ラブひな 11

個性豊かな美少女たちの住む女子寮ひなた荘の管理人を務めながら、東大合格に向かって猛勉強を続ける青年、浦島 景太郎を主人公にしたラブコメの金字塔「ラブひな」。今回は、今までのラブひなとは一味違う展開が楽しめる単行本第11巻のレビューをさせていただきます。

東大入学からわずか数ヵ月で留年が決定してしまった景太郎でしたが、これを機に約半年間の留学に出ることに決めました。11巻では景太郎の留学ライフが描かれる…かと思いきや、実は景太郎の留学に関するエピソードは一切ありません。それどころか、この巻には景太郎がほとんど登場しないんです。

11巻で描かれるのは、景太郎が留学に行った後に残されたヒロインたちの生活です。本来の管理人である景太郎が居なくなったひなた荘には「ひなた荘新オーナー」を名乗る謎の人物が現れ、ひなた荘を取り壊し始めます。何も知らずに留学を続ける景太郎が帰ってくるまで、ヒロインたちはひなた荘を守り抜くことが出来るのでしょうか。

あらすじ

無事に留学者選抜試験を突破し、留学権を勝ち取った景太郎はアメリカへと旅立ちました。最初は景太郎の留学に猛反対していたヒロインたちも、結局は熱意に心打たれて大人しく景太郎の帰りを待っています。あっという間に半年が過ぎ、ひなた荘には春が訪れていました。

そろそろ景太郎も日本に帰ってくるだろう…と成瀬川が待ち焦がれていたある日、ひなた荘に謎の美少女が現れます。少女は自分のことを「ひなた荘の新オーナー」だと語り、住人たちの制止も聞かずにひなた荘の取り壊しを始めました。新オーナーの正体は景太郎の妹、浦島 可奈子でした。

可奈子の目的は、現在女子寮になっているひなた荘を元の旅館に戻すことでした。住人ではなく従業員として住み込みで働くならひなた荘に留まっても良いと許可されたヒロインたちは、ひとまず従業員になって働きながら可奈子を追い出そうと画策します。果たしてヒロインたちは、景太郎が帰ってくる日までひなた荘を守り抜くことができるのでしょうか。

感想

主人公の景太郎がほとんど登場しない

ラブひな11巻には、景太郎がほとんど登場しません。景太郎がちゃんと登場するのは、11巻の最初に収録されている第88話「神様がくれた瞬間」というエピソードのみです。これは景太郎がアメリカに旅立つ直前、飛行機のエンジントラブルによって生じた4時間だけ成瀬川とデートをするというお話です。ラブひな史上でもかなり胸にくる名エピソードですが、これを最後に11巻には景太郎が登場しなくなってしまいます。景太郎が再登場するのは、この巻の一番最後に収録されている第96話「ひなた城討ち入りでござる」というエピソードの最後のページだけです。

一応景太郎は主人公なのですが、実に8話連続で出番が無かったことになります。前巻で景太郎が留学すると言い始めたときは、てっきり今後は留学先でのエピソードが中心になると思っていたのですが実際には真逆の展開になりました。この巻に収録されているのは景太郎の留学奮闘記ではなく、ひなた荘に残されたヒロインたちの姿です。詳しくは後述しますが、景太郎が居なくなったひなた荘には「新オーナー」を名乗る浦島 可奈子が現れ、ひなた荘を乗っ取ろうと計画します。ヒロインたちは景太郎の帰る場所を守るため、可奈子と対立していくのでした。

個人的に、11巻のエピソードのなかで最も好きなのが一番最後に収録されている第96話「ひなた城討ち入りでござる」です。ヒロインたちと可奈子の争いが激化するひなた荘に景太郎が帰ってくるという、ただそれだけのエピソードなのですが…これまで溜まっていたフラストレーションが一気に解消される感じがして爽快でした。景太郎が登場するのはほんの数コマ程度ですが、ひなた荘に景太郎が帰ってきたというだけで「この男なら何とかしてくれる」という感じがするんです。このエピソードを読んで初めて、最初の頃のダメダメな姿からは考えられないほど、景太郎は頼りがいのある男に成長したのだと思い知らされました。

新キャラ「浦島 可奈子」がカワイイ…けど怖い

景太郎不在のひなた荘を乗っ取ろうとする謎の「新オーナー」の正体は、景太郎の妹である浦島 可奈子でした。可奈子の目的は現在女子寮となっているひなた荘を、昔のような旅館に戻すことです。なぜ可奈子がひなた荘を旅館に戻したがっているのかという謎は未だ明かされていませんが、可奈子にもある「約束」があると言います。「約束」の内容は不明ですが、どうやら可奈子はある人との「約束」を守るためにひなた荘を乗っ取ろうと画策しているようです。景太郎といい、可奈子といい、この兄弟は大切な人との約束のために何もかも犠牲にしすぎだと思います…

