スロウスタート (2) (まんがタイムKRコミックス)

『スロウスタート』2巻は、高校受験を病欠し、一年遅れで始まった女の子のちょっと人とは違うテンポで始まった学園生活を描くコメディ4コマです。登場人物が増えるだけでなくメインキャラクターの関係が掘り下げられていくのが2巻の特徴になっています。

ドラマチックなイベントなどはほとんどなく、ゆるっと進行していくのもポイントです。かわいい女の子がぼけたり、ぼけっぱなしになったりシーンが多く、突っ込み役不在の場面ではただ女の子がかわいい以外の要素がなくなってしまうこともしばしばです。

1巻よりも百合度が明確に上がるシーンがあり、それが好みの分かれる部分でもあります。女性同士の駆け引きや一途な思いと言う言葉にピンと来る人には特にオススメです。一方で、現実派の人にはちょっと難しい部分もあるため注意が必要です。

あらすじ

高校浪人を経験し、1年遅れの学生生活を始めた一之瀬花名ですが、学友にも恵まれて楽しい学園生活をすごしています。一方で、浪人した事はいまだに告げられておらず、みなよりも一切年上である事はいえない状態です。ちょっとした罪悪感を持ちながら、切り出すタイミングが見つからない日々が続きます。

そんな中、生活に大きな影響を受けるのが、万年大会(はんねん ひろえ)との交流です。大会は1巻終盤で知り合った花名と同じアパートに住む住民で、大学浪人から引きこもり生活に突入しています。浪人仲間が増え、その社会復帰のお手伝いをすることで花名も成長していくのです。

成長すると言っても目に見えるような結果はほとんど出ないのがポイントです。問題は主に友人に頼ることによって解決するため、なんともしまらないオチがつくことも珍しくないのです。メリハリとは無縁で登場人物が好き勝手に動き、ゆるっと時間が過ぎていくのです。

感想

百合度が大幅にアップするのがポイント

2巻の大きな見所になるのが百合度の大幅なパワーアップです。作者の篤見唯子先生は萌え系の作品に多く関わっていますが、同人界隈では百合作品をメインに発表しています。そのため2巻は作者の趣味が如実に繁栄されるような形になっていて、あちこちの百合要素がより明確に描かれているのです。例えば先生と生徒の性別と年齢を超えた駆け引きは激しさを増し、ついにとある一線を越えることになります。と言っても性的なものではもちろん無く、力が抜けるようなオチがつくのもポイントです。

もともと軽い感じで女性キャラを口説く十倉栄依子と言うキャラがいますが、同じく主要キャラで幼馴染でもある千石冠との関係がクローズアップされるシーンもあります。基本的に女性しか登場しない漫画のため、強い絆を描いても女同士で百合になります。特に冠の一途さはポイントで、進学先選びも栄依子の影響を受けたからだと言うことがわかるのです。中学時代は接点が切れていたこともあり、どれだけ強く思っていたのかがわかるシーンでもあります。

百合度が上がる一方で、キャラクターの感情をしっかりと丁寧に描くと言う面では不足もあります。基本的にゆるっと進行しているため、伏線などがほとんどなく、場当たり的にキャラクターが行動しているように見えることがあるのです。言葉や行動をそのまま受け止めて感情移入できるのか、かわいいからで許せるかが好みの分かれ目になってきます。シリアスな百合やリアリティを望んでしまうとマイナスになってしまう部分があるため、そこが若干惜しい部分にもなっています。

引きこもりからの脱出も大きな見所に

本策の見所の一つは、万年大会を引きこもりから脱出させるためのあれやこれやです。浪人したことがトラウマになっている人や、ファッションなどに興味が無く、出かけるための服自体が限られるような人は色々刺さる部分が出てきます。買い物は通販でほとんど済んでしまうため余計に出不精になり、引きこもりに拍車がかかると言う悪循環になっているのです。読者層の一部をそのまま突き刺すような内容になっているため、どのように解決していくかがヒントになる部分もあるのです。

