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微熱空間 1 (楽園コミックス)

「微熱空間」は親の再婚により多感な時期の少年少女が突然同居することになるという、ありがちなシチュエーションを描いた作品です。作者は「ひだまりスケッチ」や「魔法少女 まどか☆マギカ」のキャラデザで有名な蒼樹うめ先生で、思春期特有の身もだえするような恥ずかしさが全編にちりばめられた作品になっています。

男性主人公である直耶(なおや)とヒロインである亜麻音(あまね)の視点を交互に行きかうような構成が特徴で、思春期の男子の視点と女子の視点が入り混じるのが特徴となっています。二人は同い年で誕生日は三日違いという設定のため、単純に姉と弟と割り切れない部分がポイントになってきます。

二人の関係が恋愛関係になっていくのか、そもそもそれ以外の関係になるのかも不明瞭であくまで心の揺らぎを描いているのもポイントです。少しずつ男女として意識はしていくものの、亜麻音を好きな同級生の存在もあり、展開が読めない部分もあるのです。

あらすじ

親が再婚するということで祝福していたら、再婚相手の連れ子が同い年の女の子だった。連れ子がいるとは聞いていたが、同じ年とは聞いていないというシチュエーションが「微熱空間」の始まりです。ヒロインである亜麻音も弟が出きるとは聞いていたものの同い年だとは知らない状態で、思春期の男女がお互いにどのように接するべきか手探りしていくのが物語の序盤になります。

二人の関係だけでややこしいのに、亜麻音のことを好きな親友がいる事も物語を複雑にしていきます。男性主人公とヒロインという関係だけでなく、サブヒロインとも言える少女の存在を加えた三角関係が物語に奥行きを与えているのです。

メインの二人が人目で恋に落ちるということはなく、お互いの生活習慣の違いなどに戸惑いながら距離を探っていくのが1巻の流れです。進行は非常にゆっくりで登場人物の内面を丁寧に書いているのが特徴となっています。

感想

思春期特有の恥ずかしさに悶える

「微熱空間」の最大の特徴になっているのが、安易な恋愛展開にならないことです。むしろ主人公とヒロインはお互いをどういう人間と捉えるべきかというところからスタートしており、異性として認識していいのかも迷ってしまうような状態なのです。関係上は姉弟ではあるものの同い年というのが絶妙で、戸惑いや気恥ずかしさを丁寧に書いているのがポイントなのです。シチュエーションとしてはなかなか無い状況であっても、キャラの心情はリアリティを追求しているのが魅力です。

特に目立つのが直耶の高校男子にありがちな思考回路です。男性向け媒体であればエロ全開となりがちですが、むしろ異性とどう接していいかわからないような状態から出発しているような状態です。男とはどうあるべきかといった価値観や、思春期特有の妙なプライドに振り回される姿は男性にとって非常に良く知ったものであり、赤面物の恥ずかしさとなって刺さってくるときがあります。亜麻音からすれば同い年の男性はあまりに子供っぽい存在であり、異性以前の認識になるのも非常にリアルです。

二人に共通しているのは、恋愛どころか異性に免疫が無いところです。些細なことで意識をしてしまったり、逆にそうではないと打ち消したりと内面での心の切り替えは非常に忙しくなっています。お互いが親のことを思いやっているのも特徴で、良い関係を築こうと手探りをしている姿も健気です。離婚や再婚がそれほど珍しい時代ではなくなっているからこそ、リアルであり、同時に気恥ずかしさも味わえるのです。安易な展開にならないゆっくりとしたストーリーの進行も合わせて気恥ずかしさを存分に味わえる作品になっています。

明確な百合要素を織り込んでいるのも特徴に

蒼樹うめ先生のデビュー作であり、代表作でもあるのが「ひだまりスケッチ」です。女子寮にすむ女生徒たちの交流を描いた作品であり、男性キャラがほとんどでないのも特徴となっています。女性ばかりが登場するということで百合要素を見出す人も存在しますが、明確な恋愛描写はほとんどないのが特徴となっています。しかし、「微熱空間」の場合は違います。ヒロインの亜麻音に思いを寄せる親友は女性であり、明確に直耶をライバルとして意識しているのです。

