紅殻のパンドラの第3巻です。表紙は義体姿のネネですが、背中や手足のハッチが開いてケーブルが接続されていたり、肘の関節部分が見えるようになっていたりと義体らしい要素も多く、メカ少女萌え的にはかなりポイントの高い表紙になっています。

3巻でも相変わらず世界の情勢や裏で暗躍する人たちといったモノとは全く無関係にネネが人の役に立つために頑張ったり、ネネがクラリオンに対して鼻息を荒くしたり、ブエルがクラリオンに握りつぶされる展開がメインになっています。

2巻の中盤以降日常的なシーンが多かったですが、3巻では日常がメインという部分は変わらないものの、ネネが様々なトラブルに巻き込まれたりと、セナンクル島の治安が悪くなっている部分が見えるストーリーになっています。

あらすじ

ブエルの暴走を止める事に成功し無事に日常へと戻ったネネは、どうせパンドーラ・デバイスを使うのであれば皆が喜ぶようなことをしよう、という事で公園でパンドーラ・デバイスを使ったジャグリングをしますが、どうもそれも思ったのとは何か違う様子。

公園を行き交う人たちを楽しませる事に成功する一方で、ネネ本人はどこか納得出来ない部分があるようで、「自分の力ではないものを使うのはずるい」という理由からパンドーラ・デバイスを今後使わないようにすると決めます。

そんな2人の前に現れたのは車いすに乗った女性「アンナ」でした。アンナと親交を深める2人ですが、アンナの体調が突如急変。ネネは「人の役に立ちたい」という一心で、一度は使わないと決めたパンドーラ・デバイスを使いアンナを助けることを選び……。

感想

パンドーラ・デバイスに対するネネの考え方の変化

3巻では#10から13まで収録されています。収録されている話はいずれも日常色の強いエピソードが多くなっていますが、セナンクル島の治安は良い状態とは言えないようで、ネネたちは色々なトラブルに巻き込まれる事になります。#10では偶然知り合ったアンナを助けるため、使う事を否定的に考えていたパンドーラ・デバイスを使うなど、ネネの「人の役に立ちたい」という強い想いが描かれています。ネネの考え方の変化と、タクミちゃんの保護者らしい一面が見どころのエピソードです。

#11はショートエピソードで、ブエルを解析したいタクミちゃんがネネたちからブエルを引き離すために策を巡らします。某ハンティングアクションの装備っぽい鎧を纏ったネネとクラリオンが可愛らしいエピソードです。#12では、病院で診察を受けた帰りにアンドロイドと間違えられてAI泥棒に拉致されるエピソードですが、封印状態にされても勝手に再起動するというネネの特異性が目立つ他、攻殻機動隊で登場した「ゴースト」を彷彿とさせるような意味深な展開があります。

#13では、宿題の「仕事に関するレポート」を作るため企業を見学しますが、タクミちゃん名義の紹介状だからか、どこに行っても超VIP待遇でネネは圧倒されます。普段の仕事が見たい、とネネは企業ではなく復興チャリティを見学しますが、またもトラブルが起きます。トラブルを経て様々な目に見えない人同士の繋がりのようなものを感じ取るネネ。3巻の後半では人助けのためにパンドーラ・デバイスを使うなど、ある程度自分の中で整理がついたように見えるエピソードでした。

魔法少女的なノリは好みが分かれるかも?

1~2巻ではパンドーラ・デバイスを使用する際に身分を隠すために、光学迷彩を利用することでネネの服装が変化して見えるという説明がありましたが、3巻ではただ服装が変化するだけではなく、使用する技能によって服装が変化するようになっています。この時の服装はどれも可愛らしいのですが、それと同時に「少女が誰かを助けるために変身する」という魔女っ子や魔法少女的なノリになってしまっている点は好みが分かれるところなのでは?と感じました。

