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「私の百合はお仕事です!」は架空のミッションスクール……を題材にしたコンセプトカフェを舞台に繰り広げられる、シチュエーション百合ラブコメです。外面をひたすら磨いて玉の輿を目指す陽芽(ひめ)がとあるきっかけから百合分満載のコンセプトカフェで働くことになり、悪戦苦闘する姿が描かれます。

タイトルどおり百合を前面に出しながら、あくまで業務の一環として演じているという体裁がユニークです。カフェのコンセプトは『マリア様がみてる』を踏襲している部分があり、百合好きであればニヤリとするような用語が豊富に出てきます。

舞台が百合を売りにしたカフェだけあって、登場する女性のタイプが多彩なのも魅力です。制服のデザインも凝っているため、フェチズム的な魅力を感じる人も多いはずです。百合あるあるを笑いに変える部分もあるため、知識の無い陽芽の認識のギャップも見所になっています。

あらすじ

高校生の陽芽は、外面をひたすら磨き、誰からも愛されることを目指す少女です。玉の輿に乗ることが目的で、その他がおろそかになりがちな陽芽は、ちょっとした不注意からコンセプトカフェ・リーベ女学園の店長にケガをさせてしまいます。ケガの責任をとって代打としてカフェに入った陽芽は、そのまま百合をコンセプトにしたカフェで働くことになってしまうのです。

百合の定番がわからず悪戦苦闘する陽芽は、同じ店員である美月をお姉さまと呼んでしまいます。ミッションスクールでお姉さまと妹といえば、特別な関係の定番です。百合のテンプレートに乗って行動せざるを得なくなった美月からは反感を買う形になってしまい、状況も飲み込めずに悪戦苦闘することになってしまうのです。

更に陽芽の不審な行動に疑問を覚えたクラスメートの果乃子が、陽芽のあとをつけて勤務先を特定し、リアルバレ厳禁のカフェに入ってしまうという事件を引き起こしていしまいます。ちょっぴりストーカー気質で陽芽に思いを寄せる果乃子と、職場で姉妹を演じなければならない美月との間に挟まれながら、陽芽の異文化との戦いが続くのです。

感想

業務上の百合が存在するコンセプトが特色

『私の百合はお仕事です!』の見所は、なんといっても業務としての百合が存在することです。百合の名作『マリア様がみてる』のオマージュが随所にちりばめられていて、百合好きなら元ネタがすぐわかるようになっています。ただし、あくまでオマージュのため、用語はドイツ語をベースに置き換えられています。『お姉さま』という呼称は姉妹(シュベスター)の契りを交わした二人で使われる特別な呼称であるなど、百合好きであればすっとはいる内容になっているのです。

あくまで業務上の百合であるため、店員の素の姿は全く違うのもポイントになります。陽芽はそもそも百合の文化自体が良くわからないため、勝手がつかめずに振り回される形になります。店員たちの素の姿と、カフェでのギャップは見所の一つになっています。百合のテンプレになぞった行動や言動をとるとバックに花が咲くなど演出も非常にわかりやすくなっています。百合好きである常連客たちが盛り上がる一方で、文化がわからない陽芽はドン引きしてしまうことになります。

虚構の百合がある一方で、陽芽に思いを抱き、ストーカー気味に追ってしまう果乃子のリアル百合も絡んできます。行きがかり上とはいえ、職場で姉妹関係になった陽芽と美月の関係も絡んでくるため、物語がどう転がるがわからない状態になっていくのです。仕事とプライベートそれぞれのギャップで心の交流が進む場面も、距離が離れる場面もあります。読者がやきもきするようなシーンが多く、展開の速さとギャップの波が楽しめる作品になっています。

フィクションとしての百合をどう受け止めるかがポイントに

好みが分かれる部分が、フィクションとしての百合をどのように受け止めるかです。とくに『マリア様が見てる』マニアの場合は全く受け付けない可能性が出てきます。コンセプトをほぼそのまま受け継いでいるため、パクリと捉えてしまう可能性があるからです。オマージュとして笑って受け止められるのか、パロディとして拒否するかが一つの関門です。また、陽芽が外面至上主義で性格が悪いため、それを許せるかという問題も出てきます。

