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相手に「告らせたい」という一心で熾烈な恋愛頭脳戦を繰り広げる生徒会メンバーの姿を描いたマンガ「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」。今回は、会長とかぐやの関係に大きな進展が見られる単行本第5巻のレビューをさせていただきます。

このマンガ、初期こそ「天才たちの恋愛頭脳戦」というサブタイトルがピッタリの内容でしたが、どうも4巻あたりから頭脳戦の要素が影を潜め、登場人物全員がアホ化してくるという事態に発展していました。しかし今回ご紹介する5巻では、本当に、本当に久しぶりに会長が卓越した頭脳を使ってカッコいいところをみせてくれます。

しかも今までの会長は、ある意味でかぐやを陥れるために頭脳を使ってきましたが、5巻の会長は「かぐやを助けるために」頭脳を駆使します。互いに陥れ合うのではなく、ようやく互いに助け合うために頭脳戦を繰り広げ始める「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」第5巻、必見です。

あらすじ

様々なハプニングが巻き起こった一学期を乗り越え、ようやく夏休みに入った秀知院学園。多くの学生が楽しみに待っていたはずの夏休みですが、白金会長は特に何もせず、毎日のように自宅で死んだ目をして過ごしていました。せっかくの夏休みだというのに、かぐやと遊ぶ約束のひとつも取り付けることができなかったからです。

一方その頃、かぐやも自宅でうつぶせになって落ち込んでいました。かぐやもまた、長い夏休み期間中ずっと会長に会えなくなってしまったことを後悔していたのです。会長もかぐやも、本当は連絡を取り合って遊びたいと思いつつ、プライドが邪魔をして暗い夏休みを過ごすハメになったのでした。

そんなこんなで夏休み中は全く会えなかった2人ですが、生徒会のみんなで行こうと唯一約束していた「花火大会」の日がやってきます。やっと会長やみんなに会えるとウキウキのかぐやでしたが、直前になって思わぬ邪魔が入り、1人だけ花火大会に行けなくなってしまいます。絶望に打ちひしがれるかぐや…しかし状況をいち早く理解した会長は、頭脳をフル活用してかぐやを救いに向かうのでした。

感想

涙する人続出!作中最高のエピソード・花火の音は聞こえない

5巻に収録されているエピソードのなかで特筆すべきは、第44話~第45話の「花火の音は聞こえない」でしょう。エピソードが進むにつれてだんだんと単なるギャグマンガになってきていたこの作品ですが、このエピソードを経て間違いなく名作ラブコメに名を連ねたと言えるでしょう。「花火の音は聞こえない」は前編・後編に分かれているのですが、驚かされるのは「タイトルの意味」が前編と後編で全く違うものに変わるということです。

前編の「花火の音は聞こえない」とは、かぐやが花火大会に行けなくなってしまったことを意味するタイトルです。かぐやにとって夏休み唯一の楽しみだった生徒会メンバーみんなで参加する花火大会ですが、出発直前になってかぐやは外出を禁止されてしまいます。本家から出向してきていたお目付け役に、「最近のお嬢様の行動は目に余ります」と説教され、半ば軟禁状態で自宅に押し込められてしまったのです。1ヶ月以上も楽しみにしていたイベントだっただけに、いつもは気丈なかぐやも泣き崩れてしまいました。本来ならみんなと花火を楽しんでいたはずの時間でしたが、かぐやは自室に閉じこもっているため「花火の音は聞こえない」のです。

しかしそんなかぐやの状況に、会長はいち早く気付きました。かぐやによる「みんなと花火が見たい」というTwitterのつぶやきを見た会長は、かぐやを救い出すために動き始めます。会長は卓越した頭脳を駆使してかぐやの居場所を特定し、花火大会へと連れ出すために必死に奮闘するのです。様々な障害はありますが、結果から言えば会長はかぐやを花火大会に連れて行くことには成功します。ですがサブタイトルにある通り、それでもかぐやは花火の音を聞くことができませんでした。どうして花火大会に来られたのに「花火の音は聞こえない」状態になってしまったのか…その真相は、ぜひ単行本5巻で確かめてみてください。

花火大会以降の2人の関係の違いにも注目

花火大会の際、かぐやを救いだすため久しぶりに頭脳をフル回転させた会長。その反動…というわけではないのでしょうが、花火大会のエピソード以降、少しだけ初期のような「恋愛頭脳戦」を行う2人の姿が戻ってきます。ただし、花火大会で会長とかぐやの関係性は少し変化しているようで、頭脳戦の内容にも違いがみられます。以前なら「相手に告らせよう」ということで頭脳を駆使していた2人ですが、どうもこのあたりから「相手のために」頭脳を使う描写が多くなってきます。なんとかして相手を陥れようという考え方はあまりしなくなったようで、2人してスムーズに付き合うために頭を回しているようにさえ見えます。