主人公二人の関係を主軸とすると、亜麻音と親友の関係はもう一つの軸となります。直耶の登場は、親友に自分が女であることを自覚せざるを得ない状況を作り出すのです。女同士だからできることがあれば、同性同士だからこそ踏み切れない部分も出てきます。亜麻音はあくまで友人として接しているからこそ、どのようにかかわりを続けていくかが見所になっているのです。報われない恋なのか、それ以外の救済が存在するのかも注目のポイントです。

本人の感情は特別なものでも、行動の結果はコメディに結びつきやすいのも特徴です。あれこれと直耶に自分の存在を見せ付けようとした結果、直耶と亜麻音の距離を近づける結果になったり、意識されてしまったりとラブコメ要素を入れるリリーフ要因としても機能しているからです。キャラクターの心理描写は丁寧であっても、しっかりと笑いの要素を入れるのは4コマ出身漫画家の面目躍如といえます。4コマ以外の媒体での作品でもあるため、ひだまりスケッチの脱力感とは違う空気感を味わえるのもポイントです。

こっそりサービスショットも多い

漫画に萌えを求める人が気になるのが、サービスショットの有り無しです。微熱空間には安易なラッキースケベが無く、むしろ女性側から見たアンラッキースケベが多少あるような状況です。ただし、男性の目線でのスケベシーンが無いだけで、着替えなどのシーンはしっかりと出てきます。フェチズム的ないやらしさは無く、あくまで自然な流れの中の一シーンとして描かれているのが特徴で、男女問わずに読みやすい構成になっているのです。

注意したいのは、ロリ巨乳なキャラは出てこないことです。蒼樹うめ先生のキャラクターデザインは、見た目が幼くかわいらしいのが特徴になっています。しかし、微熱空間に登場する女性キャラは亜麻音と親友と、主人公二人の母親くらいであり、キャラクターの体型や年齢のバリエーションが少ないのです。見た目に比例して胸のサイズも控えめな二人の登場回数が多いため、ロリで巨乳なキャラが出るのではと期待すると裏切られます。純粋に控えめなボディを愛でるのがオススメです。

連載媒体が季刊誌であることもあり、連載ペースは非常にゆっくりです。そのため単行本化にあたっておまけが大量に追加されているのも見所になっています。肌色率の高さとは別として、サービスの多さも単行本ならではの特徴なのです。話の内容だけでなく、絵柄のかわいらしさを目的で買っても外れはなく、非常に楽しめる内容になっています。蒼樹うめ先生推しであれば抑えておきたい作品でもあり、表現のバリエーションを楽しむという意味でもオススメです。

まとめ

微熱空間は父親と母親の再婚相手の連れ子が同い年だったらというシチュエーションコメディであり、リアリティにも配慮しているのが特徴です。安易な恋愛展開ではなく、キャラクターの心理描写に重きを置いているため、ジェットコースターのような恋物語を期待すると期待はずれになる可能性があります。一方で、どう進むかわからない二人の関係や、気恥ずかしさを楽しむには非常に良く、甘酸っぱさと恥ずかしさをつめた作品になっています。

ただ二人の関係を書くだけでなく、親との関係やヒロインと同性の親友の恋心も物語りに関わってくるのもポイントです。物語の展開自体がゆっくりなので情報過多になりづらく、みんながお互いを思いやっている優しい空気が漂っているのも特徴です。ギクシャクしているのは、直耶に対する亜麻音の親友の嫉妬交じりの感情だけです。全体的に蒼樹うめワールドの作品であることは変わらず、作家推しであれば買って損が無い作品にもなっています。

登場人物が少ないため、シチュエーションに萌えられるかどうかが大きなハードルになります。キャラクターのかわいらしさは業界トップクラスではあるものの、キャラのバリエーションが少ないのがネックです。萌え漫画ではあるもののハーレム展開は無いため、その点は注意が必要です。連載ペース自体もゆっくりなため、じっくり待ったり読みながら、先を長く見れる人におすすめです。明確な百合描写もあるため、百合愛好家にもすすめたい作品です。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

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