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見滝原☆アンチマテリアルズ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

「ひだまりスケッチ」などでお馴染みの漫画家・蒼樹うめ先生がキャラクターデザイン原案を手がけた大人気TVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」。可愛らしい見た目とは真逆のダーク・ファンタジー展開に度肝を抜かれた方も多いでしょう。

「見滝原☆アンチマテリアルズ」は、そんな「魔法少女まどか☆マギカ」世界の、とある時間軸で展開される「もしかしたら、ありえたかもしれない」物語です。間もなく訪れる災厄の魔女ワルプルギスの夜を迎え撃つため、見滝原を守る魔法少女・巴マミに共闘を持ちかける暁美ほむら。ところが、その申し入れが思いもよらぬ方向へ……。

原作を最後まで視聴していることを前提に描かれているため、登場人物や魔法少女に関する説明などは一切行われません。そのため、知識のない方が「見滝原☆アンチマテリアルズ」を読むと、各キャラクターの行動原理がわからず戸惑ってしまうでしょう。ネタバレも含まれるため、本作をお手に取る前に、まずは「魔法少女まどか☆マギカ」をご覧ください。

あらすじ

二週間後に、出現した土地に壊滅的な被害をもたらす災厄の魔女・ワルプルギスの夜がやって来ることを知っている暁美ほむらは、見滝原を守護する魔法少女・巴マミに対し、警告と共に共闘を申し入れました。マミも、ほむらの提案をあっさりと受け入れます。

ところが、その直後。マミは、ほむらが想像だにしていなかった話を持ちかけてきました。それは、マミの家で一緒に住むこと……ルームシェアです。諸事情により、一人暮らしを余儀なくされていた二人の少女は、こうして生活を共にすることになりました。

魔法少女としては頼れる先輩なのに、実生活では意外とだらしのないところがあるマミと、どうしてこうなったのかと頭を抱えつつも、そんな「世界」が気に入っているほむらは、今日も仲良く一緒に朝食を摂り、他愛のない会話を楽しみながら通学するのでした。

感想

魔法少女たちが普通の女の子として生きられる世界

友人たちと仲良く通学し、テスト勉強で四苦八苦、季節ごとのイベントに一喜一憂する。そんな、ごく当たり前の学生生活を送る巴マミと暁美ほむらの姿が眩しいです。同じ魔法少女の佐倉杏子も、状況次第で魔法少女になってしまう鹿目まどかと美樹さやかも、揃ってマミの家でお茶する程仲良しで、思わず涙が出てきます。「見滝原☆アンチマテリアルズ」を読んだ後で、彼女たちには最初からこの世界で生きていて欲しかった。そんな風に考えてしまう「まどマギ」ファンの方も多いのではないでしょうか。原作がブラックな世界観だっただけに、余計にそう感じてしまいます。

魔法少女モノであるにも関わらず、変身バンクも敵とのバトルも無し。ごく稀に魔法を使う場面もありますが、基本的に平和な日常が続いていきます。どうしてこんなに平穏なのか、それは作中の時間経過から察していただくとして……本作では魔法少女たちが和気藹々、仲良く暮らしている姿を思う存分楽しめます。容姿端麗なマミが下級生から巴様と呼ばれていたり、いつの間にかファンクラブが結成されていたりする等、ほのかに百合の香りがしますが、直接的な描写は一切ないので、そういった要素が苦手な方にも安心です。

登場人物が女の子ばかりなのも、画面が華やかで良いですね。お色気要素、いわゆるサービスカットの類は全くありませんが、少女たちが楽しそうに毎日を過ごす姿をただ見ているだけで、心がぽかぽかしてきます。原作アニメでの境遇と比較しての落差もあるのでしょうが、女の子はやはり笑顔が一番です。あえて原作の設定を頭の中から追い出した上で、笑っている魔法少女たちを見て萌えたり、なごんだりするのが本作の楽しみ方なのではないかと思います。

魔法少女たちの微笑ましいルームシェア生活

「見滝原☆アンチマテリアルズ」最大のセールスポイントは、暁美ほむらと巴マミという、原作ではお互いに苦手意識を持っていた少女たちの共同生活です。後輩たちの前では格好良く振る舞い、隙のない姿を見せていたマミが、実は魔女との戦いが怖くてたまらず、孤独な毎日に耐えきれずに影で泣いてばかりいる、ガラスのように繊細な少女でした。そんなマミも、ほむらとルームシェアを始めたことで一人ではなくなり、肩の力が抜けたのでしょう。ぽややんとした素が表に出てきているのが興味深いです。

