Pocket
LINEで送る

漫画レビューのお仕事をいただいて以来、切に感じることがあります。この世には面白い漫画があふれすぎている!手に取る漫画すべてが面白すぎて、逆に「つまらないってなんだろう?」という妙な疑問も浮かんでくるほど。人間の持つ想像力の底知れなさを思い知らされる日々です。

「面白さとは何か?」という問いに対する返答は様々考えられますが、あえて一言にまとめるとするなら、私は続きを見たいと思わせる力だと答えます。お腹を抱えて笑ってしまうギャグだろうが背筋の凍るようなホラーだろうが心が熱く燃えるような冒険譚だろうが、面白い!と思えるものには総じて読者を先へ先へと誘う引力があります

今回レビューする『アクタージュ』は、その引力という点においてとてつもない可能性を秘めた作品。単純な面白さだけでなく、この漫画が進む先にいったい何があるのかという未来への予感が、私の心をグッと掴んで離しませんでした。この掴みどころのない期待感をどうにか言葉にして、これから皆さんにお伝えしたいと思います!

あらすじ

例年、3万人を超える応募者が集う大手芸能事務所スターズの俳優発掘オーディション。世界三大映画祭すべてに入賞した実績を誇る映画監督・黒山墨字はその審査員として、新人俳優の演技を眺めていた。ありふれた表現しかできない新人たちを見て呆れたように頬杖をついていた墨字だったが、ある一人の少女が彼に大きな衝撃を与える

その少女の名は夜凪景。常人からすれば到底演技として受け入れられない彼女の奇妙なふるまいの中に、墨字は役者としての類まれなる才能を見出す。彼女は過去の感情を現在に甦らせることで役を演じきるメソッド演技を知らず知らずの内に使いこなしていた天才だった

墨字は景の才能を他の審査員に知らしめるために巧みに誘導。パントマイムという難しい課題を与えられたにも関わらず、彼女は想像の産物を他の参加者や審査員にも共有できるほどの実体感をもって表現しきってみせる。しかし、その演技手法の危うさからオーディションには落選。肩を落とす彼女のもとに、墨字は審査員としてではなく、一人の映画監督として姿を現す。「ずっと待っていた。お前のような奴がこっち側に来るのを」。孤高の天才映画監督と天才女優が紡ぎ出す物語の幕がいま開ける

本作の見所

天才女優・夜凪景の魅力

本作は主人公・夜凪景の魅力にスポットを当てた作品。行動のエキセントリックさや不意に見せる少女らしい無邪気さもさることながら、なんといっても一際目を惹くのがその美貌!私はコミックから入った口なんですが、表紙に描かれた景の美しい表情に一目惚れして購入を決めました。黒髪ロングの美少女ってだけでも十分な魅力なんですが、ブルーの混じった瞳の吸い込まれそうな色合いに心を奪われました

景の持つ美しさは作中において様々な角度から炙り出されることになります。「ぴすぴす」と笑顔を振りまく彼女の姿なんかは特に珍しくてそのギャップにやられてしまう人が大勢いることでしょう。踏み込んだ話をするとこれは彼女の使うメソッド演技によって生み出された仮初の笑顔なのですが、役者というテーマを扱っているだけあって、物語を追うごとに彼女の様々な表情や姿を目にすることができます

そして、何より忘れてはいけないのが景のキャラクター。どんな分野においても天才を描くというのは非常に大変なことです。特異性を際立たせるために奇矯な振る舞いをさせすぎれば逆に滑稽に映ってしまい、怖気づき過ぎれば凡人に成り下がってしまう。ここで重要なのはその行動がキャラクターにとっていかに自然かどうかであり、辛い過去を背負ったことで常軌を逸した思考体系を持つに至った景の見せるふるまいは、「彼女ならこうするはずだ」という読者の期待に沿いつつもその特異性を印象づけるインパクトにも溢れていて圧倒されます

ライバル・百城千世子の迫力

景に限らず『アクタージュ』に登場する女の子はことごとく私のツボにヒットしてきます。墨字の補佐役として登場する常識人・柊雪の素朴な可愛さにも心惹かれますし、景とともに女優を志す関西娘・湯島茜のお姉さん力にも今後注目したいところ。そして、その中でも景に並び立つほどの衝撃をもって登場したのが景のライバル・百城千世子です。

