主人公の漫画家志望の青年が、巨乳女子小学生のあまえちゃんにひたすら甘えるだけ……という「妄想が過ぎるぞ」としか言いようがない設定で話題になっているちると先生の初単行本「とっても優しいあまえちゃん!」1巻の紹介です。

ニコニコ静画などで連載されているこの作品を読んだ時の最初の感想はやはり「妄想が過ぎるぞ」で、あまりにもドストレート過ぎる作者の妄想の披露に半ばあきれてしまっていました。頭を働かせてこの作品を読むと「現代の病」「現代オタクの末路」「ただただ恥ずかしい」というような感想しか出てきません。

ですが……気が付いたら繰り返し繰り返し連載ページを読んでしまい、いつの間にかamazonでポチらされてしまっていたのでした。意識は拒否しているのに、体があまえちゃんという母性を求めてしまっているのです。「バブみ」を味わいたい、現代オタクの狂気の一端に触れたいという方は是非ご一読を。

あらすじ

大学受験に2度失敗し、代わりに漫画家を目指して上京するも親や友人から白い目で見られてしまうという地獄を味わっていた主人公の「おにーさん」には生きていく上での楽しみがあった。それはマンションの隣の部屋に住んでいる巨乳女子小学生のあまえちゃんの存在だった。

あまえちゃんはおにーさんの部屋によく訪ねてきてくれ、なおかつ甘えさせてくれるのだ。頭を撫でててくれる。いっぱい褒めてくれるのはもちろんのこと、大きな胸に顔をうずめてぎゅっと抱きしめて甘えさせてくれるのだった。

おにーさんの部屋で、公園で、遊園地で、お風呂で、あまえちゃんは甘えさせてくれます。友達の前でも、警官の前でも甘えさせてくれます。そして「あまえちゃん好き~!!」というおにーさんの心の叫びが響きわたるのです。

感想

漫画家志望の青年が巨乳女子小学生に甘えるだけという狂気

漫画をヒットさせるには二つの方法論があります。一つは「徹底的に読者の好みを調査して漫画に取り入れる」というもの。もう一つは「俺が好きなものは読者も好きに違いないと信じて突っ走る」というものです。バクマンで語られていたヒットの2パターンですね。「とっても優しいあまえちゃん!」は、「巨乳+女子小学生+母性(バブみ)」という最近のオタ受け属性がこれでもかと○郎のラーメンの具材のようにぶち込まれています。だから僕も最初は「ラブひな」「ねぎま!」の赤松健先生のような徹底的な市場調査によって作られた漫画かと思っていました。

でも違いましたね。この漫画はそういう賢い作り方ではなく「俺はこんなんが好きやねん。お前らはどや?」というスタンスで描かれているのですよ。それは第1話を読んだだけでわかるはずですし、袖でちると先生も「試行錯誤の末、一番最初に単行本になったのは後先考えずに夢をぎゅうぎゅう詰めにしたこの漫画だったようです。」と書かれていることからもわかります。まぁ、並みの漫画家なら「巨乳女子小学生に甘えるだけ」という漫画は怖くて描けませんよ。ちると先生の他の読切漫画を読んだことがあるのですが、ギャグ寄りですけどかなり知的にプロットを作られている印象がありました。それがこのありさまだよ!

ヒロインのあまえちゃんが可愛い!癒される!という具合に褒めたいのですが、あまりにもあんまりで赤裸々な妄想具合に、先にこの漫画に溢れる狂気について語らざるを得ないのです。巨乳女子小学生が出てくる萌え漫画は結構たくさんあります。ロリ漫画だったら一人巨乳の女の子を置くということがあるのです。ちると先生の画力も高く可愛いのですが、そこまで過激なエロは描かれていません。それでもこの作品が他と一線を画して狂気に溢れているのは主人公とあまえちゃんの関係性でしょう。

「こんな絵描いてて恥ずかしくないんか」という批判

この漫画は賢い頭で読んだらいくらでも批判できてしまうのです。「作者が主人公に自己投影していて気持ち悪い」「小学生ヒロインというだけでもアレなのに、巨乳という属性を盛るのもきもちわるい」「女性を馬鹿にしている」「ストーリーがない」「主人公が一切成長しないし、それをヒロインが許していて共依存のような関係になっている」「妄想が過ぎるぞ」「セリフ廻しの全てがきもちわるい」「オタクの妄想を絞り出して紙にぶちまけてるだけ」「これを読んで喜んでいる人もきもちわるい」……。まぁ、いくらでも悪口をあげることはできます。僕も読者として「まぁその通りではあるかもしれないな」とは思います。

