みなみけ(4) (ヤングマガジンコミックス)

「この物語は南家3姉妹の平凡な日常をたんたんと描くものです。過度な期待はしないでください」という気の抜けたキャッチフレーズでおなじみのマンガ「みなみけ」。キャッチフレーズの通り、ごく普通の3姉妹が暮らす様子を眺めるだけの日常系萌えマンガです。

4巻は南3姉妹というよりも、マコちゃんとトウマを中心にしたエピソードが多くなっています。これまでは誰にも迷惑をかけずに性別を偽っていた2人ですが、この巻ではマコちゃんとトウマの性別交換のせいで、ある人物が大きな被害を被ることになります。

さらにこの巻には、温泉回やクリスマス回などのイベントも多数収録されており、見ごたえ十分の内容となっています。今回はそんな、みなみけ単行本第4巻のレビューと、おすすめエピソードの紹介をさせていただきます。

あらすじ

南家に行くときには女装して「マコちゃん」になり切ることが習慣になってしまったマコトくん。いつかはマコちゃんではなく、堂々と「マコトくん」として南家を訪れなければならない…と悩む毎日を送っていますが、なかなか女装をやめるタイミングがつかめずに困っています。

そんな中、マコトくんに女装を勧めて「マコちゃん」に仕立て上げた張本人であるカナも、実は内心では迷っていました。自分のせいで女装癖に磨きがかかってきたマコトくんに女装をやめさせるべきか、それとも本人が楽しそうにしているから放っておこうかと思案しています。

性別を偽ることで悩みを抱えているのはマコちゃんだけではありません。トウマもまた、藤岡の前で男のように振舞うことに疲れはじめていました。マコちゃんとトウマの2人は、悩みながらも現状維持のまま性別を偽って暮らし続けています。そんなある日、2人の性別交換が原因で「ある人物」に悲劇が起こってしまうのでした。

感想

マコちゃんとトウマの性別交換が巻き起こす騒動

4巻は、マコちゃんとトウマを中心に描かれているエピソードが多かったように感じます。数えてみると、第62話「来るのか」、第63話「オレの戦い」、第73話「うわっ」、第74話「重要か?」、第80話「態度には」という、5つのエピソードが、マコちゃんとトウマの性別の話でした。どのエピソードも、性別を偽っている2人のどちらかの正体がバレそうになり、必死になって隠すというストーリーです。マコちゃんとトウマのエピソードが多いので、必然的に両方の正体を知っているカナの出番も多くなっていました。

そもそもマコちゃんが性別を隠しているのは、チアキにバレずに南家に遊びに行き、ハルカとお近づきになるためです。そしてトウマが性別を隠しているのは、チアキの弟という設定を守るためというのが一つ、そして藤岡に女だとバレたらややこしいからという理由でした。性別を偽っているとは言っても、どちらも特定の人物だけをだますために女装・男装しているという状況ですね。そのため、南家に入り浸るほとんどのキャラクターは、マコちゃんかトウマ、どちらかの正体は知っているという関係になっています。

しかし作中で唯一、マコちゃんの正体も、トウマの正体も知らずに過ごしているキャラクターがいます。そう、藤岡です。第74話「重要か?」では、マコちゃんとトウマの本当の性別を知らない藤岡の身に大きな悲劇が巻き起こります。このエピソードは、南3姉妹が友人たちと共に温泉に行くという話です。最初、男湯に入ろうとした藤岡は脱衣所でマコちゃんを見かけます。マコちゃんを女の子だと思っている藤岡は脱衣所を間違えたと思い、女湯の脱衣所へ。そこで男の子だと思っているトウマを見かけて、安心して女湯へGO…という悲劇です。果たして藤岡は、「変態」の称号を欲しいがままにしてしまうのでしょうか。

激レアな「ニコニコしているチアキ」がたくさん見られる巻

南3姉妹のなかで一番クールなチアキ。いつも半目で、常に不機嫌そうな表情をしているところがチアキの特徴ですよね。しかしこの巻では、これまでは見ることのできなかった「ニコニコしているチアキ」がたくさん見られます。今までチアキがニコニコしていたのは、間違えてお酒を飲んでしまい、笑い上戸になった場面くらいのものでしたが、今回はお酒の力無しで笑っています。4巻でチアキが笑っているのは、第74話「重要か?」で温泉に入っているシーンと、第75話「当たったろう」でカニを食べているシーンです。

これらのシーンでチアキがニコニコしていたのは、もちろん温泉とカニが好きだからという理由もあるのでしょうが、チアキ自身が成長したことにも関係しているのではないかという気がします。第62話「来るのか」というエピソードでも、チアキのクラスメイトである内田が「チアキ変わったなー」とつぶやくシーンがあります。内田いわく、昔のチアキは現在のように他人と関わろうとはしなかったのだそうです。チアキは感情の起伏が少ない子供なのかと思っていましたが、意外に内向的だっただけなのかもしれませんね。