芸能事務所からスカウトされる程の容姿を褒められているのに、それがほむらに向けられたものだと勘違いしたり、早起きしたことを自慢げに話したりするマミからは年齢相応の少女らしさが感じられて、とても可愛いです。そして、朝に弱く、なかなかベッドから出られずにごろごろしているマミを毎日のように叩き起こすほむら。もう、どちらがお姉さんなのかわかりません。そんなマミの影響を受けたのか、ほむらからもピリピリとした空気が抜け、丸くなりつつあります。魔法少女としての連携もうまくいっているようで、彼女たちの共同生活は、お互いにプラスになることばかりでした。

そんな彼女たちのルームシェア生活の中でも特に見逃せないのは、私服姿が多いことでしょう。Yシャツにネクタイ、ショートパンツというボーイッシュな服装のほむらは、想像以上に似合っていました。この他にも、エプロン姿やタートルネックのセーターを着たマミ、二人の晴れ着姿など、原作ではほとんど見られなかった装いを堪能できます。あえて欲を言うなら、まどか・さやか・杏子の私服も是非見てみたかったのですが……そのあたりは次の巻に期待です。

ドタバタギャグな日常にこそ価値がある

いつのまにか作られていた巴マミファンクラブ。もちろん本人非公認。そもそも、そんなものが存在していること自体、マミは知りませんでした。なお、入会特典はマミの生写真。ぬいぐるみを抱き抱えて眠る姿や、調理実習を楽しんでいる様子がバッチリ撮影されています。このカメラマン、できる! と、感心してばかりもいられません。どう考えてもマミが提供したものではありませんし、そうであれば盗撮です。魔法少女案件ではないけれど、いきなり事件か? と思いきや、犯人はまさかの……。ある意味、この世界が平和であることの象徴のようなエピソードでした。

こうしたゆるい日常の中で起こるささやかな事件が、本作に彩りを与えています。ちょっとしたいたずら心で魔法を使い、ほむらとマミがお互いの身体を入れ替えてみたり。ほむらの髪が伸びたことに気付いたマミが親切心から散髪を申し入れたのに、全力で拒否されたり。眠っている間にネコミミのカチューシャを付けられたほむらが犯人を追いかけ回したり。「まどマギ」知識無しで見ると、女子中学生同士の微笑ましいやりとり、というだけで終わってしまうお話が、原作とのギャップによってガラリと見方が変わるのが楽しいです。平和とは、本当に貴いものなのですね。

全般的にギャグテイストで進行する本作ですが、随所にほろりとさせられる場面も用意されています。巴マミの家庭の事情をよく知る原作ファンであれば、なおさらです。こういった小話が、笑っているところへ不意打ち気味に投下されるので油断できません。マミとほむらの組み合わせがここまでうまくいくとは、正直想像だにしていませんでした。お互いに孤独を知る彼女たちだからこそ、相手を思いやることができるのでしょう。もっとも、そんな感傷もすぐにギャグに流されてしまう訳ですが。

まとめ

「見滝原☆アンチマテリアルズ」は「魔法少女まどか☆マギカ」TV版全編を視聴していることを前提に描かれた、ファン向けの一冊です。知識なしでも読めますが、原作を知らないと楽しめない、理解しにくいエピソードが多く、そういった意味では残念ながら、全ての人におすすめできるとは言えないでしょう。ですが、逆に言えば「まどマギ」ファン、かつ魔法少女たちが平和な世界で暮らす姿を愛でたい、という方には全力で推奨したくなる作品です。

1巻目は巴マミと暁美ほむらが中心で、まどかをはじめとしたその他の魔法少女たちはほとんど出てきませんが、次の巻からは順調にからんでくるようです。基本的に1話読み切り形式のため、メインストーリーは存在するようでありません。とはいえ、いきなり2巻から読むのは、ツンツンだったほむらから徐々に堅さが取れ、苦手だったマミとうち解けていく過程を見ないということでもあり、それは非情に勿体ないと思います。ぽわぽわしたマミもそうですが、デレ顔のほむらはとても貴重なので。

なお、作画担当は蒼樹うめ先生ではなく他の先生が行っているため、蒼樹うめ先生のファンだから購入したい、という方はご注意ください。アニメの絵とも微妙に異なるため、どんな絵なのか気になる場合は、ネット上の立ち読みなどで自分の好みに合うかどうかも、念のため確認しておいたほうがよいでしょう。もっとも、さほど元のデザインから逸脱したものではありませんのでその点はご安心を。お話自体はほのぼのとしていて、キャラのイメージもギャグシーン以外では崩れておらず、安心して読めると思います。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8

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