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魔法少女さん (ジェッツコミックス)

『魔法少女さん』は、魔法少女を題材にしたシチュエーションコメディーです。弱気を助け、悪をくじく魔法少女は、オフの日は2頭身で、中身は完全におっさんだったのです。人々の夢を壊さないために体を張り、ベテラン魔法少女として世の中の平和を守っているのです。

休みの日はビール片手に野球を観戦し、同居人にシモネタを容赦なく振るようなおっさんですが、緊急連絡が入ると美少女に変身して現場に駆けつけます。変身前後の見た目のギャップだけでなく、ブラック企業を想像させる労働環境は色々と身につまされるものがあります。

変身後の美少女ぶりだけでなく、さりげなくサブキャラに美女が登場するのもポイントです。同業者の魔法少女はほとんど登場しないものの、随所に萌えネタを突っ込んでいるのも特徴になっています。笑って楽しめるライトなノリが特徴の作品でもあるのです。

あらすじ

ごく平凡な大学生として暮らすイトウのアパートに、ある日魔法少女が尋ねてきます。突然見知らぬ魔法少女が登場したことから不審に思ったイトウは魔法少女を追い払おうとしますが、何やかやと押し切られてしまい、一緒に同居することになります。

魔法少女がイトウと同居をたくらんだのは、街に近く、パトロールに便利だからです。しかも、イトウには魔法少女萌えの属性が無く、身の安全も確保できると言う確信があっての行動でした。家賃の代わりに図書カードを物納することで二人の利害が一致したのです。

世の中の平和を守ると言っても悪の組織などが登場するわけでなく、もっぱら万引きの取り締まりなど軽犯罪に魔法が使われるのもポイントです。脱力感の漂うような日常の中に萌えネタとエロネタ、シモネタがちりばめられており、読者の腹筋を地味につついてくるのです。

感想

ベタラン魔法少女の中身がおっさんというギャップ

魔法少女さんは、本名を捨て、魔法少女を名乗っています。そのため劇中でも魔法少女で通している筋金入りの魔法少女です。長年魔法少女をやっていたら年齢も重ねるわけで、平気でビールを飲んだりエロ本を買ったりします。変身後は美少女、変身前は2頭身のディフォルメされた少女ですが、心の中は立派なおっさんが住んでいるのです。しかもエロ本は経費で買ってしまうなど、かなりの男前です。仕事で疲れて愚痴ったりするあたり、サラリーマンと通じるものもあるのがポイントです。

魔法少女物でも、年齢の話はギャグになりがちです。10代で魔法少女になっても、20代で続けられるかは別の話になっています。魔法少女さんの場合はすでに職業として魔法少女が存在し、魔法少女になることで歳もとらなくなるのです。しかし、心はすさんだりもするため、中身がおっさん化したりするのです。しっかりと設定もあるあたり、世の中のままならさを感じます。しかも魔法少女はほぼ無給で緊急出動が当たり前と言う環境から志望者が年々減っており、人材不足になっていると言う切実なお話まで出てくるのです。

魔法少女は特別な存在でありながら、神秘さのかけらもないのが本作のポイントになっています。魔法は便利で非常に汎用性が高いものの、使っている魔法少女さんがいい加減な性格のため全く原理なども気にしていないのです。とはいえ、普段とのギャップがある分変身後の美少女ぶりが目立つと言うのもあります。問題はその裏側を知っていると、アレは演技なんだなぁと思ってしまうのがままならない点でもあります。魔法少女の裏表をギャグタッチで描いたマンガでもあるため、サバイバルで血みどろな魔法少女物に食傷気味な人におすすめです。

実は魔法少女さん以外にも萌えキャラが登場する

魔法少女さんは変身後の姿が美少女であるものの、中身がおっさんです。萌えポイントとしてはかなり微妙なラインですが、その分サブキャラなどに萌えが集中している部分があります。例えばイトウの友人であるノブの彼女はゴスロリ衣装を愛する巨乳の女の子です。彼女に振られたというノブを励まし、勇気付けるためにイトウが変身してデートをしますが、その衣装デザインとボディバランスは必見になっています。もちろん、後で本人が登場するシーンも楽しめます。

