ラブひな(3) (講談社コミックス)

主人公の浦島 景太郎が、祖母から受け継いだ女子寮ひなた荘の管理人を務めながら東大合格を目指すラブコメの金字塔「ラブひな」。紆余曲折ありつつも、2巻ではとうとう景太郎がセンター試験を突破し、東大2次試験に臨みました。

共に試験を受けた景太郎と成瀬川の合否が発表されるのが、今回レビューする「ラブひな」第3巻です。3巻では、景太郎が東大を目指すきっかけとなった「約束の女の子」に関する謎にも更なる進展が訪れます。また、「約束の女の子」について知る新キャラクターも登場するので目が離せません。

ラブひなは、景太郎が管理人を務める女子寮ひなた荘を舞台にした物語です。しかしこの巻は少し特殊で、景太郎と成瀬川が日本各地を旅するというエピソードになっています。東大受験のために寝る間も惜しんで努力を続けてきたはずの2人がどうして旅に出ることになったのかは…レビューを読んでみてのお楽しみです。

あらすじ

ひなた荘の管理人の仕事をこなしながら受験勉強を続け、ついに東大2次試験を受けることになった景太郎。前巻のラストでは極度の緊張で失敗を重ねてしまい、一度はあきらめて試験会場を退出するところまで追い込まれてしまいました。しかし一緒に勉強を続けてきた成瀬川の激励により本調子を取り戻し、心機一転して試験に挑むことができました。

景太郎は成瀬川の姿に「約束の女の子」の姿を重ね、成瀬川こそが幼少時に将来を誓ったあの子だと確信します。実は絶不調だったはずの景太郎が東大2次試験を怒涛の勢いでこなすことが出来たのは、「約束の女の子」である成瀬川のためでもありました。しかし、そんな景太郎の想いを知った成瀬川は、意外な反応を見せます。

そしていよいよ東大合格発表の当日。合否を確認するためにそろって東大を訪れた景太郎と成瀬川でしたが、その結果が原因で2人は仲違いすることに。景太郎と成瀬川は誰にも会いたくなくなり、別々に一人旅に出てしまいます。ところが旅行先でバッタリ出会い、結局2人で旅行することに…景太郎と成瀬川の仲はこれまでより親密になっていくのでした。

感想

景太郎の想い撃沈…!?成瀬川は「約束の女の子」ではなかった?

前巻のラストで、東大での再会を誓った「約束の女の子」の正体が成瀬川だと確信した景太郎。おかげで脳がフル回転し、東大2次試験はこれまでに無いほど絶好調で終えることができたようです。ヒロインたちが待つひなた荘にも機嫌よく帰還し、まだ全ての試験が終わったわけでもないのに祝勝会まで開いてしまいます。成瀬川が「約束の女の子」なのかどうか真相の確認すらしないまま、景太郎は東大に合格したあとのデートプランや結婚の話まで考えて幸せそうにしています。

ところがそんな景太郎の姿に不信感を抱いた成瀬川は、景太郎の言う「十五年前の約束」の意味を確認してみることに。景太郎が自分のことを「約束の女の子」だと思っているということを知った成瀬川は、「それ私じゃないよ」と笑顔で告げます。成瀬川は「十五年前っていったら私2歳じゃん」と的確な理由で景太郎の心にトドメを刺します。1巻~2巻までを見ても、ラブひなという作品の中心的存在だった成瀬川が、ここにきてメインヒロイン脱落か?と思われるような衝撃のシーンでした。たしかに、2歳では「将来一緒に東大に行こう」なんて約束はできそうにもありません。

1人で勝手に盛り上がっていた景太郎はこの事実に打ちのめされ、東大2次試験までの情熱が霧散してしまいます。成瀬川もまた「ある人との約束」を守るために東大を目指していたのですが、成瀬川がその人と約束したのは2年前とのことなので、少なくとも景太郎とその約束は全く関係ないようです。ここで景太郎は抜け殻のようになってしまったのですが、「成瀬川が東大合格を約束したある人」とは誰なのかという新しい謎が出てきました。本当に成瀬川は景太郎の「約束の女の子」とは無関係なのか…まだまだ断定はできそうにありません。

景太郎まさかの東大不合格!しかも成瀬川まで…!?

このあとのストーリーを語る上で必要不可欠な情報なのでネタバレになってしまいますが、景太郎は東大受験に失敗してしまいます。3浪目ともなると不合格を知っても落ち着いたもので、景太郎はうろたえる様子もなくため息だけついて、成瀬川のもとに向かいます。一緒に合格発表を見に来たとはいえ、模試で全国トップを取っている成瀬川が不合格であるはずが無いと考えた景太郎は、成瀬川に明るくお祝いの言葉をかけます。しかし無言でその場から立ち去る成瀬川…実は、成瀬川も不合格になっていたのです。

