紅殻のパンドラ4巻です。4巻に収録されているのは#14から#18までの計5話(内1話はショートストーリー)になっています。前半部分は3巻からの流れを汲む日常的なストーリーの中で、ネネが誰かを助けるために奮闘する物語になっています。

後半部分では、1~2巻で起きたブエルの暴走事件以来久々の大きな事件が発生します。ブエルの事件が収束してからここまではどちらかというと規模の小さなトラブルに巻き込まれる事が多かったためご無沙汰でしたが、久々に燃えたり爆発したりします。

また、2巻で初登場して以降、地下に残されたブエルの本体を奪取しようと裏で暗躍しているクルツ大佐と島で頻発している通信障害の原因が関係している事が判明するなど、物語の繋がりが見えるようになってくる巻になっています。

あらすじ

外出中、通信障害が起きた事で立ち往生する羽目になってしまったネネとクラリオン。ここ最近は頻度が多く2~3日に1度は起きている、などと話しながら電車が来るのを待っている2人に対して声をかける男性が現れます。

「コード0(所属と型式を出力せよ)だ」と声をかけてきたのは、ネネとクラリオンが管理者のいないロボットと勘違いした男性、ロバートでした。幸いにも誤解はすぐに解け、勘違いしてしまったお詫びも兼ねて安全な所まで2人を送るというロバート。

ネネとクラリオンを送り届ける間にも口癖のように「性分でね!」と言いながら、通信障害で困っている人間を次々に助けていくロバート。そんなロバートと2人が交友を深めつつ歩いていると、遠くから悲鳴が聞こえて……。

感想

ネネと接するうちにクラリオンにも変化が?

#14では新キャラクターのロバートが登場する他、後半ではクルツが「アメリカ帝国からセナンクル島へ派遣された特別軍事顧問」である事が判明します。クルツもまた「世界平和のため」と口にしてはいますが、ネネの言うそれとは異なる世界平和を目指している感じですし、ネネとは世界平和を目指すもの同士協調路線で、というのは無さそうです。むしろ、今後はクルツ達と対立する形になりそうなエピソードです。同時にその時にロバート達CDFがどっちの味方に付くのかも気になります。

#17と#18は連続したストーリーになっているエピソードで、ネネとクラリオンの2人はエリアマーキュリーにあるデパート、ハーミーズに買い物しに訪れる所から始まります。ネネたちは上階のゲームコーナーを見るためにエレベーターに乗りますが、通信障害が発生、エレベーターが停止してしまいます。偶然同じエレベーターに乗り合わせた島議会議長のジェイナス・ノースにまたもロボットと勘違いされるもすぐに疑惑は解け、とある大きな問題を解決するため、4人は急いで脱出しようと試みます。

脱出した4人が見たのは燃え盛る店内でした。2人だけなら奪取できるというクラリオンに対して、ネネはある方法を思いつきます。その方法で4人は非常階段のある階まで降りることに成功しますが、ネネは上の階に子供が取り残されている事に気づき1人でビルの中へ戻っていき、子供を助けるために奮闘します。ネネの意固地とも取れる意思の強さもさることながら、ラスト付近は今まで合理的な考え方が大半だったクラリオンに、ネネと接することで変化が訪れている事を感じさせるエピソードです。

パロディ系のネタのノリは好みが分かれると思います

漫画を担当している六道先生は元々パロディ系のネタをたくさん仕込まれる方ですが、紅殻のパンドラでもパロディネタは時折挟まれています。4巻まで出して慣れてきたのか分かりませんが、頻度が増えています。登場するネタは攻殻機動隊に関連したネタも多いですが、それと同じくらい他作品のネタやネットスラングが多いため、元ネタを知らなかったり、ネットのノリを持ち込まれるのが寒いと感じる人は読んでいて面白く感じ辛いかなと思います。

一応、シリアスなシーンではそういったふざけた描写は殆ど無いため「空気を読めてない」感じにはなっていませんが、紅殻のパンドラはそういったシリアスよりもネネを取り巻く日常的なエピソードが多いため、必然的にギャグやパロディが多く感じる部分があります。#14で登場したロバートも、日常パートでは「ワザマエ」「ジュー・ジツ」などどこかで聞いたような単語を発しますが、シリアスなシーンでは打って変わってクルツの要求を受け入れつつも、CDFの大尉として島の今後を憂いているシーンがあるなど、書き分けそのものはしっかりしています。