千世子はスターズの天使と称されるほどの美貌の持ち主なのですが、このコマが彼女の本質すべてを体現しているといってもいい!美しいけれど温度を感じない、まるで精巧に作られたガラス細工のようにも見えるその姿は、芝居の上手さではなくそのカリスマ性によって大衆を虜とする百城千世子というキャラクターをこれ以上ないくらい印象づけています

物語やセリフと違って言語化の難しい絵の素晴らしさを伝えるのは非常に困難です。私もこの千世子の登場シーンから受けた衝撃をいま必死に言語化しようとしてるんですがなかなか言葉が出ない……。言葉にならない美しさという陳腐な表現に逃げることしかできないのが本当に悔しい。ただ、この言葉に還元できない衝撃こそが、存在そのものにスター性が集約されている千世子というキャラクターに即しているともとれます……よね?とれるということにしておいてください。(土下座

とてつもない作品にバケる可能性

冒頭で面白さとは読者を先へと誘う引力だと書きましたが、この引力にもいろいろあると思うんです。大抵の面白い作品って「これだけ面白いなら続きも面白いはずだ」という順当な期待感を抱かせてくれるんですが、『アクタージュ』はこの期待感において他とは異なるものを感じました。『アクタージュ』はこの先どんなものを見せてくれるのか全く想像がつかないんです

なぜ想像もつかないのか、その理由としてまず1つには役者という難しいテーマを少年ジャンプに連載しているという点があります。雑誌の色が強く意識されるジャンプという媒体で役者をテーマにどれだけジャンプらしさを表現できるのか、私には想像がつきません。だからこそ、先が読みたい!私の想像もできない世界を切り開いてほしい!という期待感があります。

そして、一番大きな理由が映画監督・黒山墨字と女優・夜凪景の関係性が原作のマツキタツヤ先生と作画の宇佐崎しろ先生に重なる点。役者の天才性を表現するために必要不可欠なのはビジュアルのインパクト。それだけ宇佐崎先生にかかるプレッシャーも相当なものだと思うのですが、ここぞというときに見せる景のスゴみと宇佐崎先生の作画のスゴみが強烈にリンクする場面があります。中でも景が自らの内に潜む残酷さを卑下するわけでもなく、新たな発見として受け入れ喜びに瞳を輝かせるこのコマは彼女が我々常人とは一線を画した存在であることをまざまざと見せつけています。監督として天才女優の表現を求めるマツキ先生とその要求に応えるべく作画表現を探求する宇佐崎先生の相乗効果は、いずれ『アクタージュ』をいま以上にとてつもない作品へとバケさせる可能性に満ちています

まとめ

コミックスの方には幕間と巻末におまけマンガが追加されています。本編が基本シリアスに進むため、おまけマンガのゆるさがとても心地良い。そして、何より景がかわいい。雪もかわいい。カバー裏にも墨字・景・雪のおまけマンガが描かれているのですがこちらもほっこりします。ジャンプで連載を追っている人にはぜひコミックスでおまけマンガを読んでいただきたい。

実は私、購入するまで『アクタージュ』がジャンプの漫画だと知りませんでした。久しくジャンプを手にとることもなかったのですが、『アクタージュ』を応援するべくジャンプ購入を決意。ジャンプ+アプリからだとアンケートも送れるので非常に便利ですね。マツキ先生と宇佐崎先生が切り開くこの漫画の未来を見逃すわけにはいかないので、これからも『アクタージュ』を応援し続けます!

そして、このレビューを読んだ方が『アクタージュ』を手にとっていただけたらこれに勝る喜びはありません。アンケートを出すことも大切ですが、レビューという形で作品を応援することもできます。もし、本作を手に取るだけでなくその魅力に心を打たれたのなら、ぜひともブログやSNSなどでレビューを書いていただきたい。そこにはきっと私では気づかなかった、もしかしたら、マツキ先生や宇佐崎先生ですら気づかなかった新たな視点が秘められているはず。物語とは作者だけでなく読者によっても新たな世界を広げられる懐の深いものだと、私は信じています。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

アクタージュ act-age 1 (ジャンプコミックス) [ 宇佐崎 しろ ]
価格:432円(税込、送料無料) (2018/5/10時点)

物語の行間に潜む感情の機微を炙り出せるような記事を書きたいです。ショートカットで元気な女の子が大好きなので、オススメの作品があったらご一報ください。

Pocket
LINEで送る