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かつて魔法少女と悪は敵対していた。(1) (ガンガンコミックスJOKER)

『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』は冷酷無比な悪の組織の幹部が敵対する魔法少女に一目ぼれしてしまい、組織と恋との間で揺れ動くラブコメディーです。基本的に魔法少女と相対したときは完全に任務を放棄するのは公然の秘密です。

冷酷無比で有能なイケメンめがねが毎回魔法少女のかわいらしさにノックアウトされるのがポイントで、そのたびに周辺にあるものが物理的に破壊されていきます。魔法少女が街を守っているはずなのに、逆に物が破壊されていくシチュエーションにはかなりの矛盾があります。

魔法少女のコスチュームが胸を強調し、腰の部分を絞るなどかなりセクシーに出来ているのもポイントです。素材に透け感もあるため余計にスタイルが強調され、何のための衣装かと突っ込みたくなります。シチュエーションコメディーに特化しているため、深く考えるだけ無駄なマンガでもあるのです。

あらすじ

悪の参謀であり冷酷無比で知られたミラは、敵対する魔法少女に一目ぼれしてしまいます。ミラは早々に戦いを放棄すると、何かと自分に言い訳をしつつ魔法少女にケーキを贈るなど親交を深めていきます。魔法少女も魔法少女でそれを自然と受け入れてしまうため、基本戦いと言うものが存在しなくなってしまうのです。

魔法少女がミラの贈り物を自然と受け入れたのにはわけがありました。彼女は深刻な貧乏生活の真っ只中にあり、魔法少女も生活のために行っていたのです。あまりの貧乏加減に業を煮やしたミラは、魔法少女に1年分のコメを贈るなど攻勢を強めていきます。

悪の参謀のイメージが崩れるどころか、組織内からは何かの戦略があるのだろうと全く疑われないミラですが、自分自身の感情が何なのか把握ができないことから散々もだえることになります。魔法少女からの好感度は上がる一方になってしまうため、二人がどんな結末を迎えるのか全く読めなくなってしまうのです。

感想

魔法少女のあざといまでの可愛らしさがポイントに

作者の藤原ここあ先生は非常に可愛らしいキャラクターを書くことで知られている人気漫画家の一人です。2015年に若くして急逝してしまいますが、14歳でデビューしてアニメ化された作品もあるなど、才能を発揮した人物でもあります。『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』は彼女の遺作であり、萌えを究極まで凝縮させた作品でもあるのです。コスチュームデザインから構図、シチュエーションまでこだわっており、完成度も高いのが特徴です。

まず注目したいのは魔法少女のコスチュームです。胸を強調するコルセットにふりふりの袖、肩出しで胸元も大きく開いたデザインと、非常にあざとくなっています。しかし、ベースカラーを白にし、透け感がある素材とフリルとレースを組み合わせることで清楚感も引き出しています。露出を増しつつイヤミにならないように工夫がされているのです。衣装フェチも納得の出来となっているため、衣装デザインにこだわりがある人も一見の価値があります。

魔法少女が低身長で巨乳というのもポイントです。また、魔法少女以外にはバイトで生計を立てていることから衣装の幅が広く、コンビニの制服姿なども見ることができます。悪の組織の作戦を食い止めるため、スライム攻めにされるシーンがあるなどサービスシーンも満載です。変身中は半裸になるのもお約束です。目の前で変身シーンを目撃したミラがつい変身をアンコールしてしまうなど、破壊力満載になっています。我慢をすることを強いられる生活をしていていたため、自己主張が弱く、守りたくなるような性格をしているのも魅力になっています。

読者の心を代弁する悪の参謀が笑いを誘う

魔法処女と相対するミラは、冷酷無比、頭脳明晰な悪の参謀です。ただし、恋愛らしい恋愛をした経験がないことから自分が魔法少女に一目ぼれをしていると言う自覚が無く、何かと言い訳をつけて魔法少女に贈り物をするなどもてなし攻勢をかけることになります。いい加減認めろと突っ込みたくなる反面、好意を素直に表現できない男性読者の共感を呼ぶ部分が存在するのです。有り余る財力に任せたプレゼント攻勢も、方向性を間違えているだけで愛情表現だとしっかりわかるのもポイントです。

