Pocket
LINEで送る

例えばクールな女の子、言い換えれば一切感情的にならず冷たい態度を崩さない鉄のような女の子、が恥ずかしがったり甘えたりしている光景というのはたまらないものです。ただただ感謝の念を天に捧げるしかできません。

本巻ではそんなシーンを見ることができます。シャルロットの敵国であるダラス帝国の姫君メディアは氷のような少女なのですが、彼女の色々な側面が描かれているのです。サディズムな女の子がふと見せる羞恥は極上の甘露、山の頂に住むお師匠様がこっそり味わう甘い蜜と言えるでしょう。

これまではシャルロットを中心として描いてきた本作ですが、この巻ではメディアやアレン一行が登場する話が多くなっています。それもサイドストーリーという形ではなくメインストーリーに集約するような形で描かれているのです。

あらすじ

国民の約8割がマゾヒストなカスティーナ王国の王女シャルロット。王女はマゾではないため毎日突っ込み役として奮闘しています。ですが相手はマゾなので突っ込めば突っ込むほど喜んでしまいます。本巻ではメイド服やスクール水着を着たりとコスプレもこなすことになるのです。

一方、敵国であるダラス帝国の王女メディアは兄アレスを恋焦がれる日々を過ごします。見つけると願いが叶うという謎の鳥を大臣に探させたりダイエットをするためにランニングを始めました。ただ久しぶりに会ったアレスの様子はどうもおかしいようです…。

ダラス帝国に潜入したアレン一行は盗賊メイスの昔の仲間と再会することになります。そこで聞いた情報によると近々お城で舞踏会を催すとのこと。何とかメイドとして潜入したは良いものの、スパイを警戒するメディアの側近が抜き打ち面談を始めてしまいました。

感想

冷酷でサディストな少女が恥ずかしがる最高の展開

メディアは普段、元カスティーナ王国の宰相に無理難題を押し付けて達成できなかったら殴ったり鉄球をくくりつけて窓から投げ飛ばすといったサディズムに興じているのですが、実は大のお兄様好きだったりします。お兄様であるアレスへの憧れはサドマゾの入り込まない純粋なもので、その場面だけを抜き出せば只のかわいい妹と化すほどです。そんな大好きなお兄様に好かれるための努力であれば惜しみまないメディアに残酷な事実が告げられます。ちょっと太ったかもしれないのです。

早速メディアはランニングをしようとするのですが、このお姿がたまりません。作中では体操着姿とされているのですが、タンクトップにショーツを履いただけでへそも太ももも丸出し状態となっています。その回の扉絵には体操着姿を恥ずかしがっているメディアの姿が描かれていて非常にありがたい…冷酷な王女として君臨してきた彼女が頬を染めもじもじしている姿というのは奥深い山のお寺に勤める小坊主秘蔵の羊羹のように甘く切ない味がします。

また、メディアのありがたいお姿は他にも描かれています。アレスがシャルロットの肖像画を見て興奮し会いたがっている場面では嫉妬心を露にしていますし、足をくじいて動けなくなったときに城へ潜入していたアレンにお姫様抱っこをされたりしているのです。クールな女の子が動揺したり恥ずかしがったりと感情豊かに振舞うその姿は萌えで煮しめた角煮のようなもので、芳醇な香りと味わいが読者の脳内を駆け巡るでしょう。本巻はメディア大活躍な巻です。

様々な視点から描かれることで得たもの失ったもの

本巻は第1巻とは異なり様々な視点からストーリーが紡がれています。そのため相対的にシャルロット側のエピソードが少な目となりました。結果的にではありますが、この事には良い点と仕方無い点が含まれて居ます。まず良い点としては作品世界がより広がりを持ち豊かなものとなりました。閉塞感のある世界ではなく、この世界には様々な人々が様々な思惑を抱いて生活しているということが十全に表現することに成功したのです。一方、それに伴う仕方無い点も現れます。