チアキが昔よりも明るくなった理由は、南家に入り浸る人間が増えたことにあるのではないでしょうか。もともとハルカの友人が南家に遊びに来ることはあったようですが、1巻の始めごろは今ほどの人数が南家と関わってはいませんでした。今やトウマは本当の姉妹のような顔で南家に居ますし、藤岡はチアキの兄のような立ち位置を獲得しているようにも見えます。それ以外にも、毎日のように誰かの友人が南家に遊びにきていることが、複数のエピソードから見て取れます。チアキはたくさんの人と接することで、社交性を獲得していったということなのでしょう。もしかすると今後の巻では、今よりもチアキの笑顔の回数が増えていくのかもしれませんね。

今明かされる藤岡とカナの出会いとは

1巻でちゃんと告白したにも関わらず、今やすっかりカナに恋愛対象として見られていない感のある藤岡。意外に恋愛シーンの少ないこのマンガで好きな人に告白した唯一のキャラクターなのに、藤岡の恋はなかなか進展しません。この巻では、いつまで経っても藤岡の好意に気付かないカナに対し、とうとうチアキまでも「あわれな藤岡…こいつ(カナ)に好意が真っ直ぐ届く日は来るのだろうか」と心配し始めています。カナは天然バカな一面があるだけでなく、恋愛面に関しても驚くほど鈍感みたいです。それも、小学生に心配されるほどに。

そんなあわれな藤岡ですが、どうしてここまで一途にカナのことを想っているのでしょうか。藤岡は学校ではかなりモテるようですし、カナ以外にもカワイイ女の子はよりどりみどりだと思うのですが…そんな読者の疑問に答えるように、4巻収録の第78話「振り返る日」には、藤岡がカナを好きになった日のことが描かれていました。しかし、その出会い方で女の子を好きになるというのはちょっと共感できないというか…藤岡はドМなんじゃないかと察してしまうようなエピソードとなっています。

入学式当日の朝、藤岡は遅刻寸前のカナと出会います。そして偶然肩がぶつかり、カナに「気をつけろよ」乱暴に言われた藤岡…思春期の男子ならあらぬ暴言に怒ってしまいそうなものですが、暴言を吐いて去っていったカナを、藤岡はポーっと見つめています。女の子を好きになる場面としては、ちょっと特殊ですよね。単に一目ぼれだっただけかもしれませんが、ロマンチックな出会いとは到底思えません。そして、藤岡がカナにホレたちょうどその日のことを、カナは「怖かった思い出」として語っています。初対面の藤岡に暴言を吐くほど不機嫌だったその日、カナの身に何が起こっていたのかは、みなみけ4巻を読んで確かめてみてください。

まとめ

みなみけ単行本第4巻は、マコちゃんとトウマを中心に描かれるエピソードの多い巻でした。この2人をメインにしたエピソードだけでも5話分ありましたが、特にトウマはほとんどのエピソードに登場していましたね。4人目の南姉妹と言っても過言ではない立ち位置に収まったトウマですが、作中でも南3姉妹にすっかり受け入れられているみたいです。最近では、南3姉妹が夕食を食べるシーンや、揃って遊びに行くシーンには当然のようにトウマがいます。

南家に当然のように紛れ込んでいるといえば、藤岡もまた南家の一員のように溶け込んでいます。カナに告白済みとは言っても、カナが返事を出していない以上付き合っているわけでも何でもないはずなのですが、一緒に温泉旅行に行ったり、クリスマスにはサンタの役割をしたり、はたから見れば完全に家族公認のカップルにしか見えません。南家に入り浸る友人は何人もいますが、その中でもトウマと藤岡だけは特別扱いされているように見えますね。家族ぐるみの付き合いというよりも、この2人だけは家族そのものといった感じです。

そしてこの巻でもう一点気になったのは、ハルカとナツキの関係です。前巻から登場したナツキはトウマの兄であり、高校ではハルカの後輩にあたる人物です。いつも温厚なハルカですが、ナツキに対してだけはなぜか強く当たることが多く、カナは「今までハルカがあんなに感情的になる相手がいたか?」「好きなんじゃねーの?」と勘ぐっているようです。ハルカの王子様的ポジションは保坂先輩で決まりなのかと思い込んでいましたが、もしかすると今後、ナツキとハルカによるラブストーリーが展開されることもあるのかもしれませんね。次巻以降のみなみけは、2人の関係の変化にも注目して読んでいきたいと思います。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8