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ラブひな(4) (講談社コミックス)

「ラブひな」は、個性豊かな美少女たちが暮らす女子寮ひなた荘の管理人、浦島 景太郎が東大合格を目指す物語です。景太郎が東大を目指す理由はただひとつ、かつて将来を誓い合った「約束の女の子」と東大で再会することを夢見ているからです。今回は、そんなラブひなの単行本第4巻のレビューをさせていただきます。

前巻、東大受験に失敗した景太郎と成瀬川は日本各地を飛び回る傷心旅行に出ていました。最初は仲違いしていた2人でしたが、一緒に旅をするなかで徐々に打ち解けていき、最終的には成瀬川が初めて景太郎を異性として意識するまでに至りました。

4巻では、ちょうど景太郎と成瀬川がひなた荘に帰ってくるところから物語が始まります。結局は傷心旅行中に気持ちの整理がつかなかった2人は、ひとまずひなた荘でこれまで通りの日常を過ごしながら今後のことを考え始めます。来年の東大受験に備えるか、いっそ就職してしまうか…景太郎と成瀬川は、どのような選択をするのでしょうか。

あらすじ

ひなた荘のメンバーに連れ戻される形で無事に傷心旅行を終えた景太郎と成瀬川。しかし2人は今後の予定について何の結論も出せておらず、ひなた荘に戻ってから進路を考えることにしました。ところが忙しい受験勉強の日々から抜け出した2人は、どこか宙ぶらりんな日々を送ることになります。

特に3浪目の景太郎はほとんどあきらめムードで、ひなた荘の管理人をしながらバイトを探し始めます。そんな景太郎に寂しさを感じて「フリーター」扱いする成瀬川もまた、来年の東大受験を迷っているままでした。2人とも今後の目標を決めることができないまま、少しづつ日々は流れていきます。

そんなある日、成瀬川が東大合格を目指すきっかけを作った「約束の人」である瀬田さんがひなた荘に現れます。瀬田さんに憧れて東大を目指していた成瀬川はもちろん、景太郎もまた、瀬田さんの出会いに影響されて変わっていきます。あきらめかけていた2人の東大への情熱は、再び燃えあがってゆくのでした。

感想

成瀬川の「約束の人」瀬田さんがついに登場

ラブひな単行本第2巻あたりからちらほら匂わされていた成瀬川の「約束の人」、瀬田 記康さんがついに登場しました。瀬田さんはかつて成瀬川の家庭教師を務めていた人物で、現在は東大で講師をしている大人の男性です。高校一年生のころの成瀬川は瀬田さんに恋をして、少しでも彼に近づこうと東大を目指していたことが明かされます。傷心旅行で恋仲になりかかっていた景太郎と成瀬川の2人でしたが、成瀬川が東大を目指す理由を知った景太郎は少し距離を置くのでした。

来年の東大受験もあきらめて、とりあえず働こうと考えた景太郎はバイト情報誌から適当に決めた荷物運びのアルバイトに応募します。実はそのアルバイトを募集していた人物こそが瀬田さんだったのですが、瀬田さんのことを噂でしか聞いておらず顔すら知らなかった景太郎は、何の疑問も持たずに働き始めました。雇い主の瀬田さんは東大の講師をしていたため、皮肉にも景太郎は不合格になったばかりの東京大学のキャンパスで荷物運びのバイトをすることになります。

瀬田さんの登場で、物語序盤からの謎がひとつ解けました。メガネを取ればかなりの美少女である成瀬川が、どうして貴重な高校生活を犠牲にして彼氏も作らず勉強に励んでいたのか…それは、憧れの瀬田さんとの「約束」を果たすためでした。意外だったのは、瀬田さんが成瀬川と再会する前に景太郎と出会ったことですね。もちろん、瀬田さんも景太郎の素性を知っていたわけではなく、瀬田さんの元にはバイト求人誌を読んだ景太郎がたまたま応募したに過ぎません。景太郎も瀬田さんも、まさか成瀬川を通して三角関係になっていると知らないまま親睦を深めていきます。

瀬田さんとの出会いが景太郎を変えていく

景太郎にとってはいわば「恋敵」であるはずの瀬田さんですが、その自由奔放な姿は景太郎の人生観にも大きな影響を与えることになります。無茶苦茶な行動をとりながら、東大の人気講師であり、ジークンドーの達人であり、考古学の権威であるという作中最強の超人 瀬田さんに景太郎も憧れを抱きはじめます。そんな景太郎のことを瀬田さんのほうも気に入り、荷物運びの日雇いバイトだったはずの景太郎は、考古学研究者である瀬田さんの助手としてスカウトされました。

