ラブひな 12

個性豊かな美少女たちの住む女子寮ひなた荘の管理人を務めながら、東大合格に向かって猛勉強を続ける青年、浦島 景太郎を主人公にしたラブコメの金字塔「ラブひな」。今回は、半年に渡りアメリカ留学に行っていた景太郎がとうとうひなた荘に帰還する単行本第12巻のレビューをさせていただきます。

アメリカ留学に行ってしまった景太郎に代わり、ひなた荘の新オーナーを名乗る景太郎の妹・可奈子が現れた前巻。ひなた荘を取り返そうとするヒロインたちと、可奈子を庇おうとする成瀬川、そしてそんな成瀬川が「約束の女の子」だったと知り裏切られた気持ちになる可奈子。三つ巴の争いが激化するまさにその渦中に、颯爽と帰還した景太郎…というところで、前巻は終わりました。

12巻は、景太郎がひなた荘に帰ってきた日から始まります。景太郎は、ひなた荘を旅館にするために傍若無人なふるまいを続ける可奈子を止めることができるのでしょうか。これまでダメダメだった景太郎の急成長にも注目のラブひな12巻です。

あらすじ

半年間のアメリカ留学から帰ってきた景太郎。ひなた荘を女子寮に戻すか旅館にするかで争っていたヒロインたちも一時休戦して、景太郎の帰国を祝います。これまで傍若無人に振舞ってきた可奈子もまた、景太郎の前ではしおらしくしているようです。

兄妹とはいっても血の繋がっていない景太郎と可奈子。実は景太郎に恋心を抱いている可奈子は、久しぶりの景太郎に対して一人の女性としてアプローチをかけ始めます。あまりに熱烈なアプローチに、最初は笑い飛ばしていた景太郎も、可奈子を女性として意識し始めてしまいます。

景太郎はこの状況を打破すべく、ひなた荘別館に伝わる「縁結びの魔力」を使って成瀬川と結ばれようと試みます。しかし景太郎は間違えて可奈子に告白してしまい、縁結びの魔力は景太郎と可奈子をくっつけるために発動してしまいました。このせいで何をやってもうまくいかなくなった成瀬川は、景太郎をあきらめて旅に出てしまいます。果たして景太郎は、縁結びの魔力から逃れて成瀬川と再会することができるのでしょうか。

感想

景太郎がひなた荘に帰ってきた!可奈子の反応は?

主人公なのに11巻にはほとんど出番がなかった景太郎でしたが、とうとう留学を終え、ひなた荘に帰ってきてくれました。景太郎が居なかった間のひなた荘では様々な出来事が起きていたこともあり、景太郎が居なかった時間はかなり長く感じてしまいました。実は景太郎が居なかった時間は作中時間で約半年、エピソードにして8話分の出来事に過ぎなかったのですが、それ以上に長い期間景太郎を見ていなかったような錯覚に陥ります。居ないと何だか物足りないという感覚がなるあたり、なんやかんや言って景太郎って主人公の器だったんだなぁ…と実感させられます。

帰国した景太郎に対して、ひなた荘のヒロインたちも大喜びで歓迎の宴を開催します。可奈子の手によって旅館にされてしまったときには、もはやこんなバカ騒ぎも出来なくなるものかと心配しましたが、今まで通りのひなた荘が戻ってきたという感じで安心しました。意外だったのは、勝手に宴会を始めてしまったヒロインたちに対し、可奈子が何も言わなかったことですね。どうやら可奈子は景太郎に対してはかなり弱いらしく、景太郎の前ではしおらしくなってしまうようです。景太郎の帰国に対するヒロインたち反応としては、可奈子の反応が一番予想外でした。

留学中に瀬田さんの影響をモロに受けてしまったらしい景太郎は何だか男前になっており、可奈子以外のヒロインたちも景太郎の一挙手一投足にときめきます。これまでは景太郎に対して最も淡泊だったキツネでさえ、留学の思い出話を語る景太郎を見て頬を赤らめているほどです。もともと景太郎に恋心を抱いていたしのぶや素子などは、「ホレたな?」と聞かれて図星の表情を見せていました。11巻はかなりドタバタしていましたが、景太郎が帰ってきたことにより、これまで通りのラブコメ展開が見られる12巻でした。

キャラがガラリと変わってしまった浦島兄妹

それにしても、前巻であれほど暴れまわっていた可奈子は、景太郎が帰ってきた途端あまりにもしおらしくなっていました。勝手に宴会を開いたヒロインたちを諫める様子も無ければ、本来の管理人である景太郎に食ってかかる様子もありません。もともと可奈子は景太郎が好きだったという描写はありましたが、それにしてもここまでキャラが変わるとは誰も予想できなかったのではないでしょうか。初登場から一貫してクールな態度を崩さなかった可奈子ですが、景太郎の前ではモジモジしてしまい強く出ることが出来ないようです。景太郎が帰ってきてからも一悶着あるかと思っていたのですが、この調子だと可奈子がこれ以上暴れることは無さそうです。

