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『ダンジョン飯』や『空挺ドラゴンズ』など異世界グルメものの漫画はジャンルとして定着しつつあります。ドラゴンをはじめとしたモンスターの肉の味が気になるという人も多いのではないでしょうか?

『マズ飯エルフと遊牧暮らし』の場合は異世界グルメものでもアプローチの仕方が異なります。なぜなら、味覚の発達していないエルフたちのもとに、味覚が発達した現代人が迷い込むことから始まるからです。

異世界に迷い込んだからといって身体能力が上がるといったチートがないのもポイントです。あくまで身近にあるもので『メシマズ』のエルフたちの食生活を改革していく、いわば食の異世界転生物になっているのです。

あらすじ

サブローは将来を期待される高校球児でしたが、故障で野球を諦め、マネージャーとして過ごしています。マネージャーとして部員の食事を作るなど積極的な活動に励んでいましたが、ある日突然異世界に飛ばされてしまうのです。

原因不明のまま異世界に迷い込んだサブローを助けたのは、草原で遊牧生活を営む草原エルフのポポとぺぺでした。しかし、3日間食事もできずにさまよったサブローに出された異世界初の食事は、驚異的な不味さの料理だったのです。

命の危機を感じるほどの不味さに驚愕したサブローは、ポポとぺぺに自分が食事を作ることを提案します。異世界の食材で料理に取り掛かるサブローですが、料理開始後に料理の出来次第では掟によって処刑されるという衝撃の事実を知ることになるのです。

感想

エルフのヒロインは巨乳で美人だけど飯マズ?!

しらたま。しらたま。

標準的(?)な草原エルフの料理風景がこちら…… 不穏な気配しかしない。

この作品を語る上で欠かせないのがエルフの飯の不味さです。タイトルでマズ飯というからには食事が美味しければ詐欺になってしまいます。サブローがはじめて食べたポポの食事は命の危機を感じるほどのマズさであり、味の悪さが物語り鍵にもなっています。

注意したいのは、ポポが作る料理が極端に不味いというわけではないということです。メシマズ系のヒロインは漫画キャラの定番ですが、そもそも草原エルフには料理のレシピが一つしかなく、ポポは不味い料理以外の料理を知らないのです。

エルフで巨乳で美人、ちょっとドジで不器用とテンプレを踏んでくるポポですが、さらに料理に対する無知さが加わっています。異文化にもほどがあるだろうと突っ込みたくなるところですが、そんなヒロインとサブローがどう関わっていくかも見所になっているのです。

不思議な食材ではなく、身近な素材でおいしいを作る

ファンタジーのグルメといえば、モンスターを捕らえて食事にするというスタイルが定着しつつあります。しかし、『マズ飯エルフと遊牧暮らし』の場合はモンスターなどは登場しません。あくまで身近にある素材を生かして美味しいものを作っていくことが特徴になっています。

遊牧生活を行っているということは、農業ができる土地が少ないということとイコールになることが多くなります。農業に適した土地がある場合は、遊牧よりも定住したほうが生活の負担が少なくなることが一般的だからです。

土地が貧しく、使える食材が少ない中でいかに工夫して美味しいものを作っていくかがサブローの腕の見せ所です。食事が美味しくないからこそ考えるという、人の知恵の物語でもあるのです。

生活習慣はモンゴルが元ネタになっている?

遊牧を営む草原エルフの生活習慣は、モンゴルの遊牧民を参考にしていると思われます。羊(異世界ではメーメー)の糞を乾燥させて燃料にすることや、塩が海から取ったものではなく岩塩であるなど、知識がある人にはピンとくる箇所があるからです。

また、市場でメーメーに売りに行くシーンもありますが、安さに驚く人もいるかもしれません。メーメー8匹で銀貨3枚、銀貨1枚は布10枚かカゴ1杯のネギ程度の価値しかないからです。

野菜が育ちにくい土地しかない国では、肉よりも野菜が高いのが当たり前になります。ファンタジーらしくところどころフィクションが入る一方で、根本的なリアル志向が垣間見える部分にもなっているのです。

まとめ

『マズ飯エルフと遊牧暮らし』は料理という文化を知らないエルフたちに、料理と「美味しい」を伝える物語になっています。エルフたちには美味しいという概念自体がなかったため、サブローの存在自体がチート状態になっていくのです。

ただし、シビアなエルフの掟の中では、ちょっとしたミスが命取りになる可能性もあります。基本的に貧しいからこそ過剰なまでに掟が厳しくなっている面があり、だからこそ料理が発展しなかったという背景も見えてくるのです。

1巻終了間際に、サブローと同じ、異世界人の姿がちらつくのもポイントで、食の世界がどう広がっていくのかも見所になっています。

月10冊程度、年間100冊超の漫画を読むフリーライター。非定期で友人と百合漫画を語る会を開きますが、ジャンルは不問で何でも読みます。

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