何よりもわかりやすいのは、魔法少女で上目遣いにお願いをされるシーンなどがあるとわかりやすく悶え苦しむ点です。心の叫びがそのまま口から漏れていることが大半で、そのまま読者の気持ちも代弁しているケースが多いのです。魔法少女が心配になるほど無防備だと言うことと、それに付け入っていいのかという自問自答が織り交ぜられるからさらに問題が複雑化します。しかも、魔法少女が嫌なことを受け入れることを強いられて生きてきたため、そういうことをされても拒否をすると言う未来が想像できないのです。

ミラは悪の組織の参謀でありながら、良心の呵責や理性と戦うことになります。基本的に4コマ形式で物語が進んでいくため、魔法少女の可愛らしさは非常に効果的に割り込んできます。お持ち帰りしたいと言うミラの心に共感する人は多く、だらこそ腹がよじれるのです。実際自分が同じ立場だったらと思うと行動に踏み出せない人も多いはずで、ミラが憎めない理由にもなっています。悪を標榜し、実際に悪事を行ってきたはずなのに人間くさいのが魅力で、いわゆる嫌なやつにはなりきれないのです。

最も憎むべきは魔法少女のマスコットと言う流れ

作品中に全く憎まれ役が出ないかと言えば、状況は一変します。憎まれ役は登場します。しかも、魔法少女のマスコットであり、使い魔的な存在としてです。『魔法少女まどか☆マギカ』のキュゥべぇに代表されるようにマスコットが実は憎まれ役というのは珍しいものではなくなりつつあります。『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』でも、魔法少女を魔法少女に仕立て上げるために暗躍し、魔法少女として働かざるを得ない状況を作り出したのはマスコットなのです。

しかし、『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』では、一般的なマスコットと大きな違いがあります。それは、中に人が入っているだろうというビッグサイズだと言うことです。見た目はほぼきぐるみのため、可愛らしさよりも脱力感が目立つデザインとなっています。性格は金に汚く、利己的で、魔法少女を商売道具としてしか見ていない部分があるのです。男性的なエロ目線で魔法少女を見ているのも特徴で、未成年だからと遠慮はしているものの、その言動のひどさからミラと激しく敵対する原因となるのです。

しかし、戦闘能力はほぼ無く、ミラ自体の戦闘能力がむちゃくちゃに高いために全く勝負にならないのがポイントになります。結果として小物臭が非常に強くなってしまい、やはり憎みきれない部分が出てしまうのです。理不尽ではあるものの、絶対的な悪や憎悪を掻き立てる敵が登場しないのもこのマンガの特徴です。魔法少女は処女でなければならないという設定があるため、ミラが理性を飛び越えれば魔法少女は苦しい生活から開放されるからです。一方で、だからこそ悩んでしまうのがラブコメのお約束なのです。

まとめ

『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』はお色気と可愛らしさを非常に高いレベルで両立させているのがポイントです。男性漫画家にありがちなエロに偏りすぎると言うこともなく、安心して読める部分があります。その代わりにフェチズム的なエロさに関しては容赦が無い部分があり、視覚的にもシチュエーション的にも容赦なく読者を攻め立ててきます。ミラが読者の気持ちを代弁してくれるためギャグの範囲で収まっているものの、そうでなければ一線をすぐに飛び越えそうな危うさもあるのです。

1巻は二人の出会いから、少しずつ距離を縮めていく流れになっています。魔法少女の不憫さが度を通り越しているためギャグレベルになっているものの、感情表現の薄さや不幸を受け入れてしまう性格を支える下地になっているのも特徴です。キャラクターの精神性を掘り下げる面でもしっかりと伏線が張られており、丁寧に作りこまれているのです。ただギャグやラブコメに走るのではなく、キャラに愛着が湧くように工夫がされているのも魅力の一つです。

基本的の物語は4コママンガで進行し、タイトルにはネットスラングが頻繁に使われるなどギャグ性が高いのも良さの一つです。萌えに親しんでいる人が、萌えを楽しみたい人にターゲットを絞り込んでいるような形になります。客層を考えた戦術は非常に効果的で、絵柄が好きならまずはまると言った破壊力に繋がっているのです。気軽に読めるのもポイントで、どこできって読み返しても面白さを感じることができます。シチュエーション萌えもあざとく狙ってくるため、理想のラブコメを探している人はどこかで引っかかる可能性が高いのです。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

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