メタ的な考え方ですが、東大の合格はラブひなという作品における最終目的のひとつなので、まだ単行本3巻という早い段階で景太郎が受かるとは思っていませんでした。しかし模試で全国トップだったはずの成瀬川が東大に落ちるというのは、個人的にかなり意外な展開でした。前述の通り、作中で「約束の女の子」ではないことが明かされた成瀬川はこのまま合格してストーリーからフェードアウトするという展開も無くはないと思ってました。ひなた荘にはまだ「約束の女の子」の候補がいますし、メインヒロイン交代なんて展開もあるものかと…

めでたく、というと語弊がありますが、ふたりそろって浪人生となってしまった景太郎と成瀬川は、祝勝会の準備をしているひなた荘に帰ることもできず、そのまま2人で居酒屋になだれ込みます。最初は成瀬川を慰めていた景太郎ですが、会話の流れから「約束の女の子」のことを馬鹿にされ、口論になってしまいます。この作品はここまで景太郎と成瀬川の受験勉強を中心にストーリーが展開してきましたが、東大の合格という大きな目標を失った2人は、この口論をきっかけに作中で初めて勉強から離れます。ただし東大不合格のあとに起こる新展開こそが、ラブひなという作品が「萌え系マンガ」としての本領を発揮するエピソードだと感じました。

成瀬川の傷心一人旅…のはずが何故か景太郎との二人旅に

居酒屋で成瀬川とケンカ別れした景太郎は、ひなた荘のメンバーにも告げずに一人旅に出ました。誰にも会わずにゆっくり過ごすことで今後どうするのかを考えようとする景太郎でしたが、乗り込んだ京都行きの新幹線の中で成瀬川にバッタリ遭遇してしまいます。実は成瀬川も景太郎と同じように、ひなた荘に帰ることもできずに傷心旅行に出るところだったのです。その後も行く先々で出くわした2人は、最初はいがみ合っていましたが、結局はあきらめて2人で傷心旅行に出ることになります。

ひなた荘を舞台にした受験勉強が中心だったこの作品で、3巻にして初めて受験勉強からもひなた荘からも離れた「傷心旅行編」が始まりました。これまでの展開も十分面白かったのですが、この巻の展開は今までの雰囲気とは一変していて読み応えがありました。まだ恋人同士でも何でも無い景太郎と成瀬川ですが、この旅行を通して一気に親密になります。旅行先で遭遇した男女が成り行きで同行するのは、恋人同士が旅行するよりもドキドキ感がありますね。これぞ萌え系マンガというか、作者の赤松先生はこうゆう流れを見せるのが本当に上手いなと関心させられます。

また、この傷心旅行では新しいヒロインが登場します。景太郎と成瀬川が鹿児島行きのフェリーのなかで出会った乙姫 むつみという女性です。むつみもまた景太郎たちと同じく東大受験に失敗し、3浪目の傷心旅行に出ている途中でした。不思議な縁を感じて旅に同行するむつみですが、実は今後の展開を大きく左右する役割を持っています。3巻では、傷心旅行を通して少しだけお互いを男女として意識するようになった景太郎と成瀬川が、自由奔放で天然なむつみに翻弄される様子にも注目です。

まとめ

ラブひな第3巻には、これまでとは一風変わった新展開が楽しめるエピソードが詰まっていました。これまでは受験勉強ばかりで色気の少なかった成瀬川ですが、この巻では一人の女の子として旅行を楽しむ成瀬川の姿を見ることができます。景太郎が学生時代モテなかったというのは散々語られてきた事実でしたが、実は成瀬川も高校時代は勉強漬けの日々を過ごしていたため彼氏ができなかったことが明かされます。女性に対する免疫の無い景太郎と、男性に対する免疫の無い成瀬川が二人きりで旅をするというのも危険な香りしかしません。

傷心旅行も後半になると、新ヒロインの乙姫 むつみを加えて男女3人での旅になります。景太郎と成瀬川の2人きりで旅をしている間のようなドキドキはありませんが、これはこれで景太郎が羨ましいものです。3巻を通して見てみると、1巻~2巻までに比べるとかなり萌え要素が増えたという印象を受けました。これまでは受験勉強や管理人としての仕事のなかで、ヒロインたちと接してきた景太郎ですが、この巻では男女として成瀬川と向き合っていることがわかります。実際、成瀬川と同じ部屋に宿泊した景太郎は夜這いをかけようとするのですが…どうなったのかは実際に読んで確認してみてください。

3巻では景太郎と成瀬川の傷心旅行が中心に描かれていますが、その裏でカオラとしのぶが日本全国を旅している様子も描かれています。実は景太郎と成瀬川が傷心旅行に出たのを心配したカオラとしのぶは、2人を探すために日本全国を駈けずり回っているのです。そのほとんどはエピソードごとのオチというかミニコーナーのように扱われてしまうわけですが、カオラとしのぶのコミカルな旅の模様は、ややシリアスな描写も多かった傷心旅行編の清涼剤になっています。果たしてカオラとしのぶは、無事に景太郎たちを探し出してひなた荘に連れ戻すことができるのでしょうか…!?という点も、ラブひな第3巻の注目ポイントでした。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9