この巻からキャラが大きく変わってしまったのは可奈子だけではありません。先ほども少し触れましたが、景太郎もキャラが激変してしまっています。留学前は何かとアタフタしていた景太郎ですが、留学後は妙に落ち着いています。事故を起こしても動じないところといい、素子の剣術に立ち向かえるようになっているところといい、まるで瀬田さんにソックリです。キツネが景太郎を見て「目の輝きがますます昔の瀬田みたく…」とコメントしていることからも、ヒロインたちが景太郎から瀬田さんの雰囲気を感じ取っていることがわかります。半年間同じ場所で過ごした師弟とはいえ、ここまで景太郎を変えてしまうとは…恐るべくは瀬田さんの影響力です。

内面が変わったせいもあるのでしょうが、帰国した景太郎は外見もカッコよくなっています。ダサいメガネを今風のオシャレなメガネに変え、瀬田さんと同じように白衣を着て過ごすことが多くなったようです。また、可奈子も成瀬川の影響を受けて初登場時とは見た目の印象が変わります。最初は無表情だった可奈子ですが、この巻では笑ったり怒ったりと感情が顔に現れやすくなっています。笑った可奈子は初登場時の印象が嘘のように可愛らしいので、まだ読んでいないという人は可奈子の表情の変化に注目しながら読んでみてくださいね。それにしても、景太郎といい、可奈子といい、浦島兄妹は人の影響を受けて変わりやすいタイプなんですね…

ついに成瀬川の本心が明らかに!

12巻で最も注目すべきは、成瀬川と景太郎の恋の行方がついに明らかになる点です。序盤からメインヒロインの風格を醸しつつも、なかなか景太郎になびいてくれなかった成瀬川。しかしひたむきに努力を続ける景太郎のことを成瀬川も少しづつ認め、数巻前からは「好きかも」と発言するなど、交際間近の雰囲気はありました。ところが成瀬川は、景太郎が何度告白しても「嫌いじゃない」「でも付き合ってはいない」など煮え切らない態度を続けており、なかなか正式な交際が始まらずにいました。この展開にヤキモキしていた読者も多かったのではないでしょうか。

そして連載開始から12巻目にしてようやく!景太郎と成瀬川の恋路に大きなターニングポイントが訪れます。きっかけになったのは、やはり前巻からトラブルメーカーとして場を荒らしてくれた可奈子の存在でした。12巻収録の第100話「シスター・シンドローム」にて、景太郎は成瀬川と結ばれるために、ひなた荘別館に伝わる「縁結びの魔力」を使おうとします。しかしある手違いから縁結びの魔力は成瀬川ではなく、景太郎と可奈子を結ぶために発動してしまうのです。このことから成瀬川は何をやっても景太郎と上手くいかなくなり、恋をあきらめて旅に出てしまいます。

景太郎が縁結びの魔力に逆らいながら成瀬川を追いかける…というのがこの巻の大筋のストーリーです。考えてみれば、東大に落ちたときといい、受験で居眠りしてしまったときといい、よく失踪する主人公とヒロインですね。8巻で景太郎がパララケルス島に失踪したときには成瀬川が追いかけていきましたが、今回はその逆で、景太郎が成瀬川を追いかける構成になっています。長きに渡った成瀬川と景太郎の恋ですが、この巻でついに成瀬川の「本心」が聞けることになります。果たして成瀬川は景太郎の気持ちにどう応えるのでしょうか。必見です。

まとめ

ラブひな単行本第12巻は、成瀬川と景太郎の恋物語が一旦クライマックスを迎える巻でした。結果がどうなるのかは本編を読んでのお楽しみ…と言いたいところですが、どうレビューを書いても結末は大体バレバレになってしまいますね。なんといっても景太郎と成瀬川、もうだいぶ前からラブラブでしたから。しかしご安心ください。2人の恋の結末は、きっと皆さんが予想しているよりもはるかに感動的で衝撃的なものです。個人的には、12巻のラストシーンはラブコメ史に残る告白シーンだったと思いました。

この巻では景太郎と成瀬川の恋物語が芯となってストーリーが展開していきますが、前巻では散々暴れ回っていた可奈子の変化にも注目してもらいたいです。ひなた荘を勝手に改装したり、ヒロインたちを旅館の従業員としてこき使ったりと、これまでは憎まれ役として動いていた可奈子ですが、今回はラブひなのストーリー上絶対に欠かせない役回りで景太郎と成瀬川をサポートしてくれます。実は作者の赤松先生いわく、可奈子は「ラブひなを終わらせるために登場することが決まっていた」というキャラクターで、この巻での立ち回りも元々決められていたのだそうです。この巻から可奈子がどう変わっていくのか、ぜひ楽しみにしていてください。

赤松先生の「ラブひなを終わらせるために~」の発言からも分かるとおり、いよいよラブひなという作品も終わりに近づいてきました。ラブひなは全14巻なので、残すところあと2巻となります。当初の目的である「東大合格」や「約束の女の子」の問題が片付いた今、残っている問題は「素子の東大合格」「瀬田さんとはるかさんの関係」「カオラの故郷の謎」くらいでしょうか。これらの問題が残された2巻でどのように描かれていくのかも、次巻以降のお楽しみですね。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9