紅殻のパンドラ5巻です。5巻では#19から#22までの4話が収録されています。本編は#19から#21までで、収録話数が少ない分1エピソードあたりの内容は多めになっています。また、#22はショートエピソードで本編の時系列とは少しズレた時系列を描いたエピソードになっています。

5巻前半は4巻後半で起きたハーミーズの事件の後日談的なエピソードで、何が原因で火災が起きたのかについても4巻の時以上にしっかりと描かれている他、今までは描かれなかった、義体のメンテナンスをする描写などもあります。

収録話的に本編の後半部分となる#20と#21では、ついに地下のブエル周辺に居るクルツ陣営へ攻勢を仕掛けます。これまでの日常的なシーンとは正反対の派手な中にも攻殻らしい戦闘シーンが見られる巻になっています。

あらすじ

病院に義体の換装に来たネネとクラリオン。病院を利用するのはいつもはネネだけですが、今回はハーミーズの一件で猫耳の焦げてしまった部分を修理するため、クラリオンも病院の部分植毛の機材を使用させてもらうようです。

義体の換装と猫耳の修理を終えた2人は崑崙八仙邸へと戻り、修理や検診で溜まっていたネットスクールの課題を何とか片づけたネネは疲れからかそのまま寝てしまいます。そんなネネを着替えさせ、ベッドに連れて行くクラリオン。

クラリオンも一緒にベッドに入りますが、何か思うところがある様子で電脳空間上で仕事をしているタクミの元へと向かいます。朝、目を覚ましたネネはいつも一緒に寝ているはずのクラリオンが居ない事に気が付き、代わりに「しんぱいするな」という書き置きが残されている事に気が付いて……。

感想

トンデモ兵器登場!いよいよ事態は動き出す?

5巻のエピソードでメインになるのは、#20から#21にかけてのクラリオンがゲルツェコマとシノカオミを伴ってクルツ達が潜んでいる島の地下施設へと襲撃をかけるエピソードだと思います。これまでの「穏やかで時々事件」な感じとは打って変わってアメリカ帝国軍との派手な戦闘シーンが登場するのはもちろんですが、クラリオンがタクミに対して協力を要請するために会話するシーンも互いの思惑や目的が絡んでいるため、見どころだと思います。

直前の#19で置手紙に書いた「しんぱいするな」といい、ブエルの安定化ではなくネネの安全のために行動を起こしたりと、ネネに対する心境の変化のような物を感じられる辺り、ゴースト(=個を特定する因子)が宿りつつあるのかも?と感じてしまうエピソードです。対するタクミも、協力する際に「機械的に人を殺せば、ネネのそばにいるたった一つの資格を失う」と言っていたり、ネネを大切に考えている部分が見えるシーンだなと思います。ただ、そのすぐ後にはブエルを分捕ろうと画策している辺りはタクミらしいな、と……。

また、突入シーンでは、多脚戦車型の兵器「シノカオミ」が新たに登場します。外見は攻殻機動隊S.A.C.で登場した剣菱重工の多脚戦車HAW-206を大型化し武装を増やした感じですが、タクミの「不安定で商品化を諦めた」という台詞や、3巻の課題のレポートのために職場見学に行くシーンでの剣菱重工に「もう一度、思考戦車にチャンスを」という台詞があるあたり、紅殻のパンドラでは多脚戦車自体がまだ未発達な分野だと感じさせる兵器です。剣呑な兵器ですが、電脳空間内でタクミとクラリオンが会話するシーンではデフォルメ絵で「しゃげー」と鳴いている?シーンがちょっと可愛いです。

ショートエピソードの時間軸が解りづらい

5巻に収録されているエピソードとしては最後に当たる#22はショートエピソードで、パンドーラ・デバイスを使用する時の変身に関するエピソードです。パンドーラ・デバイスを使う時に服装が変化する仕組みについての解説的なエピソードです。服装を変化させるために光学迷彩が使用されているという事自体は1巻の時点でウザルが説明していましたが、タクミのセリフからネネの義体のフレームなど重要な部分がウザルの手によって強化されていた事が解りました。

