ラブひな 14

個性豊かな美少女たちの住む女子寮ひなた荘の管理人を務めながら、東大合格に向かって猛勉強を続ける青年、浦島 景太郎を主人公にしたラブコメの金字塔「ラブひな」。今回は、とうとうひなた荘の物語がクライマックスを迎える単行本最終巻のレビューをさせていただきます。

前巻では、景太郎の祖母から送られてきた「一週間後に景太郎の横にいた者を景太郎の嫁とする」というFAXが原因で壮絶な景太郎争奪戦が繰り広げられていました。しかし何とかヒロインたちも沈静化し、景太郎と成瀬川の交際は無事に続くこととなりました。その騒動の裏で、瀬田さんとはるかさんが結婚したり、カオラがお姫様だったことが分かったりと、前巻はかなり盛りだくさんでしたね。

そしてこの14巻では、いよいよ成瀬川を景太郎の結婚相手として認めてもらうため、2人は祖母の待つ日本へと帰国します。ところが日本についた途端、成瀬川と景太郎の仲を引き裂くかのような出来事が多発し始めます。最後の最後までトラブルが尽きないひなた荘の物語。果たして2人は無事に結ばれるのでしょうか。

あらすじ

モルモル王国で瀬田さんとはるかさんの結婚式を終え、景太郎の祖母に会うため日本に帰国した景太郎と成瀬川。ひなた荘で祖母を待つ景太郎のもとに、祖母から電話がかかってきます。久しぶりの祖母の声に喜ぶ一同でしたが、「景太郎、お前10何年前の思い出の女の子を探しとるんじゃて?」という一言で雰囲気が一変します。祖母はどうやら「約束の女の子」の正体を知っている様子です。

喜んで「約束の女の子」の正体を聞こうとする景太郎ですが、成瀬川は慌てて電話を切ってしまいます。これまでの情報から、成瀬川が「約束の女の子」であることはほぼ確定かと思われていましたが、「今さら、私じゃないなんて言われても困る」と不安になってしまったのです。その日からというもの、景太郎と成瀬川が一緒になろうとする度に良くない事が起こるようになります。

一緒にホテルに泊まっても、デートをしていても、必ず何らかの邪魔が入って引き裂かれてしまうのです。その上、ひなた荘に住むヒロインたちがそれぞれ別の理由でひなた荘を離れることになり、成瀬川は一人ぼっちになってしまいます。重なる不運を「私が思い出の女の子じゃないからじゃ?」と思い始めた成瀬川は、景太郎から離れて実家に帰る決心をするのでした。

感想

約束の女の子は成瀬川ではなかった!?

最終巻にして、またもや持ち上がった「約束の女の子」問題。そもそもラブひなという作品は、景太郎が幼い頃に出会った「約束の女の子」と再会するために東大を目指すというストーリーでした。思い返してみると、成瀬川が「約束の女の子」でほぼ確定となったのが単行本7巻、そして景太郎が東大に合格したのが単行本8巻での出来事です。これらの問題はすでに解決済みだと思っていたのですが、ここへきてまた「約束の女の子」が成瀬川では無いのではないかという展開になってきました。

景太郎の祖母は「約束の女の子」を覚えているらしいのですが、祖母から電話口で真実を告げられそうになった成瀬川は、勝手に電話を切って逃げ出してしまいます。たしかに、あれだけドラマチックな恋愛を重ねてきて、ようやく景太郎と結ばれたと思った途端に「アナタは約束の女の子ではない」なんて言われたらたまったものではないでしょう。そんな成瀬川の気持ちを尊重して、もう「約束の女の子」の話はしないと決心する景太郎でしたが、その日から2人の仲を引き裂くような出来事が多発します。

不運に巻き込まれる度に「私が思い出の女の子じゃないから?」と考えてしまう成瀬川。考えてみれば景太郎と成瀬川を結びつけたのは「約束の女の子」という、たったひとつのジンクスでした。今の成瀬川にとって、自分が「約束の女の子」であることは景太郎と結ばれるために必要不可欠な条件だったのかもしれません。そして全てを知る祖母から、2人にあの頃の真実が明かされます。果たして、成瀬川は本物の「約束の女の子」だったのでしょうか。

次々にひなた荘から居なくなるヒロインたち

もしかしたら自分は「約束の女の子」ではないかもしれない…成瀬川にそう悩ませた原因のひとつは、ひなた荘の面々が次々に居なくなっていったことでした。その日、2人きりで夏祭りを堪能してきた景太郎と成瀬川は、帰宅したひなた荘に人の気配が無いことに気付きます。何事かと建物中を探してみると、それぞれの部屋やロビーから、居なくなったヒロインたちの置き手紙が見つかるのです。ヒロインたちは示し合わせたわけではなく、たまたま時期を同じくして、それぞれ異なる事情でひなた荘を離れることになったのでした。