主人公であるイトウくんも魔法少女になります。魔法少女を生み出す協会が次代の魔法少女を募るキャンペーンを行ったとき、キャンペーンを行う人材自体が不足してしまうのです。人手不足で刈りだされたイトウくんですが、変身後は美少女になってしまいます。男子が美少女に代わるという一部のマニアに非常に受けが良いシチュエーションであり、作中でもファンレターが届くほどの人気になってしまいます。そのファンレターの処理方法にもキャラクター性がにじむので、是非読みたいポイントになっています。

魔法少女さんも萌えをわかっていてあえて避けている節があり、時々ネタとしても突っ込んできます。一方で女子力は皆無なため、二言目で台無しになることも多いのがポイントです。ちなみにイトウくんは魔法少女萌えが無くても、魔法少女さん自体が魔法少女物のエロ本をもっているなど突っ込みどころの展開もあります。そもそも魔法少女になる前から女性だったのかも疑わしくなります。地味にエロ本の書かれた魔法少女も凝っていてしっかり萌えとエロをアピールしてくるのもポイントです。

魔法が物理攻撃を伴うのもお約束に

魔法少女さんの世界では、魔法は非常に便利に使えるものの、人の心を簡単に操作したりは出来ないのがポイントになっています。そのため魔法を使って犯罪を防止し、鉄拳制裁など物理的な攻撃手段に出る場面が多くなります。それこそ魔法を使えよと言いたくなることですが、殴った方が簡単と言うのを地で行くような展開です。時々魔法少女物であることを忘れそうになりますが、ある意味で全うで現実的な部分があるのが困ってしまいます。

なぜ全うな部分があるかと言えば、暴力を振るさいは大体説教がセットになるからです。犯罪は取り締まって終わりではなく、次が無いようにしっかりと犯人の心根をかえるための努力がセットになります。中身はおっさんであっても行動原理は非常に全うなのが魔法少女さんなのです。ただし、たまに頭のねじがぶっ飛んだような行動をとって周りから突っ込みを受けます。オチも忘れないのが魔法少女さんであり、各話ごとの流れがしっかりと完結させる律儀さもあるのです。

深刻な犯罪などは登場しないため、魔法少女さんが深刻な表情をしている場合は大体ネタの前フリだったりもします。安心して読める脱力感とテンポのよいツッコミがこの作品の持ち味であり、メリハリが利いているのが魅力です大きなストーリーなどは無いものの、些細な日常の一コマにシモネタをぶち込んだりと、ユーモアを味わいたい人にもおすすめです。どうしてそんな発想にいたったのか聞きたくなるような鋭角なボケとがあり、それに対する的確なボケも登場します。魔法少女さんのボケと、イトウくんのツッコミが非常に心地よく、笑える作品になっているのです。

まとめ

魔法少女さんは萌えキャラに必要なものを持ちながら、性格がおっさんそのものと言う何もかもをぶち壊しにする要素を持っています。しかし、変身後の美少女振りと脇を固めるキャラクターに萌え要素をふんだんに盛り込んでおり、常に萌えキャラが出てくるわけではないためより要素が目立つ形になっています。魔法少女さんと同居は嫌でも、脇役と一緒に暮らしたいと思ったり、彼女にしたいと思うようなキャラが豊富に出てくるのです。主人公のイトウくんの女装姿も地味に光ります。

全般的にギャグ調で、4コマ連作と言う形で展開される作品ですが、ところどころ社会風刺も混じっているのも特徴です。まじめに考えれば魔法少女の働く環境はブラックそのものであり、契約の経緯も詐欺な場合が多いからです。そういった意味では進んで魔法少女になろうと言う人が少ない世界と言うのは、非常に平和と言えます。何気なく考えさせられる要素をちりばめているため、ライトなノリのギャグマンガでありながら、完成度の高さを感じさせる部分があるのです。

出版の間隔は空いているものの、続編が出てシリーズ化されているのもポイントです。シチュエーションコメディーの部分があるため1巻目が最もわかりやすく楽しめるため、2巻目以降を買うよりもまずシリーズ一番最初である『魔法少女さん』を買ったほうがわかりやすいのです。コメディに飢えていて、魔法少女物が好きであればおさえて損は無く、気軽に人に進められるタイプの本になっています。そして、魔法少女さんに共感してしまう場合は自分がおっさん化していないか確認が必要になることもあり、人の心の年齢を判別する恐ろしさがあるのです。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

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