『やがて君になる』2巻は電撃大王連載のガールズラブストーリーになります。よく練られたストーリーとキャラクター描写が話題となり、PVが作成されるなど人気作の仲間入りを果たしています。

2巻は主人公侑と、生徒会長になった燈子の気持ちのすれ違いが発生するのが特徴です。また、侑も自分が普通だと思っていた感情が本当に普通なのか見直すきっかけもできます。

二人がそれぞれの課題にぶつかりながら距離を縮めていくのが印象的で、脇役のクローズアップや真情の変化も含めて波乱の巻となっています。

あらすじ

誰も特別に思えないことが悩みの侑は、生徒会長になった燈子に相変わらず好かれ続けています。そして、たびたびキスやふれあいを要求され、それを受け入れてしまう状態になっているのです。

しかし、燈子と生徒会質でキスをしているところを同じ生徒会役員の槙(まき)に見られてしまい、付き合っているのかと疑われる事態になってしまうのです。

とっさに燈子をかばう侑に、槙は他の人には言いふらさないこと、燈子にもみたことを告げないことを約束します。そして、槙が侑の姿勢をみて発した一言が、侑の心情に大きな影響を与えるのです。

感想

侑が燈子への感情を意識し始め、物語が加速する

2巻の見所はキスシーンを見られた侑が燈子を優先してかばおうとする場面です。自分よりも燈子を優先する姿に、キスシーンを見た槙自身が驚かされます。実は槙も他人に恋愛感情を抱けない人間で、恋愛をしている人間はあくまで観察対象という変わり者だったのです。

槙の立ち居地は、百合漫画のカップルを見ている読者と視点が重なる部分があります。カップルに自分が当事者として割ってはいることに距離を置いていて、あくまで観測者としての立場を守ろうとする姿勢が明確だからです。

もっとも印象的なのは、槙から侑自身が燈子が好きなのだと指摘された後のシーンです。自分よりも他人を優先するのはその人が好きだから。その意味を噛み締める侑の姿が7話のラストシーンになっていて、戸惑いと意識の変化を表情から見て取ることができるのです。

侑の部屋での燈子のうろたえ様も見所に

2巻では燈子がうろたえる貴重な姿を見ることができます。侑に好かれていないと思っている燈子は、スキンシップなどを求める際に積極的に自分から主張します。しかし、侑からアプローチをされると弱く、特に侑の部屋に招かれた時は攻守が完全に逆転してしまうのです。

燈子が侑の部屋を訪れるのは9話で、侑が勉強で行き詰っている部分があり、一緒に勉強をすることを提案されたためです。家に上がる段階から緊張した状態であり、かなり意識している上にあがっているのがわかります。

部屋に上がってからの燈子の気がそれがちなことを指摘されたときのうろたえようはひどく、侑が距離を縮めようとすると思わず後ずさりながら目をそらすはめになってしまいます。そんな燈子を変態呼ばわりする侑も侑ですが、燈子の初々しさを見られる貴重なシーンになっています。

明確な拒絶を伝えるシーンも織り込まれている

2巻は二人の関係に大きな転機が訪れるのも特徴です。10話は燈子が抱えた孤独や不安を侑が察し、何とか歩み寄ろうとするシーンがあるのです。しかし、それに対する燈子の回答は明確な拒絶であり、「死んでも言われたくない」という言葉が侑の心を切り刻むことになります。

人によって物事は優先の順位があります。燈子にとって、ある目的を果たすこと、目標を達することは恋をかなえることよりも重要なことなのです。恋愛が最も重要なことではないという明確に示されるシーンでもあり、侑が燈子に対する接し方を考えさせられる場面にもなるのです。

本音をぶつけ合いながらも一部の言葉を飲み込み、二人は関係を継続していくことになります。それによって侑は痛みを受け入れることになり、関係の持続への覚悟を求められることになります。離れられないのが弱さなのか恋なのか悩みつつ、3巻以降へ話が続いていくのです。

まとめ

やがて君になるはただ燈子を受け入れるままだった侑が、その関係を見直すきっかけにあふれた巻になります。学校生活では文化祭での生徒会劇復活にかける燈子の情熱や、その理由に侑が振り回されることとなり、より燈子を深く知るきっかけになっているのもポイントです。

1巻でちょい役に見えた槙の心情やスタンスが明確になったのも評価したいポイントです。どんなキャラが物語上の重要キャラになるか読みづらく、先の展開が楽しみになる要素となって生かされているのです。次ぎの巻以降の伏線や、1巻の伏線の回収などもしっかりと行われています。

百合漫画として優れているだけでなくマンガとして優れた品質を保っていて、つい先が気になってしまう作品でもあります。読んだ後に読後感に浸れるだけでなく、読み直すと発見があるのも相変わらずで、さりげなくちりばめられた情報の量が非常に多い良作になっています。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

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