アルバイトを探し始めた時点で、景太郎は東大受験をほとんどあきらめたような素振りでした。しかし瀬田さんと共に東大で働くなかで、景太郎のなかにある東大受験への情熱が少しづつ蘇りはじめました。今でこそ超人となった瀬田さんもかつては3浪して東大に入学したのだと聞いた景太郎は、自分の境遇と重ねてやる気を出し始めました。ラブひなという作品において、瀬田さんの存在は景太郎の指針を決める最重要人物になったといっても過言ではありません。

こうして瀬田さんに影響された景太郎は考古学の世界に興味を持ち始め、再び東大を目指しはじめます。とはいえ、この時点ではまだ成瀬川の「約束の人」が瀬田さんであるという事実に景太郎は気づいていません。景太郎、成瀬川、瀬田さんの三角関係に気づいているのは今のところ成瀬川の親友であるキツネだけなのです。4巻では何も知らない瀬田さんがひなた荘を訪れ、成瀬川に会おうとするエピソードがあるのですが…どうなってしまったのかは本編を読んでのお楽しみです。

新ヒロイン「サラ・マクドゥガル」の登場にも注目!

4巻からは、新ヒロインのサラ・マクドゥガルが登場します。新ヒロインとは言っても、サラは瀬田さんが育てている小学生の女の子です。サラの登場により、ひなた荘の美少女はどんなストライクゾーンを持つ男性にも対応できるようになった感がありますね。ツンデレ、大人の女性、大人しい少女、エスニック、剣道少女、そしてサラの登場により幼女属性が追加されました。さすが萌え系マンガの金字塔と評されるラブひな、美少女のタイプにも隙がありません。

サラは小学生なので、さすがにいきなり景太郎に恋をする…という役回りではありませんが、実はラブひなのストーリー上かなり重要な役割を持っていたりします。この巻でサラに関する謎の全てが明らかになるわけではありませんが、サラの存在が様々な伏線を残しています。未婚であるはずの瀬田さんは何故サラを育てているのか、そしてサラが瀬田さんのことを「パパ」と呼ぶ訳は…?意外に深い謎や張り巡らされた伏線が多いのも、ラブひなという作品の魅力といえるでしょう。

サラの謎が完全解明されるのはまだまだ先にしても、サラと景太郎の出会いは、すでに今後の展開に大きな影響を与えています。そもそも単なる荷物運びのバイトだった景太郎を、瀬田さんがわざわざ助手として雇おうと思ったのは、景太郎がサラと仲良くなったからなのです。実際はというと、サラは景太郎に嫌がらせをしていただけなのですが、結果として瀬田さんと景太郎を繋ぐパイプのような役割を果たしています。もしもサラがいなかったら、今後名作として語り継がれるラブひなの物語は生まれなかったかもしれませんね。

まとめ

1巻がひなた荘に住むヒロインたちの顔見せ、2巻が東大受験編、3巻が傷心旅行編…と続いて、4巻は瀬田さん・景太郎・成瀬川の三角関係を描いたエピソードとなっています。こうして読んでみると、ラブひなという作品は巻が変わるごとにキッチリとストーリーを区切って展開しているのですね。エピソードごとに1話完結の物語として読むこともできれば、通して読むと巻ごとに違うストーリーがあることに気付かされます。何十年も前のマンガだとは思えないような完成度ですね。作者の赤松健先生がラブコメの巨匠と呼ばれることにも頷けます。

この巻に収録されているエピソードは、成瀬川の「約束の人」として存在を匂わされ続けてきた瀬田さんを中心に進んでいきます。異性としてお互いを意識し始めた景太郎と成瀬川、そこに現れた成瀬川の初恋の人、瀬戸さん…なんて設定だけ聞くとドロドロした関係性が展開されそうなものですが、ストーリーは意外な方向に進んでいきます。当の景太郎が、瀬田さんに嫉妬心を抱くというよりは、成瀬川以上に瀬田さんに憧れ始めるのです。もちろんBL展開…というわけではありません。少し今後のネタバレになってしまいますが、景太郎は瀬田さんを目標にして努力を重ねていくことになります。

ひなた荘には他にも景太郎に恋心を抱いているヒロインが複数人いますし、また瀬田さんも成瀬川意外のある人物から好意を抱かれています。こうしてみると、ラブひなは三角関係どころか、五角関係、六角関係…というような状態ですが、それでも不快な展開にならないのは作者の腕でしょうか。序盤は萌え系の要素よりも受験勉強の要素が強かったラブひなですが、ここからはラブコメが加速していきます。萌え系マンガに馴染みの無い方でもラブひなを1巻から通して読めば、4巻あたりで萌え系マンガの世界にどっぷりハマってしまうでしょう…というのは、かつてラブひなから萌え系マンガにはまった私の意見です。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

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