1巻でネネが気絶して起きた時に裸だったのは、光学迷彩モジュールを取り付けるのと一緒に義体の強化換装をしていたから、という感じなのかもしれません。わざわざ、本来の服を消して一時的に裸+光の状態にしてから擬装用の服を展開する設定にしたり、パンドーラ・デバイスを使用する時にクラリオンの表情を設定していたりと、ウザルは天才かつ中々の変態……、もといロマン重視の人物なんだなと再認識させられるエピソードです。

ただ、このエピソードは5巻本編とは違う時間軸であるため、いきなり始まった感じが否めないなと思いました。というのも直前の#21では、クラリオンは戦っていますし、ネネやタクミも少しシリアスな雰囲気でストーリーが進行していたのに対して、#22では一気に日常的なエピソードになるため、「あれ?クルツの一件どうなったの?」と言う部分が強かったです。読んでいて疑問に思う事に対する、解答になる面白い話題のエピソードだっただけに少し残念です。

5巻も小ネタが豊富で読んでいて面白い

5巻でも紅殻のパンドラでお馴染みとなりつつある小ネタやパロディの数々は健在です。4巻で子供を押し付けられたことで、宗教法人にまで発展してしまい、バンジーを強要される相変わらず名前を言わせてもらえないブリ何とかさんや、余計な事をしてクラリオンに握りつぶされたり、ネネのベッドに飛び込もうとして金庫に叩き込まれる小ブエルなど、本編は少しシリアス方面に進みつつあっても、いつものお約束はしっかり描かれています。

巻末に4コマ漫画の「なにかで配信パンドラジオ」が描かれていますが、今回のパンドラジオでは、ネネの義体の事についての補足説明があります。緩い雰囲気ですが、かなり細かい部分の説明がされています。全身義体というけど実際どのくらい生身の部分が残っているのかや、飲食の方法についてなど、緩い雰囲気ながらかなり生々しい話が展開されるので、義体の仕組みについてに気になる人はぜひ読んで欲しいです。また、本編ではノータッチだったネネの年齢についても触れられています。

また、#20のとあるシーンの背景にQRコードが描かれていますが、このQRコードは実際にスマートフォンなどに搭載されたコードリーダー機能を使う事で読み込む事が出来ます。内容についてはネタバレになってしまうため、詳しい事は伏せますが、大したことは書かれていません。いつものパロディネタです。コミックス版だと本を開きながら、スマートフォンを操作しないとならないため読み込みが難しいですが、それでも一応ちゃんと読み込むことが出来ます。

まとめ

という事で、紅殻のパンドラ5巻でした。正直、個人的にはメカ萌えというよりもメカ燃えな巻でした。シノカオミのデザインといい、圧倒的な強さといい、攻殻に登場する多脚メカが好きな自分としてはかなりテンションが上がりました。また、戦闘シーンも施設のハッキングによる情報の隠蔽など攻殻チックな部分が多く、これまで以上に戦闘シーンがメインになった巻だと思います。ただ、シノカオミが隔壁を破るための方法がベクターキャノンのパロディだった辺りは笑ってしまいました。

一方で気になるのが今後の展開です。現時点では物語が動き出しつつあるものの、主人公であるネネとは無関係な所で話が進んでいるため、今後ネネがどのようにして関わってくるのかが気になります。展開としては居なくなってしまったクラリオンを追いかけて地下施設に、というパターンが王道ですが、ネネ自身の戦闘能力は皆無ですし……。安全に進める制圧済みのエリアはタクミがゲルツェコマ経由で目を光らせているでしょうし……。

また、タクミ側も地下に残されたブエル本体の奪取を未だに諦めてはいない様子で、何やら凄そうな秘策を取り出して事態を引っ掻き回す気満々だったりと、クラリオンには協力しつつもブエルの本体に関してはしっかり自分の手元に収めようとしている辺り、他の陣営とはブエルを巡っての三つ巴な状態になりそうな感じもします。そのあたりの展開も含めて6巻以降のストーリーがどのような展開になっていくのかがかなり楽しみになる巻だと思います。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9