぐさま言うなんてどれだけ辛い思いを抱えていたのだろうか……。

美咲には由桂吏と結婚できない複雑な事情があることは以前から匂わされていますが、由桂吏と莉々菜が政府通知を破棄すると言っても無視することはできないほどの深刻な理由のようです。普通の恋愛ものなら順当に結ばれるであろう初恋の相手を、こんなにも近くて遠い存在に描くって本当にすごい作品ですよ。

一条の言葉が刺さりすぎる

個人的に第7巻のハイライトはトイレの中で二人っきりで行われる(!?)一条の恋愛講義です。これまで、何を考えてるかいまいちわからないキャラとして描かれていたんですが、今回の話で彼女の輪郭がかなりはっきりしてきました。

ここで語られる一条の言葉にはすごく説得力があって、政府通知という仕組みの本質をえぐり出しています。好きって気持ちはとても不確かなもので、長い結婚生活を経て色あせていく可能性も十分にあります。そうなった時に政府が保証してくれた結婚相手という拠り所があるのとないのとでは後悔の度合いがまったく違う。自分の恋心の責任を取るのって実際はとても難しいことなんです。

ちなみに一条はこの時、かなり卑怯な色仕掛けも駆使してきてとてつもない強引さがあります。でも、その強引さが一条の心の歪みを表現していて余計に由桂吏の心に突き刺さり、圧倒されるんですよね。ちなみに一条の色仕掛けは必見です。こんなことされたら思春期の高校生は誰だって股間が反応しちゃうよ……ずるすぎる。

莉々菜の優しさが暖かすぎる

美咲の嘘にしろ一条の講義にしろ本巻は由桂吏にとって辛い出来事が多すぎる……。その中にあって由桂吏を友人として支えようとする莉々菜の優しさがひときわ輝くのです

美咲の嘘と一条の講義にこてんぱんにされた由桂吏を莉々菜は優しく抱きしめ慰めます。政府通知を破棄する手前、こんなところを見られたらまずいと由桂吏は言いますが、「大事な友だちだから」と毅然とした表情で答える莉々菜。異性として好きとかそういう気持ちは関係なく、一人の人間として由桂吏を大切にしている莉々菜の優しさが滲み出ていますね

その一方で、莉々菜の由桂吏に対する恋心もちゃんと描写されています。上のコマは「洋服を由桂吏に褒めてもらいたかったな」と残念がる莉々菜。多分、美咲との恋を応援するために自分の気持ちを押し殺そうとしてるんだと思いますが、簡単にコントロール出来ないのが恋心。由桂吏を慰めるシーンで友情を強調したのも、実は内なる恋心を押さえつけるためだったのかもしれません。ああ、そう考えると莉々菜の心情も切ない……。

まとめ

恋と嘘第7巻には29.5話として仁坂と由桂吏の話が描き下ろされています。男でありながら同性の由桂吏を好きになってしまい、しかもその由桂吏が美咲や莉々菜に奪われる様を黙ってみているしかないという辛い境遇に置かれている仁坂。第8巻では彼についてのエピソードが中心に描かれるようで、どのような進展をするのか楽しみですね。

ちなみに私は随分前から莉々菜派だったのですが、7巻を読んだら美咲をこのまますっぱり切り捨てるのも辛すぎるように思えてきました……。もうね、16歳の高校生が背負えるような問題じゃないですよ。だからこそ、大半の人は政府通知を受け入れてそのまま結婚するんでしょうけど、由桂吏は今後どんな選択をするんでしょうか。続きが気になります。

ダブルヒロインの設定をこれ以上ないくらいテーマにうまく結びつけている恋愛漫画なので、まだ読んだことない人にもぜひ読んでもらいたい作品です。まだ7巻だし余裕で追いつけます。エッチな絵もたくさん見られます。いいから読め!

物語の行間に潜む感情の機微を炙り出せるような記事を書きたいです。ショートカットで元気な女の子が大好きなので、オススメの作品があったらご一報ください。

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