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亜人ちゃんは語りたい(1) (ヤンマガKCスペシャル)

書店で偶然見かけたコミックスの表紙に引き寄せられたのが、この漫画を手にしたきっかけです。小生意気な少女といった感じのイラストに、思いもよらぬタイトルが添えられていました。「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」

亜人とは、ファンタジー作品などに登場する、ヒトに近しい種族でありながら、場合によっては怪物のように語られる存在です。エルフ・狼男等などが有名でしょう。つまり、この少女は人間ではないということなのだろうか? と、疑問に感じました。

しかし、よくよく観察してみると、彼女は学生鞄を持っており、現代の女子高生のような格好をしています。おまけに、どう見ても人間としか思えませんでした。一体どういうことだろう? 好奇心に駆られ、ページをめくりました。

あらすじ

この世界には「亜人」と呼ばれる、特別な性質を持つ人間たちがいます。彼ら古代の神話やおとぎ話のモチーフとなった存在で、人類による迫害の歴史を持っていますが、近年では亜人に対する差別や偏見もなくなり、個性として認められている……。

そんな世界の普通高校で生物教師をしている主人公、高橋鉄男は学生時代、生理学を専攻していました。彼は「亜人」という存在に並々ならぬ興味を抱いていながらも、世論や世間の評判を恐れた大学側の都合で封殺されてしまいます。

ところがある年、彼が勤務している高校にひとりの女性教師が赴任してきました。自己紹介の席で、彼女は自分が亜人であり、サキュバスであることを告白します。滅多に見られないはずの亜人に、思わぬところで遭遇した高橋先生は、それを皮切りに様々な亜人娘たちと出会い、交流していくことになりました。これは、そんな高橋先生が亜人(デミ)たちとの対話を通じて、彼女たちを理解していくほのぼの学園コメディです。

感想

研究者としての高橋先生と、亜人娘たちの会話が楽しい

作中に登場するのは、サキュバス(淫魔)の女教師・佐藤早紀恵、一年生のバンパイア(吸血鬼)少女・小鳥遊ひかり、同じく一年のデュラハン娘・町京子、雪女の日下部雪。彼女たちとのやりとりが面白いです。亜人に興味しんしんな高橋が、彼女たちに日頃からの疑問をぶつけるというのが基本なのですが、その会話の内容が時に回答者と普通の人間の間に横たわるカルチャーギャップのように感じられたり、あるいは妙な説得力があって笑いを誘います。

たとえば、バンパイアは血を飲まないと駄目なのかという高橋の質問に対して、ひかりは、その気になれば血に頼らない生き方もできると回答します。バンパイアには国から血液パックが配給されているのですが、それすら使わずにいる者に対して、単に「すげーなー」くらいにしか思っていないのだとか。その感覚が理解できない高橋に対し、ひかりは菜食主義者が肉を食べないことに対してどう思う? と逆に問いかけます。高橋から出てきた言葉は「すげーなー」。すごいとは思うけれど、自分には関係ないから巻き込まれたくない。それを聞いた彼は、ひかりに共感を覚えます。毎回こんな感じで進行していく彼女たちの会話に、ほのぼのとしてしまいます。

他にも、暑さのせいで体育の授業に参加できない雪や、デュラハン(首なし騎士)という亜人の中でも特に変わり種である京子、無自覚で異性を誘惑してしまうサキュバスとしての特性ゆえに、真実の恋を知ることができるのか悩み続ける早紀恵。特に早紀恵のそれは、亜人ならではの、本人にとっては大変深刻な悩みであるのに、本人の夢見る少女のような、それでいて微妙に残念な性格のせいで、端から見ていてついつい笑ってしまいました。

亜人ちゃんたちはお年頃の女の子

他人にはない、特別な個性を持つ亜人娘たちも恋するお年頃。なんだかんだと世話を焼き、親身になって相談を受けてくれる高橋先生に対し、淡い恋心を抱き始めます。早紀恵の場合は、無自覚に誘惑してしまっていた高橋が全く反応を見せなかったことで、「性的に淡泊な異性が相手なら、サキュバスでも本当の恋ができるかもしれない」と、ほのかな期待を寄せるのですが……その実態は、エロイ感情に支配されそうになりながらも本人の前でそれを出したら失礼だと考えた高橋が、必死に我慢していただけという勘違い。その微妙なすれ違いに唖然とし、次いで噴き出してしまいました。