また、悪ノリが激しい反面、知っている人が読むと「お?」となるネタも多いです。分かりやすい物としては、日常的なシーンを描いた#15の冒頭に登場する飲んだくれているブリ何とかさんに対してロボット店員が発した「ニハイデジュウブンデスヨ」というセリフです。これは、アメリカの映画「ブレードランナー」に登場した有名なセリフ「二つで十分ですよ」のパロディネタです。これら以外にも知っていると面白いネタが沢山散りばめられているため、パロディネタに抵抗が無い人は色々と探してみても面白いかもしれません。

新キャラクターはマッチョで紳士なナイスガイ?

#14では新しいキャラクターとしてロバート・アルトマンが登場します。ネネやクラリオン、タクミなど可愛らしい女性キャラクターが多い紅殻のパンドラにしては珍しく、ガタイが良く、どこか穏やかさを感じさせる外見をした男性です。また、性格もそんな外見に違わず紳士的な言動と、「性分でね!」という言葉と共に困っている人を助ける正義感の強さを持ち、クルツの要求に頭を痛くしながらも島の平和と安定を願うなど、ナイスガイと言える人物です。

ギャグパートでは、ニンジャ的アトモスフィアを感じさせる言動をするなど、ギャグとシリアス、というよりも公私で雰囲気が大きく異なる人物でもあります。また、あからさまにニンジャではないものの戦闘能力自体はかなり高いようで、ネネが狙われた際には作中でも高い能力を持つはずのクラリオンよりも更に早く動くなど、義体化していない生身とは思えない強さを持っています。その一方で、今後の問題になりそうなクルツとも関係のある人物なので、今後ストーリーへどう関わってくるのかが気になります。

また、4巻の後半で登場する島議会の議長、ジェイナス・ノースも個人的には好きなキャラクターです。ブリ何とかさんに様々な疑惑をかけられる他、自分でも言っている通り献金に釣られて優遇するなど、平然と悪事に手を染める一方で、ネネ達に対して「危険だから君たちはここで待っていろ」と言うなど、小悪党的な部分を持ちつつも、善人の部分を失ってはいない面白いキャラクターだと思います。ちなみにそんなノース議長の外見は、六道先生が描いたエクセル・サーガに登場する蒲腐博士にそっくりです。実際、4巻には蒲腐博士に関係したネタも登場します。

まとめ

という事で、紅殻のパンドラ4巻でした。この巻のメインになるのは後半のハーミーズ関係の話でしょうか。今まではシリアスなシーンでもネネたちの軽い感じのおかげで絶望感や詰み感のようなものは殆ど無かったですが、このエピソードでは事の重大さが強調されているように感じました。また、クラリオンが提案した事が結果的には間違っていたことをネネに謝罪するなど、3巻での感じられたネネの変化と同様に、クラリオンの変化が感じられる巻になっていると思います。

また、クルツの目的に続いて、どういう立場の人物で、なぜセナンクル島に来ているかについても明らかになるなど、少しづつブエルの問題の収束に関連した決戦に近づいているようにも感じました。クルツの護衛を務めている「何か」が光学迷彩を使用している等、クルツ周辺の技術力の高さが描写されているため、クラリオンの戦闘能力とネネの電子戦能力の高さあたりが鍵になる感じでしょうか。何にせよ、ここからが更に楽しみなる巻でした。

あと、地味に芸が細かいなと思ったのが、エイミーの服を直すシーンです。このシーンではネネがパンドーラ・デバイスの1つ「縫製師」を使ってエイミーの服を直しますが、単純に破れた部分を元通りにするのではなく、破れた部分の上に大きな飾りを付ける事で誤魔化していたり、飾りの増加に合わせてか服を直す前後でよく見るとエイミーの服の裾の丈がしっかり変わっていたりと、しっかり考えられてデザインを変化させている点は流石だなと思いました。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9