でもそういう漫画の読み方、捉え方って少し古いんですよ。漫画は全てワンピースとかバガボンドであるべきかと言えばそうじゃあないんです。「とっても優しいあまえちゃん!」は気持ち悪いロリコン漫画が一巡して高い批評性を持った――というか、高度なギャグ漫画になっているのです。漫画購入を検討する前に「ニコニコ静画」のコメント付きの第1話を試し読みしてみるといいでしょう。この漫画をどうやって楽しめばいいかのヒントに溢れていますよ。

この漫画は突っ込み役不在(安貝まともちゃんという常識キャラも出てきますが突っ込みきれていない)なので、読者が読みながら突っ込みを入れていく必要があるのです。それができない人は武器もなにも持たない状態で剥き出しの狂気に向かい合わなければならなくなってしまいます。で――そのような手続きを経てこの漫画を読むと、ちると先生が絵が上手くて抜群のセリフ廻しのセンスを持っていることがわかってくると思います。まぁとにかく彼女や女友達に奨められるような漫画ではないことは確かですけどね。

巨乳だけじゃない!ヒロインあまえちゃんの魅力

巨乳で小学生という強力な二つの属性を持っているヒロインのあまえちゃんなのですが、彼女の魅力の本質はそこではありません。あまえちゃんの魅力の本質はズバリ「母性」なのです。あまえちゃんは主人公を無限に甘やかしてくれますし、許してくれますし、絶対に嫌いになったりはしません。リアルなオカンというよりは、若い母親が自分の赤ちゃんに向けるような態度で主人公に接してくれるのですね。この関係性が本作で一番の倒錯だと思います。

二十歳そこそこの青年が女子小学生に対してママのように甘える――。本当に通報ものの世界観です。実際通報危機にも遭うのですが、世界観までも甘過ぎて見過ごされてしまいます。主人公が無理矢理あまえちゃんに甘えているのではなく、あまえちゃん自身が男を甘やかしたいという欲求を持っている女の子だと描かれています。まじ都合の良い世界観なのです。どこまでも居心地のよい世界観なのですが、ギリギリのバランスによって成り立っていることも忘れてはなりません。

あまえちゃんは無限に優しく主人公に対して何でもしてくれるのですが、あまえちゃんが性知識などを得たりしてしまうと相当危うい世界に突入してしまいます。1巻でのあまえちゃんの描写を見る限り、あまえちゃんは主人公の欲望を何でも満たしてくれるでしょう。絶対、射精管理をし始めるに違いありません。そうなると自ポ法やらジャンルという意味でこの作品は終わってしまいます。登場人物がここから一歩でも成長してしまうと作品世界が大きく崩れてしまうので、予想ですが必然的に「サザエさん時空」が使われる作品になるのではないでしょうか。

まとめ

現代漫画の狂気の最先端を走る萌え漫画「とっても優しいあまえちゃん!」の紹介でしたがいかがでしたか。狂気だの何だの書きましたが、何も考えずに読めば普通に楽しめる萌え漫画でもあります。特に主人公の「おにいさん」のセリフ廻しは絶品で一流コピーライターの一文かと見紛う程です。最後に1巻で僕が気に入ったセリフをあげていきたいと思います。第2話よりあまえちゃんにひざまくらをして貰っている時の二人のやりとりから。

「ママぁ……」「おにーさん今ママって…」「!」「ミ…ミス…今のは聞かなかったことにして!!」えーと、ミスって一体何がミスなんでしょうね。こういう何気ないセリフ廻しで絶妙なセンスを見せつけてきます。第6話より猫耳をつけてはしゃぐあまえちゃんを見て「5秒で入籍したくなる~!!」いや~、まじで気持ち悪い。気持ち悪さが天元突破してやがります。第9話お風呂であまえちゃんに現れながら「ママのおなかにいるみたい」気持ち悪さが光の速さで駆け抜けていきますね。

第12話より風邪であまえちゃんに看病されている時のセリフ「ママ…お胸とんとんして…」気持ち悪さで胸が締め付けられそうです。それでも僕の「とっても優しいあまえちゃん!」1巻の評価は星10なんですよね。色々と批判されたり、馬鹿らしかったりする部分があったとしても、強いインパクトを残し面白く読めたものにマイナスは付けられないのです。今のところ非凡な漫画なのです。センスのあるギャグ漫画家がついに自分の能力を十全に生かせる題材に出会った――という作品なのではないでしょうか。連載中の作品を読む限り、この勢いは2巻でも維持されそうですよ。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:カオス