正直、3巻は序盤のアンナやクラリオンとのエピソードでの心境の変化などを除けばニチアサ的なノリの内容のエピソードが多かったり、パンドーラ・デバイスと光学迷彩を使って服装を変えて「変身」したネネが、直前まで会話をしていたキャラと会って会話していても正体がネネだとバレないといったご都合主義的な展開になっていたりと、拒否反応が出るとまではいかなくても、あまり良いようには取れないという人も多いかなと思います。

ですが、原案の士郎正宗先生はコマの外の枠部分にまで解説を盛り込むなど、かなり深いところまで設定を考えている事が多いので、案外そういったご都合主義的な内容にもきちんとした設定があるのかも?と思える部分もあります。そういった意味では、今後の巻末の解説ページや4コマ漫画などにも期待が持てます。現状は「攻殻機動隊版魔法少女」的なノリになってこそいますが、設定やストーリー、キャラクターなどとても魅力的な作品なので気になる人には是非読んで欲しい作品です。

少しずつ明らかになるネネの人物像

3巻では主人公であるネネの人物像が少しだけ描写された巻になっています。1~2巻では警戒心が薄く多少危なっかしい部分があるものの明るく素直で善良な人物という部分が目立っていたネネですが、3巻ではそれに加えて両親以外の人間達から全身義体を貰った事について、たくさんの人に助けられた事に対して感謝しているのと同時に多少の負い目を感じているような部分があり、自分自身の事を「ちょっとだけずるい」と表現しています。

そのため、自分が持っている技能以外を使えるようになるパンドーラ・デバイスに関しても同様にずるいと感じているようで、使用する事に対して否定的な部分が強く表されていました。しかし、体調が急変したアンナを助けたいという意思と、クラリオンの言う「その状況を打開できる力(=パンドーラ・デバイス)を使わない事は公正なのか?」という問いもあってか、アンナの一件以降は人助けなどで使用する事に関してはある程度肯定的な部分を見せるようになります。実際、3巻でパンドーラ・デバイスを使うシーンの多くは誰かを助けるために利用しています。

また、ここまで殆ど個人の情報が出てこなかったネネですが、3巻冒頭でタクミちゃんからは「子供の自覚が足りない」や「子供は学校へ行くもの」と言われるなど、少なくとも子供扱いされる年齢だという事と大卒検定資格を保有している事が解りました。レトロゲーの操作のように義体化する過程でリハビリのために学んだついでに取ったのかもしれませんが、根っこの部分は結構秀才なのかもしれません。一方で、AI泥棒に巻き込まれる回では人間と機械の境界が曖昧になっているような言動をするなど、今度の展開が不安でもあります。それこそデータのみになってネットに偏在するようになるとかそういう……。

まとめ

という事で紅殻のパンドラ3巻でした。ネネは自分の力ではない力を自分がやりたい事に使う事への負い目を感じてるようでしたが、クラリオンからの「持っている力を使わない事は公正か?」という問いかけやアンナからもらったお礼の言葉などを経て、多少なりとも自身について肯定して考えられるようになった点は、単純に成長しているのとは違ったいい意味での変化があってとても良かったです。そういう意味では、助けられたのはアンナではなくネネの方だったのかなとも思います。

また、相変わらず名前を言う事が出来ないブリ何とかさんが、ネネがパンドーラ・デバイスを使って変身するところを見てしまったため、今後何らかの形でメインのストーリーにも関わってくるのかが気になります。仮に関わってきたとしてもブリ何とかさんは根本的な部分は悪党という感じではないですし、そもそもネネに対して害を為そうとしたところで、クラリオンやタクミちゃんがしっかりもみ消してくれそうなため問題は無さそうですが……。

唯一気になるのは、タクミちゃんの元へと来る以前にしていたという「ひとのためになることの手伝い」という部分です。恐らく全身義体絡みのデータ収集とかに関連したものである事を考えると、明るい話ばかりでは無さそうでもあります。元々、幼少期より難病を患っている上、更に事故で両親と身体を失ったという事を考えると、ネネのこれまでの人生はかなりヘビーです。今後、ネネの過去に関する話が出てくるとしたら紅殻のパンドラから一転して攻殻機動隊的なキツイ内容になりそうなので、気になる反面不安な部分でもあります。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

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