全員がそれぞれ異なる魅力を見せてくれるので、このまま教師と生徒、同僚同士、異端への理解者という関係が続いて欲しいと思う反面、高橋のあまりのニブさに、こんなに可愛い子たちに始終囲まれているというのに君はいったい何をしているのかと、思わずツッコミを入れたくなってしまいます。とはいえ、彼女たちも直接告白するまでには至っておらず、さりげなく好意を示しているだけですので、仕方のないことかもしれませんが……。

また、一方で少女たちの同級生の中にも、彼女たちに想いを寄せる少年たちが存在するなど、状況は予断を許しません。作風的に、ドロドロとした雰囲気にはならないと思いますが、ちょっとだけ心配です。でも、それもこれも全て包容力はあるクセに女性の感情にニブい天然タラシの高橋が悪いのです!個人的には同僚の佐藤先生と良い仲になって欲しいなと感じていますが、亜人ちゃんたちは皆とても可愛いので、誰かが泣くのは見たくない、とも考えてしまいます。

亜人ちゃんたちをまだまだ語りたい!

今はほとんど学校内でのやりとりに終始していますが、学園モノのお約束でもある体育祭や文化祭、林間学校などの学校行事に参加した彼女たちがどう動くのか。高橋先生だけでなく、広く大勢の人々と交流する姿を是非見てみたいと思いました。日常(学校)の中から非日常(旅行)に飛び出したと仮定したときに、亜人ならではの反応を期待してしまうのです。たとえば、首を自分で持ち歩かなければいけない京子がどういう対応をするのか、友人の亜人たちはどういうリアクションをするのか。そんな想像をしただけで楽しめる要素が、この作品にはあると思います。

そして、そんな「亜人ちゃんは語りたい」の魅力をさらに引き出しているのは、なんと言っても可愛らしい絵柄でしょう。アニメ風のすっきりとした画風ですが、それがこの作品の淡々とした、それでいて暖かみのあるストーリーに彩りを添えていると思います。女の子の柔らかそうな質感や、愛嬌のある表情だけでなく、ひっつめ髪にジャージという、徹底的に色気を排除した服装でありながらも随所ににじみ出てしまう早紀恵のエロスがたまりません!

かといって男性キャラクターがしっかりと描かれていないということもなく、主人公の高橋先生も、生物教師でありながら、がっしりとした体格の大男で、それがまたいい意味でのギャップになっています。無精髭を生やした、微妙にだらしなさを感じさせる白衣の生物教師がコントラストとなり、亜人ちゃんたちの愛らしさを引き立てている……。本作の作者様は、そのあたりもしっかりと計算した上で作画されているのではと深読みしてしまうくらいです。

まとめ

ここまで「亜人ちゃんは語りたい」について語ってきましたが、いかがでしたでしょうか?書店での偶然の出会いから、この作品を知ることとなりましたが、できればもっと大勢の方に読んで頂きたいと思い、こうして筆を取りました次第です。ストーリーの序盤こそやや淡々とした印象を受けますが、回を重ねるごとにキャラクターたちの個性が露わになり、それと共に生き生きと世界の中で動き出すさまは一読の価値があると考えています。

特殊な個性を持つ相手との相互理解の難しさや、ごく普通の家庭に、先祖返りで突然生まれた亜人の子に対して家族が被る苦労、しかしそれに負けずに向ける愛情など、単なるほのぼの作品ではなく、思わずほろりとさせられる場面もところどころ見受けられますが、明るく、けなげで、頑張り屋な少女たちが、すぐに暗くなりかけた空気を吹き飛ばしてしまいます。やはり、可愛いは正義である!いろいろな意味で、それを実感させられました。

最近アニメ化したこともあり、比較的入手しやすい作品となっております。書籍だけでなく、AmazonのKindleやニコニコ静画などでも一般公開されており、スマートフォンやパソコン上で購読することも可能です。もしもこのレビューをお読みになり「亜人ちゃんは語りたい」興味を持っていただけましたら、是非ともお手に取って、亜人ちゃんたちと高橋先生の心温まる(?)研究と交流の日々を楽しんでもらえればと思います。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

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