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世はまさに、大グルメマンガ時代。当サイトでも何度か、「ご飯」や「お酒」をテーマした作品の特集を組んだことがありました。

おいしそうにご飯を食べたり、お酒を飲んで頬を赤らめたりしている女の子は、たしかにかわいい。けれど、最近はグルメマンガが増えすぎて、胃もたれを起こしている方もいるのではないでしょうか?(うまいこと言ったと思ってる)

そんな方におすすめしたいのが、この『偏食女子は恋でおなかを満たしたい』。タイトル通り、超偏食なヒロインが嫌いなものを食べさせられて辛そうな顔をしているのを楽しむ作品です。グルメマンガもここまで来たか……。

あらすじ

会社員の田盛アキは、超がつくほどの偏食女子。普段の食事はサプリメントとお菓子だけという、乱れた食生活を送っていました。

しかし、片想いしている同僚の藤井くんの好きなタイプが「何でも美味しそうに食べる子」だと知って心機一転。先輩たちの助けも借りながら、少しでも食べられるものを増やそうと努力を始めます。

はたして、アキの偏食は治るのか? これは、苦手なものを食べてプルプル震える女の子の日常を覗き見るという、普通のグルメマンガとは一味違った「アンチグルメ4コマ」なのです――。

感想

ご飯をまずそうに食べる女の子はかわいいと思いませんか?

今までどうやって生きてきたのか心配になる、アキの偏食ぶり。野菜全般が苦手なのはまだ分かるとして、好きな食べ物ランキングの上位に入るであろう、ウナギやイチゴもダメみたいです。

それでも藤井くんの理想に近づくため、料理男子である彼が作ってきたバナナケーキや、お土産のドライ納豆をがんばって口に入れます。当然どちらも嫌いなので泣き出してしまいますが、「泣くほど喜んでもらえた」と都合よく誤解されてセーフ。

野澤ゆき子先生は、ちょいエロ探究マンガ『江口くんは見逃さない』の作者でもあるため、顔をしかめて食べるアキの表情もフェティシズムが満載です。あー、自分もアキの口に苦いものを突っ込みたい。……もちろん、納豆やピーマンのことですよ?

偏食は、ただの「ワガママ」なのか

ここまでに書いた内容だけでは、アキがただのワガママ娘だと思われてしまうかもしれません。しかし物語が進むにつれて、彼女の偏食は単に好き嫌いが激しいという話ではなく、「食事」に対するマイナスイメージが根底にあることが分かります。

「お腹に入れば一緒」と、母親に残飯のようなご飯を食べさせられたり。学校で先生に、給食を全部食べることを強要されたり。特に後者は「給食ハラスメント」と呼ばれ、社会問題としても認知されるようになってきました。

何でもかんでも「ハラスメント」をつけて……と揶揄する人もいますが、むしろ今まで、「しつけ」と称して「嫌がらせ(ハラスメント)」に近い行為がまかり通っていたことが問題なわけで。今もどこかで、アキのような人たちが苦しんでいるかもしれないのです。

イヤよイヤよも好きのうち

とある一件から、何でも美味しそう食べるどころか、実は嫌いなものだらけであることが藤井くんにバレてしまったアキ。しかし、藤井くんはアキを軽蔑するどころか、「苦手な者を見つけれる人は自身の感覚を大切にしてる人」だと言いました。

「嫌い」の数が人一倍多いアキは、他者のそれにも敏感です。藤井くんのちょっとした表情の変化で彼が苦手なものを察したり、今野先輩がキャパオーバーの仕事を抱えていることに誰よりも早く気づいたり。それはつまり、人の痛みが分かるということ。

苦手を克服しようとする気持ちも、たしかに大事かもしれません。けれど、嫌いなものを代わりに食べてくれたり、食べやすくなるレシピを一緒に考えてくれたりする人に出会えたら。そんな人たちとの食事は、きっと楽しい時間になるでしょう。

まとめ

  • 苦手なものをイヤイヤ食べるアキの表情にそそられる
  • 給食ハラスメントなど、社会問題に通じる重いテーマも
  • 苦手があることを受け入れ、理解してくれる人がいることの尊さ

『偏食女子は恋でおなかを満たしたい』は、好き嫌いの多い女の子が主人公という変則的なグルメマンガですが、価値観の違う人たちがお互いを尊重しながら生活していくという、普遍的なテーマを扱った作品でもあります。

1巻完結なのでさらっと読めて、最後も後味のいい終わり方で締められています。ボリューム満点なグルメマンガに少し食傷気味の方は、お口直しに本作をどうぞ。

田盛アキを愛でる!

4コマ好きのフリーライター。萌えかどうかを問わず、4コマなら何でも読みます。個人ブログ「まっしろライター」では、新刊コミックスの発売日前レビューも更新中。

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