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ラブひな 8

個性豊かな美少女たちの住む女子寮ひなた荘の管理人を務めながら、東大合格に向かって猛勉強を続ける青年、浦島 景太郎を主人公にしたラブコメの金字塔「ラブひな」。今回は、これまでとは一風変わった展開が楽しめるラブひな単行本第8巻のレビューをさせていただきます。

前巻のラストシーンで失踪したことが明らかになった景太郎。8巻は、行方不明になった景太郎をヒロインたちが探し出すことがストーリーの肝になっています。景太郎が一体どこに行ってしまったのか…そのことについては、後ほど触れさせていただきます。

ストーリーが進むごとにファンタジー色が強くなってきていたラブひなですが、この巻からは完全にファンタジーの世界観に入ります。あまりに設定がぶっ飛びすぎて連載当時は賛否両論分かれていたようですが、個人的にはかなり好きなエピソードです。ラブひなが単なる「王道ラブコメ」から、唯一無二の作品に進化する決定稿となったのがこの8巻だったのではないかと考えています。

あらすじ

東大2次試験本番で居眠りをしてしまい、たった5分で解答用紙を埋めた景太郎。あまりの失態に不合格を確信し、ひなた荘のメンバーのも告げずに失踪してしまいます。景太郎はこのまま東大のことも、成瀬川のことも忘れるつもりでいました。

景太郎が辿り着いたのは、太平洋のど真ん中にある「パララケルス島」でした。そこで偶然瀬田さんと再会し、景太郎は発掘調査の助手として働きはじめます。もはや東大の合格発表を見るつもりも無い景太郎は、当分この島で働いていようと決心します。

そのころ日本では、東大の合格発表当日を迎えていました。代わりに合格発表を見に行ったひなた荘のメンバーは、景太郎が奇跡的に合格していたことを知ります。喜ぶ一同でしたが、5日以内に手続きしなければ合格は取り消しになってしまうのです。タイムリミットまでに景太郎を日本に連れ戻すため、ひなた荘一同は慌ててパララケルス島に向かうのでした。

感想

景太郎は太平洋のど真ん中「パララケルス島」にいた

東大2次試験で成瀬川と結婚する妄想にふけり、あまつさえぐっすり眠ってしまうという失態を演じた景太郎。試験時間残り5分というところで目を覚まし、絶望してそのまま失踪してしまうところで前巻が終わりました。生きているかどうかも怪しいと思えるような失踪シーンでしたが、とりあえず無事だったようです。傷心旅行というよりも北国で頭を冷やすつもりで旅立っただったようですが、景太郎はお得意のドジで乗る船を間違えます。こうして太平洋のど真ん中「パララケルス島」に辿りつきました。

8巻は、全編通してこの「パララケルス島」で巻き起こるエピソードとなります。景太郎がひなた荘から完全に離れるのは、3巻の傷心旅行編以来です。ひなた荘のヒロインたちは全員で景太郎を追いかけてパララケルス島にやってきます。失踪した景太郎を見つけ出して日本に連れ帰るというのが、8巻の主な流れですね。さらわれたヒロインを主人公が見つけ出す…みたいなパターンならマンガによくある展開なんですが、ヒロインたちが血眼になって主人公を探し出すという展開も珍しいものです。物語の序盤では必死に景太郎を追い出そうとしていた美少女たちが、景太郎を連れ戻すために必死になる姿にはグッとくるものがあります。

かつて景太郎を追い出そうとしていた人物の筆頭である成瀬川は、景太郎がパララケルス島に居ることを知ると真っ先に連れ戻しに向かいます。景太郎から「パララケルス島にいます」というFAXが届いたのは東大の合格発表当日だったのですが、成瀬川は大切な合格発表を犠牲にしてまで景太郎を選ぶのです。ひなた荘のみんなに心配をかけた景太郎に対する怒りもありますが、きっとそれ以上に景太郎が大切な人になっているのでしょう。1巻から通して読んでいくと、この2年間で景太郎がどれほど慕われる存在に成長したのかが分かります。

景太郎は東大に合格していた!?しかしタイムリミットが迫る

合格は絶望的かに思われた景太郎ですが、実は残された5分で解答用紙を全て埋めていたことが判明します。むつみの採点によれば、なんと景太郎が解答用紙は全問正解しているとのこと。この試験の結果が良かったことが功を奏し、景太郎は奇跡的に東大に合格してしまいました。東大入学レベルの問題を5分で解ききってしまうとは…火事場の馬鹿力とはいえ、景太郎の地頭は相当良かったのかもしれません。ラブひなが始まってから数えること8巻、作中時間にして2年、ついに景太郎は東大生になる資格を得たのです。