しのぶは家庭の事情が悪化して実家へ戻り、素子は剣道場を継ぐ手続きのために京都へ、キツネははるかさんの代わりに和風茶房「日向」に移り住んでいます。カオラは前巻で景太郎と結婚できなかったことからお見合いのため母国へ戻り、むつみさんもペットの亀の出産のために沖縄へ帰り、可奈子は祖母に呼び出されてブラジルへ。これまでひなた荘に常駐していたはるかさんも、瀬田さんと結婚してサラと共にモルモル王国に残ったため、ひなた荘はほとんど無人状態になります。その上、景太郎にもパララケルスの研究所からスカウトがきたため、成瀬川だけが取り残される形になってしまいました。

これまで絶えず賑やかだったひなた荘が、シーンと静まり帰る様子は胸にきますね。景太郎や成瀬川が失踪して、それを全員で追いかけるという状況はもはやお約束となっていましたが、まさか最後の最後で誰もいなくなってしまうなんて予想もしていませんでした。全ての問題が13巻までに片付いて、さぁあとは大団円だ…と思っていたのですが、最後まで油断ならないのがラブひなという作品です。ひなた荘にまたあの賑やかな日常が戻ってくるのかどうか、気になる方は本編を読んで確かめてみてください。

時は流れ…4年後のひなた荘の姿とは

ラブひな14巻には、最終回と呼べるエピソードが2つ収録されています。ひとつが、第118話「約束の女の子(後編)」で、これまでずっと続いてきたラブひな最大の謎「約束の女の子」に関する全ての真実が明かされるエピソードです。そしてもうひとつが、エピローグとして掲載された「はじまりはここから」というエピソードとなります。エピローグ扱いではありますが、ストーリーの性質上、この回がラブひなの本当の最終回と呼べるような構成になっています。「はじまりはここから」は、ヒロインたちが次々と消えていった一件から、およそ4年後のひなた荘が舞台となっています。

エピローグというだけあって、この物語の主人公は景太郎でも成瀬川でもありません。新キャラの「前田 絵馬」がエピローグの主人公となり、4年後のひなた荘に入居希望するところから始まります。その頃のひなた荘は「どんなバカでも東大に受かる夢の女子寮」として知られているらしく、絵馬もまた東大入学を目指す女子中学生なのでした。エピローグは、絵馬の目を通して「外から見たひなた荘」を体感できる回となっています。客観的に見ればかなり変人揃いのひなた荘。今のところ常識人の絵馬は、ひなた荘を見てどのような反応を見せるのでしょうか。

絵馬がひなた荘にやってくるシーンは、かつて景太郎がひなた荘に来たシーンを踏襲していることがわかります。昔、景太郎が女子風呂に入って変態扱いされたときと同じように、絵馬も覗き魔と間違われて追いかけられてしまいます。4年経ったひなた荘に当時のヒロインたちは残っているのか、そしてどんな成長を遂げたのかに注目しながら、1巻と読み比べたいシーンです。そして絵馬がやってきた日は、ひなた荘にとってとても重要な日だったのですが…何が起こったのかは本編で確認してみてください。

まとめ

とうとうラブひなも最終巻となりました。これまでにも多くのトラブルを経験してきたひなた荘の面々ですが、この巻でもやっぱり大きな騒動が起こってしまいます。今までに起こった騒動と違うのは、かなり雰囲気が重いシーンが多くなっているということです。成瀬川が「約束の女の子」ではないかもしれないという疑惑が持ち上がって以降、ヒロインたちが居なくなったり、成瀬川が身を引いたりと重いシーンが続きます。特に、あれだけ騒がしかったひなた荘が無人状態になるシーンは胸にくるものがありました。

しかし、その4年後のひなた荘を描いたエピローグ「はじまりはここから」は、かなり明るい雰囲気の話になっていました。主人公は景太郎ではなく絵馬という少女に代わりますが、絵馬から見た景太郎や、成瀬川の姿というのも新鮮でした。1巻ではダメ男の象徴のような存在だった景太郎が、絵馬から見ると「頼れる大人」になっていることに驚きます。これまでの巻を読んでいても、景太郎が成長したと思えるような描写はいくつもありましたが、このエピソードは景太郎の成長物語の集大成だと感じました。

まだ読んでいない方に出来るだけ新鮮な気持ちで読んでいただけるよう、最終巻のレビューはかなりストーリーをぼかして書いてみました。14巻に渡って繰り広げられてきた景太郎と成瀬川の恋の行方はどうなるのか、そして本当の「約束の女の子」が誰だったのか。肝心な部分がほとんど解らないようにレビューしましたので、未読の方はぜひ実際にラブひな単行本第14巻を読んでお確かめください。なんて言ってはみたものの、単行本14巻の表紙がかなりネタバレなので、結末はすぐに分かってしまいそうなものですが…というわけで、長く続いたひなた荘の物語もここでおしまいです。果たして景太郎たちにはどんな未来が待ち構えているのでしょうか。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10