もっとも、作戦を考える花名自体が出かけるための引き出しが無く、早々に行き詰ってしまうのもポイントです。結局友人の手を借りるわけになるのですが、餅は餅屋のごとく、得意な人に頼る事は恥ずかしいことではないという貴重な気づきをもたらしてくれます。女たらしで鳴らした栄依子が助っ人に呼ばれるわけですが、その口説きのテクニックも学ぶべきものがあります。人に頼るまでは思考のループに陥るのもお約束で、なかなか話が進まないじれったさを楽しみたい人にもおすすめです。

交流を通して花名も大会も成長しているはずなのですが、むしろ登場人物のファッションショートして楽しむのもオススメです。私服のバリエーションが増えればそれだけ見た目にも華やかになります。女性目線でのファッションの選び方も面白いポイントになっています。ただし、成長してもまた後退するそぶりが見えるあたりに人間の業の深さを感じる部分もあります。ここまでくると読者から成長しろよとツッコミが入りそうな勢いですが、妙なリアリティもあるのです。

体型的なメリハリはあまり変わらず、ロリ中心

キャラクターは増えるものの、体型的なバリエーションはあまり変わらないのもポイントです。身長が高いか低いか、髪が長いか短いかと言った違いがメインで、胸のサイズは基本的に全員控えめだからです。唯一の例外が花名の親戚でアパートの大家でもある志温です。1巻から変わらず体型のメリハリのトップを走っており、大きな胸が目立つ構図が多いのは安定しています。むしろ、ロリキャラが多い作風の漫画のため、ロリのバリエーションを楽しむのが正解と言えます。

教師と言う形で大人のクールキャラも出てきますが、今回は栄依子のペースに巻き込まれて若干崩れた部分が見え、ギャップが激しくなっています。そして逆に栄依子がノックアウトされたりする形になるのです。冠との関係もあるため、仲間同士の関係性も含めてどうなっていくかは注目のポイントと言えます。ちなみに先生は標準サイズのため、やはり大家の志温が頭ひとつ抜けている形になります。ディフォルメされてもやはりバストが目立ちます。

キャラクターごとの掘り下げが進むため、オタク趣味や社交性の高さなどの個性の違いが目立つのも特徴です。主要人物がほぼ満遍なく出番があるため、不公平感が少ないのも魅力です。キャラクター物の漫画はどうしても巻ごとに主要なキャラがわかれるため、好みや評価が別れる原因になりがちだからです。もっとも、栄依子に関しては交流関係が広い事もあって出ずっぱりな部分もあります。唯一の例外的なキャラになっているため、今後がどうなるかも注目です。

まとめ

2巻になっても物語の進行するスピードは遅く、タイトルどおりのスローな感じで日常が展開されていきます。物語の起伏ではなく、日常の生活の些細なネタを拾って描くのが基本の漫画のため、ドラマチックな展開とは無縁と言えます。そして、その空気感がたまらないと言う人におすすめで、日常系の何気ない女性のやり取りが好きな人にこそ読んで欲しい漫画になっています。そして、今回は引きこもりやオタクに刺さりやすい内容が含まれているのです。

百合度が上がったのも大きなポイントです。一方でリアリティなどの面ではマイナスになる部分があるため、評価が分かれるはずです。ストーリーを読み流す感じでゆるっと読んでいくか、しっかりと伏線がないか読み取りながら読み進めるかでも違いが出るため、引っ掛かりを感じない人もいるはずです。全く感じない人には違和感すらなく読み進められる可能性があるのがある意味恐ろしい部分です。思考能力を奪うような弛緩した空気が流れているため、IQが下がるような感覚もあります。

人間仕事をしたり勉強をしたりすれば疲れるもので、頭を悪くしたい瞬間もあります。脱力したいときに読みたい漫画であることは相変わらずです。百合度が上がったといっても真剣な恋愛と言うよりもあくまで好意の部分におさまっているため、真剣すぎる恋愛物に疲れた人や食傷気味な人にも向いています。また、こっそり単行本のおまけである書下ろしイラストや漫画はセクシー率が高めなため、健康的なお色気が欲しい人も読んで損はないと言えます。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8