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『ハナイロ』のアカコッコ先生による最新作、『彼女がお兄ちゃんになったらしたい10のこと』の第1巻が発売されました。

前作は、人間界にやって来た魔女見習いの少女たちが主人公の、ファンタジー要素が強い作品でした。今作にはそういった設定こそありませんが、女の子4人が家族ごっこをしながらシェアハウスで暮らすという、ある意味で前作以上にファンタジー(幻想的)な物語になっています。

それも、姉妹みたいに仲良くといったレベルではなく。父、母、兄、妹と、ひとりひとりが本当の家族のような役割を演じて共同生活を送っているのです。女の子たちがですよ!(落ち着け) 今回は、いやが上にもストーリーが気になる、『彼女がお兄ちゃんになったらしたい10のこと』をレビューさせていただきます。

あらすじ

主人公の七瀬は高校入学を機に、広くてきれいで家賃も格安という好条件なシェアハウスに引っ越してきました。

シェアハウスには、入居者同士のトラブルを防ぐために細かい決まりがあるものですが、ここのルールは少し、いやかなり特殊。住人それぞれに「家族」の役割が割り振られ、その役になりきって生活しなければならないのです。

七瀬の担当は、「兄」。しかし、タイトルからも分かる通り、彼女は女の子……。性別も年齢もメチャクチャ、なのに不思議としっくりくる。おかしくて、せつなくて、あたたかい、七瀬たちの疑似家族ライフを、あなたも覗いてみませんか?

感想

無理があるようで意外とはまっている、家族の配役

今作の最大の特徴である、家族ごっこのルール。女の子たちが家族のように暮らしているだけでも個人的には大満足ですが、その配役がまた絶妙でして。せっかくなので、全員ぶん紹介させてください。

  • 父:涼原マキ(20歳、女性警察官)
  • 母:丹羽つぐみ(10歳、女子小学生)
  • 兄:佐久間七瀬(15歳、女子高生)
  • 妹:木戸井かりん(13歳、女子中学生)

いろいろ無理があるだろ! とツッコみたくなる気持ちは分かります。けれども、どのキャラのキャスティングもバッチリはまっているため、序盤の2~3話を読み終わるころには違和感もなくなっているでしょう。

特に、「母」役のつぐみが色々な意味でやばいです。10歳ながら料理も掃除も完璧にこなし、「家族」たちを見守る優しい眼差しは母親そのもの。「父」役のマキそこ代わって、なんて野暮なことは言いませんが、つぐみの子どもにはなりたい。つぐみママに頭なでなでしてもらいたいだけの人生だった……。

お兄ちゃん適正が抜群な主人公・七瀬(女の子)

女性のマキが「父」役に不満を持っていないのならと、嫌々ながらも「兄」役を受け入れた七瀬。しかし、本人のモチベーションとは裏腹に、彼女のお兄ちゃんぶりはこれ以上ないくらい板についています。

元々ボーイッシュな見た目ですし、困っている女の子を見かけたら自然に手を差し伸べるなど、性格もイケメン。家族ごっこの一環として、シェアハウスで暮らし始めてから一人称を「ぼく」に変えていますが、昔からボクっ娘だったのでは? と思うくらい違和感がありません。

「妹」役のかりんに外出先でも「お兄ちゃん」と呼ばれているせいで、周りの人たちからは女の子をはべらせて高度な家族プレイを楽しんでいる(だいたいあってる)という誤解を受けることに……。おまけに学校では、引かれるどころか、逆にコアなファンがついてしまいます。七瀬の運命やいかに!?

家族ごっこが始まった理由は、かなりシリアス?

ハチャメチャな家族ごっこのルールを決めたのは、「妹」兼、シェアハウスの大家でもあるかりんです。以前はお嬢様学校に通っていましたが、この家に引っ越すためにわざわざ今の中学校に転校したとのこと。転校するために引っ越したわけではないんですよね。

なぜかりんは、そこまでシェアハウスに、家族ごっこにこだわるのか? 詳しい理由は語られていないものの、彼女が「家族」のぬくもりを欲しているのは間違いありません。自らは「妹」を演じ、七瀬たちに「父」「母」「兄」の役割を与えているのも、誰かに甘えたいという潜在的な欲求によるものではないでしょうか。

あるとき、生来の陰気な性格がバレてしまい、いつものお調子者なキャラが本当の自分だと取りつくろうかりん。それに対し、どちらも本当のかりんだと彼女を受け入れる七瀬――。かっこ悪いところを見ても、決して幻滅したりしない。血はつながっていなくても、彼女たちは確かに「兄妹」であり、「家族」なのですから。

まとめ

  • 年齢も性別もバラバラな家族ごっこの配役が面白い
  • 「兄」役を嫌がりつつも、どんどん兄っぽく(男っぽく)なっていく七瀬がカッコかわいい
  • お調子者な「妹」のかりんが、時おり見せるシリアスな表情にゾクッとさせられる

家族ごっこのルールを知らない第三者からすると、確かにいやらしいことをしているように見える七瀬たち。「遊びじゃなくて真剣なんです」と言い訳するたび疑惑が深まっていく様子に、思わず笑ってしまいます。

また、前述したかりんの家庭の事情はもちろん、七瀬とつぐみが親元を離れてシェアハウスで暮らしている理由も気になるところ。ギャグパートとシリアスパートの配分が絶妙な、アカコッコ先生の新境地ともいえる作品です。

 

4コマ好きのフリーライター。萌えかどうかを問わず、4コマなら何でも読みます。個人ブログ「まっしろライター」では、新刊コミックスの発売日前レビューも更新中。

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