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岡山県の地下アイドルグループ「Cham Jam」。そのメンバーのひとり、市井舞菜(まいな)を全力で応援する熱狂的女オタ、”えりぴよ”さんの型破りでエキセントリックなドルヲタ活動は冬になっても続いてきます!

第三巻では第二巻で骨折したえりぴよさんの完全復活、そして繰り広げられてきた総選挙施策の最終日からスタート。総選挙の結果発表もありつつ、クリスマス…大晦日、そして年明け・バレンタインと時計の針は進んでいきます。

様々なイベントが開催され、楽しい展開は続きながらも、否応なしに時間は過ぎ去っていく『推しが武道館にいってくれたら死ぬ』。アイドルは時間との勝負。Chat Jamは武道館のステージに到達することができるのでしょうか?

あらすじ

第三巻に入り、ついに第二巻で催されていた人気投票もクライマックスを迎えます。ファンはおのおのの推しに投票するなか、えりぴよさんは最終日のその日までギリギリまでお金を稼いで貯めて、当日爆買い大逆転を狙う魂胆でした。

しかし、バイト戦士としてパンをひっくり返しキグルミを身に纏うなどフル回転したえりぴよさんは疲労困憊、フラフラとなってしまい、公演に向かう道すがら川に落ちてしまいます。公演に間に合わず、投票はできなかったえりぴよさん。

けれどもえりぴよさんずぶ濡れになりながらも会場に辿りつきます。投票はできないものの、舞菜のためにお金を使いたいと大量にCDを購入して帰るえりぴよさん。えりぴよさんが居ないことを気にしていた舞菜がそのことを知って……?

感想

えりぴよさんが抱く舞菜への繊細な思い

第三巻、前述の通り投票に間に合わなかったものの、稼いだお金でCDを購入していくえりぴよさん。そのときの「舞菜ちゃんのためのお金 舞菜ちゃんのために使いたいだけですから」(第13話)という発言がまさにえりぴよさんの人間性・スタンスを表していて好きです。その後の、プレゼントを送ることに対しての「報われることを期待してしまう」という発言もそうですよね。ひたすら一方通行で、見返りを求めたくないのです。もちろん、見返りがあると、嬉しいのですが。

しかしえりぴよさんは本質的には舞菜が存在している、ただそのことだけに感謝しています。別にえりぴよさんは舞菜に何かをしてほしいわけじゃないんです。けれど、たとえば衣服をプレゼントしたら、それを着せて見せてほしい……みたいなことをどうしても思ってしまう。だからこそ、いつも通り握手会で一方的に思いを伝えたり、ブログに複垢でコメントしまくったり……などなど見返りが帰ってこなくても良い立ち回りをするわけです。

基本的には超破天荒でエキセントリック、握手会でも女だからセーフなのでは…?という接近をみせるえりぴよさんですが、ここにきて”見返りを求めたくない”という繊細な一面が描かれることが素敵。そして、この作品として”アイドルに見返りを求めるオタク”を否定してるわけではなく、世の中には色々なオタクがいるし、その中にはこういう人もいるよ、と示されていることがまたこの作品の魅力です。くまささんと基さんのおかげです。

舞菜とえりぴよさんの間に横たわる距離感

えりぴよさんに対して、舞菜も様々な思いを抱いています。第十三話での「えりぴよさんが会いに来てくれないと会えないのに」は来てくれるのを待つしかないアイドルという立場を改めて実感させてくれます。会いに来てくれないと会えないんです。オタクからすると、イベントさえあれば自分から会いに行くことができます。でもアイドルは、イベントがあっても、来てくれるのを待つしかないわけです。えりぴよさんはそんなこと夢にも思ってないでしょうけど。

だからこそ、同じ第十三話での「私は幸せだって 次の握手のとき一番に伝えよう」という舞菜の決心はある意味面白いですよね。同じ回のえりぴよさんの「わたしはさ楽しいことは全部舞菜に言いたいし 嬉しいことがあったら一番に伝えたいと思うけど」「舞菜にもそういう存在がさあいるのかなあ」という発言と対になってますよね。アイドルとオタクという断絶があるなかでも、えりぴよさんと舞菜は間違いなく通じ合っているのです。

そんな二人だからこそ、えりぴよさんを気遣うくまささんの様子を見て羨ましく思う舞菜の「私は友達にすらなれないのになあ」という言葉はとても重いです。えりぴよさんと舞菜はオタクとアイドルという関係だからこそ出会うことができましたし、お互いに通じ合うことができたのもその関係性があってこそでしょう。けれど、アイドルとオタクという関係にはどうしようもない断絶があります。その断絶がこの二人の関係を特別なものにしていて好きですね……。

アイドルという立場 オタクという立場

第三巻ではえりぴよさんと舞菜だけではなく、他にも様々な面からアイドルとオタクの関係が描かれます。例えば、人気投票の結果、トップを獲得したれおはセンターに選ばれます。それに対して「れおがセンターなんて、いつものことじゃん」と思ってしまうえりぴよさんでしたが、それに対して「違います… このセンターは特別なセンターなんです!!」「僕たちオタクとれおの絆の架け橋!!」とくまささんは力強く答える一幕があります。

これまでの不動のセンターとは違い、オタクたちが投票してグループの中で一位を取ることで、立つことのできたセンター。それはれおのオタクたちにとって、また、れお本人にとって特別なものでした。くまささんとれおの間では、”前”のグループでは果たせなかった願いでもあります。ここに見られるアイドルとオタクの同士のような関係がとても素敵だなって思います。アイドルがキラキラと頑張って、それを見てオタクたちが支える、そんな関係です。

他の関係で言うなら、空音と基さんの関係でしょうか。前列に立てなかった空音を見た基さんの「僕が頑張らなかったからだ」という独白。別に後列でも良いや、むしろ人気があまりでない方が嬉しいとまで思っていた基さんが、自分の考えを改める姿にグッときました。また、「ロリに需要はない…!?」と愕然になる文(あーや)がかわいい。そのあとロリ脱却しようと色仕掛けしてみるもオタクから不評ですぐやめるのもかわいいですね。

まとめ

第三巻、わちゃわちゃとしていた人気投票もようやく終わりました。アイドルにしろオタクにしろ、それぞれの結果を胸にしまいます。人気投票の順位そのものは順当というか、予想通りでしょうか。やはりれおは強し、舞菜はもしえりぴよさんブーストが正常に働いていたら、どのあたりまで食らいついていたのか、ちょっと気になりますね。えりぴよさん一人で上位に食い込めてしまうのなら、それはそれで大丈夫か!?って不安になってしまいますが。

個人的にはれおとくまささんの関係がとても好きですね。今回、ようやく人気投票という舞台で、1位とセンターを勝ち取ることができたのが素敵、おめでとうございます。空音はなんというか…ふんだりけったりですね、でも今でも推してる人は頑張ってほしい。それはともかく、人気投票が終わった後も季節はどんどん進んでいきます。クリスマスイベントにて舞菜が発言した「わたしね未来もみんなと一緒にクリスマスしたい」という言葉は、彼女の思いが見られて素敵です。

内気でシャイだった舞菜が前向きな発言をメンバーの前ですることがとてもグッとくるのです。そんなクリスマスの日もイベントだったChat Jamとオタクの面々の日々は続きます。大晦日にバレンタイン、駆け足で時は進んでいきます。アイドルにとって時間は命といってもいいほど大事なもの。アイドルでいられる時間のなかで、彼女たちは武道館に辿りつくことはできるのか?『推しが武道館にいってくれたら死ぬ』これからも楽しみです。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

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