ポイントになるのが陽芽は陽芽で外面を磨くための努力をしていることです。リーベ女学園ではそのスキルがほとんど役に立たないため苦境に立たされることが多くなりますが、素のスペックは非常に高くなっています。性格が悪いから自業自得と考えるのも一つの見方ですが、物語が進むにつれ成長する可能性が高いという考え方もあります。長い目で見れるかどうか、少しでも性格の悪いキャラから距離を置き、ストレスのない漫画を読みたいかでも好みが分かれるのです。

よりシビアに見るのであれば、陽芽が完璧な外面を作れる人間であれば、もっと頭の回転が速くなければおかしいと感じる可能性もあります。外面を作るためには相手の言外の言葉を瞬時に察し、自分の感情よりも空気を優先するスキルが求められるからです。陽芽は若干主観的な部分が強く、なれない環境もあってか実力を発揮出来ない部分が目立ちます。ただし、これに関してはもともと基本が抜けている人間であり、身近な人にはバレバレであることから差し引きで考えた方が良い部分になっています。

とにかく女の子のタイプが多く、華やかなのが魅力

『私の百合はお仕事です!』でポイントになってくるのが、制服のデザインの可愛らしさと、女の子のタイプの方法さです。低身長でふわふわのロング、姫カットの主人公陽芽を筆頭に、黒髪長髪高身長の美月、見た目中学生なロリ店長などバリエーションが豊かなのです。普段はギャルなのにカフェの中ではメガネ美人な先輩店員や、メガネを外すと美少女という定番路線を行く果乃子の存在も外せません。流れから果乃子もリーベ女学園で働くことになるため、普段の制服姿とのギャップも見所になっています。

業務上百合を演じなければ生けない関係上、カップリングの幅が広いのもポイントになります。何せ、カフェでは美しい女生徒たちのやりとりを演じなければならないからです。プライベートとカフェに出ているときは考えを切り替える必要があり、必要であれば誰であっても演じ分ける必要があります。とはいっても、日ごろの感情を完全に制御出来ないのが陽芽と果乃子のため、いつ何かやらかすのではという不安が付きまとうのもポイントになります。

学年別でリボンの色が違うカフェの制服や普段の制服や私服の違いなど、服装フェチが注目するポイントも満載です。衣装デザインとキャラごとのスタイルのメリハリも見所の一つです。非常に華やかなコマが多いため、かわいい、綺麗を追求したいビジュアル重視の人には特におすすめです。華やかなコマが多い分、陽芽の落ち込みや戸惑いが強調され、ギャグ感を増してくれるという効果もあります。カフェのコンセプトがミッションするクールであるため、お嬢様感が前面に出ているのも魅力です。

まとめ

業務としての百合が出てくるという斬新な切り口が魅力の作品ですが、陽芽が頑なに外面を重視するようになったきっかけや、因縁の相手の存在が示唆されるなどストーリー性も十分に濃いものになっています。バックボーンがあってのキャラクター付けであるため、話を読みすすめるうちに共感しやすくなるのです。1巻の最後に大きな爆弾が落とされるため、続きが気になる構成も巧みで非常に展開が気になる作品になっています。スピード感や華やかさを求める人には特に相性がいい漫画になっています。

一方で、コメディ色が強いため、しっとりとした百合が好きな人には厳しい面もあります。百合あるあるを頻繁に利用するため、百合の知識がない人は主人公の陽芽のように戸惑ってしまう可能性もあります。掲載雑誌が百合姫になるため、ジャンル自体に親しんでいることが前提で作品化されている部分もあります。前知識がなくてもノリで楽しめるようにはなっているものの、評価が分かれやすいのです。陽芽のギャップを許せるかも含めて、どこまで許容できるかが鍵になっています。

ビジュアルやキャラクターデザインが光る作品でもあるため、あまり考える過ぎるのも無粋という話もあります。第1話もカラー2ページ目で陽芽の素の部分が出てしまい、コンセプトも非常にわかりやすくなっています。難しいことを考えるよりも河合の店舗や表情のギャップなどを楽しんでしまうのも方法です。カフェでは優しく、それ以外では毒舌な美月のギャップなど、見所も多くなっています。ツッコミどころの多さも作品の魅力なのです。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

月10冊程度、年間100冊超の漫画を読むフリーライター。非定期で友人と百合漫画を語る会を開きますが、ジャンルは不問で何でも読みます。

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