例えば第47話「かぐや様は選ばせたい」では、クラス合同の選択授業でかぐやと一緒になりたい会長が頭脳をフル回転させ、かぐやの選択した授業を見破ろうと試みます。しかしその裏で、かぐやの方も会長と同じ授業を選ぼうとしてある作戦を実行していたのです。2人の最終目的は「同じ教室で授業を受けたい」という点で一致しており、相手を陥れるような結果は全く望んでいません。それどころかこのエピソードでは、かぐやが会長のために「あること」をします。物語の終盤で会長もその企みに気付いて協力するのですが…以心伝心する姿は恋愛頭脳戦というよりは最早おしどり夫婦のやり取りに見えてくるほどです。

また、第50話の「かぐや様は祝いたい」でも、会長のために奮闘するかぐやの姿がみられます。このエピソードは何とかして会長の誕生日を盛大に祝ってあげようと画策するかぐやのお話です。以前のかぐやなら「誕生日を利用して告白せざるを得ない状況をつくろう」なんて考えに至りそうなものですが、今回のかぐやにはそういった邪念がありません。前巻に比べると「恋愛頭脳戦」が復活しつつあるこの巻ですが、しかしその内容には大きな変化がみられるようです。互いを尊重し、互いのために頭脳を使うようになった会長とかぐやの関係性の変化に注目して読むとより面白いのではないでしょうか。

名物「会長のポンコツ回」も収録

全体的に感動系エピソードの多かった5巻ですが、このマンガの名物である「会長のポンコツ回」も収録されています。完全無欠に見える白金会長の隠された欠点を、藤原書記が命がけで矯正していく名物企画です。これまで「超・運動音痴」「超・音痴」と2つの弱点を露呈してきた会長。致命的な弱点を誰にも知られたくないという会長のためにこれまで藤原書記が幾度となく特訓に付き合い、会長を最低限の人間ラインまで成長させてきました。その溢れ出んばかりの母性から、今や藤原書記はファンの間で「母」と呼ばれているほどです。

この巻で露呈した会長の弱点は「魚が触れない」というもの。会長は自分の弁当を自分で作るくらいには料理が上手いのですが、頭のついた魚は絶対に触れないというのです。「魚に触れない」というのは今までの弱点に比べると至って普通というか、魚に触れない人くらいどこにでもいそうですよね。しかし問題なのは、秀知院学園には「生きている魚を〆る」ところから始める調理実習があるということ。生魚を触ることすらできない人間にとって活魚を〆るという工程はレベルが高すぎたらしく、会長はあまりの恐怖で過呼吸になってしまいます。

今まで会長の特訓に付き合って散々な目にあってきた藤原書記は逃げようとしますが、「お前じゃなきゃダメなんだよ」という会長の甘い言葉を信じて結局最後まで特訓に付き合うことになります。前巻までをお読みになった読者の皆さんはすでにお気づきかと思いますが、もちろんこのエピソードでも当然のように藤原書記は酷い目にあいます。「生きている魚に触れない」という弱点はシンプルですが、会長ならずともそう簡単に治るものではありません。果たして藤原書記はどんな手段でこの難解な弱点に立ち向かうというのでしょうか。そしてどれだけ理不尽で酷い目にあってしまうのでしょうか。

まとめ

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」第5巻は、全体的に感動系エピソードの多い巻でした。このレビューでご紹介した第44話~第45話までの「花火の音は聞こえない」はもちろん、第41話の「白金御行は出会いたい」も隠れた名エピソードです。やはり会長とかぐやの距離感が縮まってきただけあって、ギャグマンガ要素よりもラブコメの要素が強くなってきた感じがしますね。今後も巻数が進むにつれて、きっと名エピソードを量産してくれることでしょう。

また、この巻からはかぐやの生い立ちについての情報も増えてきました。これまでも暗い青春時代を送ってきたことが仄めかされてきたかぐやですが、5巻には少しだけかぐやの父親が登場します。それと同時に、かぐやと父親の間にはかなり深い溝があることもハッキリと判明します。生徒会に入る前は全く表情を変えず、冷徹な性格だったかぐや。このレビューでもかぐやが「段々アホ化してきた」といいましたが、それは言い換えるなら「段々感情が豊かになってきた」ということでもあるのでしょう。生徒会のメンバーと出会ったことで、かぐやも成長を続けているのかもしれません。

トータルで見て、5巻は会長とかぐやの成長が見られる巻だったと感じました。仲が進展したというよりは、2人が無駄なプライドを捨てて互いに歩み寄り始めたといった感じでしょうか。すでに傍からみれば付き合っているように見えなくもないので、このまま行けばほんの数巻後にはカップルが誕生しているかもしれませんね。魅力あふれるサブキャラクターたちが会長とかぐやの恋愛に今後どのような影響を与えるのか、そしてサブキャラクターたちの恋愛事情はどうなっていくのかといった点にも注目したいですね。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:だいなごん

二次元の世界が好きすぎて脱サラし、マンガ・アニメ専門のライターになってしまったヤバい人です。
朝から晩までマンガを読んではレビュー、アニメを見てはレビューという二次元漬けの日々を送っています。

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