無表情でみんなの想い出が詰まったひなた荘を破壊していく可奈子は若干怖いものの、考えてみれば久しぶりの新ヒロインです。ひなた荘に住み始めたヒロインとしては、5巻に登場したサラ・マクドゥガル以来となります。これまでのひなた荘にも、ツンデレ、お姉さんキャラ、色黒…など様々な属性の女の子がいましたが、可奈子が加わったことで妹キャラが追加されました。ますます萌えマンガ界の王道といったキャラ揃えになってきましたね。

顔だけ見ればかなりカワイイ可奈子ですが、しかし今のところ妹属性っぽくはありません。兄である景太郎を目の前にすれば反応は違ってくるのでしょうが、クールで無口な性格はどちらかと言えば初期の素子に似ています。素子も景太郎と過ごしているうちにだんだん女らしくなっていった…というか間の抜けた感じになっていったので、可奈子も今後性格が変わっていくのでしょう。ひとまずこの巻ではクールな振舞いを貫いている可奈子ですが、今後の巻でどのように変化していくのかも注目ポイントです。

浦島景太郎ラブラブ度偏差値表とは

11巻で少し面白いと思ったのが、第95話「ひなた戦線異常アリ!?」に登場した「浦島景太郎ラブラブ度偏差値表」です。これはひなた荘の住人たちを秘密裏に調査していた可奈子が作った「ひなた荘のヒロインたちが景太郎のことをどのくらい好きなのか」を表す指数です。この表は大学入試の偏差値表をもじって作られているため、「S」や「A+」などの判定がついており、まるで恋愛ゲームのスコア表のようにも見えます。ラブコメのヒロインたちが主人公に対して抱いている恋愛感情をハッキリと数値化するという表現はなかなか珍しいのではないでしょうか。

浦島景太郎ラブラブ度偏差値表は可奈子の独断で弾き出されたものですが、キツネはこの表を見て「大体合っている」とコメントしています。実際に表を見てみると、一番偏差値が高いのは成瀬川で、次がカオラ、その次がしのぶと続いています。カオラのほうがしのぶより高いのは少し意外ですが、こうして順位を見てみると確かに大きく外れてはいないような気がしますね。ちなみに一番偏差値が低いのはひなた荘で飼われているカメの温泉タマゴでした。

可奈子によれば、この表は「普通の友人」に対する好意を偏差値50に設定して算出されているらしいのですが、一番偏差値の低いタマゴですら偏差値60でした。つまり、ひなた荘に住むヒロインたちは全員が景太郎に対して多かれ少なかれ恋愛感情を抱いているということになります。成瀬川ほどの美女を射止めただけでも相当のモテ期だと思っていましたが、景太郎のモテっぷりもここまでくるとハーレム状態ですね。件の浦島景太郎ラブラブ度偏差値表については、11巻を読めば詳しい数値まで確認することができますので、気になる方は本編をご覧ください。

まとめ

これまでのラブひなでは、ヒロインたちの心境を中心に描かれたエピソードはあっても、一話まるまる景太郎が登場しないというエピソードはありませんでした。何やかんや言っても景太郎は主人公なので、物語は景太郎の周囲で起こる出来事を中心に進んできました。しかし11巻だけは特殊で、収録されているほとんどのエピソードに主人公である景太郎が登場しません。作中で初めて、ひなた荘のヒロインたちが「景太郎の居ない日常」を過ごすのがこの巻なのです。

景太郎が居ないことで、11巻は終始どこか寂しい雰囲気に包まれています。実際には景太郎が居ないエピソードは8話だけなのですが、もう何年も前から居ないような錯覚を覚えてしまうほどです。読者にとっても、景太郎がこのマンガに欠かせない存在だったのだと再確認させられる巻でした。また、可奈子がひなた荘を壊そうとしたときにも、ヒロインたちが「景太郎さえいれば」と考えていることが伝わってきます。思い起こしてみれば景太郎は別に何でも解決してくれるスーパーマンではありませんし、むしろ真逆のダメ男だったはずです。しかし読んでいると不思議なくらい「景太郎さえ帰ってこれば何とかなる」と思ってしまいます。

そんなフラストレーションを発散させてくれるのが、11巻の最後のページです。もはや泥沼化してしまった可奈子とヒロインたちの争いを一瞬で台無し…もとい、笑いに変えてくれる景太郎はさすが主人公といった感じです。突然帰ってきた景太郎に対してヒロインたちはどんな反応を見せるのか、また景太郎は可奈子の横暴を止めることが出来るのか…といった問題は次巻に持ち越しです。また、次巻以降では留学を通して大きく成長した景太郎の姿を見ることも出来ます。乞うご期待です。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8