作品世界を描く視点を複数に分散させることで、深みは少し削がれる形となりました。例えば100人の登場人物が登場する漫画と1人だけの独白による漫画では深みが異なるわけです。登場人物が多くなればなるほど作品世界に広がりをもたせることは可能ですが、それだけ1人1人の深みは無くなってしまいます。本作では作品世界を広げることに成功しつつ、各キャラクターの深部へ入り込みにくい構成となってしまいました。ですがそれは本作の場合当てはまらないかもしれません。

本作では元々状況設定としてマゾヒズムやサディズムが導入されていましたが、特段各キャラクターを掘り下げて描写していませんでした。ところが本巻ではメディアのお兄様への愛や、シャルロットの母上がいかにして父上に惚れ込んだか、といった辺りを描いています。つまるところ、状況設定が浸透した上で各キャラクターの掘り下げを行っているわけです。となると複数視点の構成にしたことは是か非かというと是と結論付けられます。作品世界を豊かにしキャラクターに深みを持たせることに成功しているのです。

全体の流れが大きな構想の下に収束していく

メディアがかわいいということは何度も言いたいところなのですが、本作は全体的に大きな流れの下でストーリーを進めている点も見事です。それぞれがバラバラのエピソードではなくきちんとゴールがあり、そこに向かって全てが収束しているのです。ダラス帝国のスパイとして潜入しているアレン一行が招いた小さな失敗は第三勢力「薔薇の国」の登場に必要ですし、一見関係無さそうなシャルロットがメイドとして働くも失敗を繰り返すエピソードは「姫さまにしかできないこと」を自覚させています。

一体どこが本巻のゴールかというと、そしてダラス帝国で催される舞踏会です。舞踏会はかつてのカスティーナ王国主城であり現ダラス帝国支配化にあるセントラル城で催される予定となっています。この舞踏会に何となく行く決心を固めたシャルロットはダンスの練習をすることになるのです。といっても本巻はセントラル城に向かう途中で泊まる温泉宿のエピソードで締められているので、本格的に展開するのは次巻となります。本巻はストーリーを中心としてみると仕込みの巻と言えるでしょう。

本作は1つのエピソードが4コマ形式であるのにも関わらず上手にまとめられている作品ですが、さらに大きな流れとしてもまとまっているのです。やはり前巻同様、構成力の高さを伺わせる作りとなっています。もちろん萌えを強く感じさせる要所要所も抑えているのです。なお本巻では女装ショタっ子が登場したり少しではありますが盗賊メイスのお仲間であるお姉さんと幼女も出てきます。全体の構成を崩さずに新キャラも登場させかつギャグとして成立させていく、という高度な作りの巻です。

まとめ

本巻で発揮されたメディアの魅力は凄いものです。天は轟き地は蠢き海が割れる、そんな強力な萌えを感じることができるでしょう。クールな女の子が羞恥に頬を染めるというのは確かに定番な表現ですが何度見てもありがたいものです。もしかしたら普遍性すら兼ね備えているのかもしれません。ちなみにそんなメディアの姿をこれでもか!と見せてくれるダイエット回は初めてメディアが露出の激しい衣装を着る回でもあるのであらゆるギャップに心が射止められるでしょう。

作品世界を多視点から描くことは通常であればキャラクターの深みを浅くしてしまいがちですが、前巻で状況設定を中心に据えていたためそうした事は感じにくいはずです。むしろ前巻ではそうした状況設定を作品に染み込ませ、本巻でキャラクターの掘り下げを行っていると言えます。さらに多視点で描く事で作品世界に広がりを持たせることにも成功しているのです。順調に本作が1つの作品としてまとまりをもちつつ豊かに深く描かれていると言えるでしょう。

また、早い段階から既に舞踏会へと物語が収束を始めているという点にも注目しておきたいところです。各組からの視点をじっくり描くことで、シャルロット、メディア、アレン一行が出会う場面に具体性が備わりました。ぽっと出のキャラクター同士の出合いではなく、十分に描かれたキャラクター同士がどう出合うのか楽しみになってきます。本巻では未だ一同に会してはいない3組ですが、次巻で出会うことになるでしょう。本作は改めて考えてみても優れた構成力があるからこそ生まれた作品と言えます。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

記事担当:くもすい

Pocket
LINEで送る