それにしても、あのダメダメだった景太郎が本当に東大に合格してしまうとは…正直、合格発表のシーンを読んでいて少し泣きそうになってしまいました。実際に読んでいただきたいので細かい描写の説明は控えますが、8巻には合格発表のシーンが2回あります。ひなた荘のメンバーが景太郎と成瀬川の代わりに東大に行くシーンと、パララケルス島で景太郎が合格を知るシーンです。特に、パララケルス島での合格発表はかなりの名シーンだと思います。

かくして東大に合格した景太郎ですが、問題は合格後の手続きにありました。東大に合格した者は、合格発表日から5日以内に受験票と書類を郵送して手続きを行わなければなりません。本来なら5日もあれば手続きには十分な時間ですが、肝心の景太郎が太平洋のど真ん中にいるため、連絡すらつかない状況なのです。ひなた荘のメンバーたちは、せっかくの合格をフイにしないため、パララケルス島まで景太郎を探しにいきます。ただでさえ場所すらよく分からない島に居る景太郎ですが、そのうえ遭難していたために捜索は難航を極めます。景太郎の捜索、そして東大の手続きが間に合ったのかどうかは、本編を読んでご確認ください。

新ヒロイン「ニャモ・ナーモ」がカワイイ

パララケルス島編では、新ヒロインがひとり追加されます。瀬田さんの発掘調査を手伝っていた少女ニャモ・ナーモです。景太郎たちには「ニャモちゃん」と呼ばれています。肌の色こそ違いますが、ニャモの顔はひなた荘に住むしのぶの顔にソックリです。そっくりなのに、何故かしのぶとはまた違った魅力があるというか、とにかくカワイイんです。ややバトルマンガ寄りになってきたパララケルス島編で、ニャモの存在は数少ない清涼剤になってくれます。

しのぶもかなり内気な性格のヒロインですが、ニャモはしのぶに輪をかけて内気です。パララケルス島では景太郎や成瀬川の看病をしてくれたりとかなり良い子なのですが、しかしほとんど言葉を発することはありません。もちろん、ニャモから見れば景太郎たちは外国人で、言葉が通じづらいから喋らないというのもあるのでしょうが、かなり大人しいヒロインです。ラブひながアニメ放送されていた当時、ニャモはかなり人気があったキャラクターだったのを覚えています。

景太郎を追いかけてパララケルス島にやってきたしのぶも、実際にニャモと対面します。自分と全く同じ顔の人間と対面するというのも少し怖そうなものですが、しのぶはニャモと仲良くなります。ニャモがほとんどしゃべらない様子を見て、しのぶが「私、今はこんなにしゃべれるようになったけど、ひなた荘に来たころは怖くてずっと黙ってたもんね」と思い出すシーンがあります。景太郎に対するヒロインたちの態度が初期とはだいぶ変わったな、とは思っていましたが、こうして見ると景太郎自身がヒロインたちの性格に影響を与えたのかもしれませんね。

まとめ

ラブひな単行本第8巻は、今までの展開とは全く違うストーリーでした。これまでのラブひなは受験生たちの恋愛物語でしたが、パララケルス島編はバトルあり、ファンタジーあり、恋愛ありとてんこ盛りです。このレビューではあえて触れませんでしたが、景太郎と成瀬川の関係もパララケルス島での一件を通して急接近します。景太郎が成瀬川に告白…というかほとんどプロポーズに近いような発言をしてしまうシーンもあるので、ラブコメ好きの方も必見の巻です。

また、良くも悪くも、これまでのラブひなの世界観を壊しているのが8巻だなと感じます。昔ながらの純愛系ラブコメが好きな方には驚かれるような展開ですが、作中にギャグパートとバトルパートが一気に増えました。このあと景太郎たちが日本に帰ってきたら以前のような穏やかなラブコメが再開されるのかと言えば、そんなこともありません。次巻でひなた荘に戻ったあとも、パララケルス島編の流れを汲んだ新しいラブひなが展開されます。

東大合格は、ラブひなという作品のなかで掲げられた最終目標のひとつでした。景太郎と成瀬川が2人そろって東大合格の目標をクリアしたことは、この作品における大きな区切りだと言えるでしょう。ひなた荘のメンバーが景太郎に合格の旨を伝えた時点で、長かった「東大受験編」が終わったようなものです。いわば、この8巻までがラブひなの第一部で、9巻以降は第二部が始まると考えることもできます。東大合格という最も大きな目標を達成し、かねてより探していた「約束の女の子」の正体が成瀬川だと確信した景太郎。今後はどのような目標に向かって進んでいくのか、次巻以降の行動にも注目です。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

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