Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ (2) (角川コミックス・エース)

「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」は「Fate/stay night」のTYPE-MOON公認スピンオフコミックスです。ダークファンタジー色の濃いSNと比べ、キュートな魔法少女たちが織り成すマジカルストーリーは、第1巻ではゆるく、明るく展開してきました。

ところが、第2巻に入ったところで物語は急転します。強敵「キャスター」を撃破した直後、さらなる難敵がイリヤたちの前に立ちふさがったのです。2連戦、しかもキャスターを相手に大きく消耗していたイリヤと美遊は、このピンチをどう切り抜けるのか?

仲間たちが次々と倒れていく中、ルビーとサファイアが提案した第3の策とは? そして、イリヤの内側に封じられているものの正体は? 今回は、そんな急転直下の展開を見せる「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」第2巻についてご紹介します。

あらすじ

苦戦しながらも、どうにかキャスターを撃破したイリヤと美遊。ところが、クラスカードが創り出したと思しき鏡面界は揺らぎを起こしません。そのことを疑問に思う間もなく、背後から漆黒の一閃が凜とルヴィアを襲います。

起きたのは最悪の想定外、まさかの対クラスカード2連戦でした。黒い霧を纏った剣士は、クラスカード「セイバー」に宿る英霊。イリヤの魔力砲は霧にかき消されてしまい、効果なし。接近戦を挑んだ美遊も、ダメージを与えるどころか逆に物理障壁を抜かれてしまい、Die(死)ピンチに陥ってしまいます。

倒せない、逃げられないという、最強最悪の敵から凜とルヴィアを救うため、ルビーとサファイアは重大な選択を行います。ステッキたちが第3の選択肢を実現したとき、セイバーとカレイドの魔法少女の苛烈な戦いが幕を開ける……!

感想

いきなりのDieピンチ! 緊迫したセイバーとの戦い

開幕から保護者的立場にいる凜とルヴィアが倒されていることに加え、こちらの攻撃が一切敵に通じないという大ピンチ。ただひたすらに凜たちを心配するイリヤを抑え、震えながらも慎重に事を運ぼうとする美遊。小学生とは思えない冷静な判断力に、ふと大切なことを思い出しました。イリヤとは違い、美遊のバックグラウンドは何一つ明かされていないのです。彼女は一体、どんな環境にいたのでしょうか。魔術を知っているような発言もあり、非常に気になります。

そして、時間が経過するにつれ悪化していく戦況。通常であれば、撃破したクラスカードを限定展開(インクルード)利用して強力な攻撃を放つことで何とかしてきた美遊ですが、ここで一度使ったカードは数時間は使えなくなるという設定が明かされます。ランサーのカードはキャスター戦で既に使っていたため、現在は展開不可。イリヤが託されていたアーチャーはまともに起動しません。残るライダーとキャスターのカードも能力不明で、ぶっつけ本番では何が起こるかわからず、危険過ぎました。

凜たちを抱えて逃げようにも、セイバーは見逃してくれそうにありません。かといって、攻撃が効かないので倒すことも不可能。そんな場面で、ルビーとサファイアはとある決断をします。普段は馬鹿なことばかりしているルビーにも、状況をわきまえて行動できる知能があるんだと実感したと同時に、普段からその調子であれば、もっとイリヤから信頼されるのに。などと考えてしまいました。もっとも、ルビーが真面目になってしまうと、イジられて踊らされるイリヤや凜の姿が見られなくなるので、それはそれで寂しいのですが。

スイッチが入ってしまったイリヤの暴走

苦戦の末、どうにかセイバーを撃破することに成功したイリヤ。ところが本人にはその記憶がない上に、魔力の使い過ぎで高熱を出してしまいます。そんな彼女の元へ、ルヴィアの屋敷で住み込みのアルバイトをしていた美遊がお見舞いにやってきました……メイド服で。ルヴィアの家の制服らしいです。いかにもなメイド服を可愛らしい同級生が着ているという状況に変なスイッチが入ってしまったイリヤが大暴走。あまりのアレっぷりに、同じくお見舞いに来た同級生たちはドン引きです。おまけにイリヤ宅のメイドたちまで巻き込んでの大騒動になってしまいました。

このエピソードの見所は、美遊の可愛らしさ全開なメイド服姿もそうですが、いたいけなメイド少女と暴君イリヤの「ご主人さまとメイドごっこ」でしょう。熱で脳が茹だったイリヤが、パジャマ姿でくんずほぐれつ……どう見ても百合です、本当にありがとうございました。さすがに年齢制限がかかるような真似はしていませんが、少女たちの大変けしからん姿にクラクラ来てしまいます。メイド姿で恥ずかしがる美遊を見たイリヤが、思わず暴発してしまった気持ちはわからなくもないのですが、これでいいのか小学生。

このドタバタ劇がきっかけで、イリヤと美遊の距離が大きく縮まりました。これまで「イリヤスフィール」と声をかけていた美遊がイリヤと呼ぶようになり、イリヤも美遊本人の申し出により、さん付けをやめて美遊と呼び捨てするようになります。これは、魔法少女たちの間に友情が芽生えた瞬間でもありました。けれど、イリヤと美遊との「友達」というものに対する認識は、大きく異なっていました。それが、以後の展開に繋がっていきます。単なるサービス回に見せかけて、うまくフラグを配置しているという印象でした。やはり、この作者様は「読ませる」お話づくりが上手だと思います。

イリヤにかけられた封印の謎と、家族の日常を守る母

魔法少女たちがドタバタしている間に、アインツベルン家の本職メイドたちが何やら不穏な会話をしていました。イリヤにかけられた封印、命にかかわる危険があった時だけ外れるはず等々、どうやら彼女の内側にある何かが、魔法少女としてケタ外れの才能を示し続けているイリヤの秘密に関係しているようです。さらに、美遊が天涯孤独であるような描写もありました。本当に、彼女は何者なのでしょうか? 謎はますます深まるばかりです。

そんなシリアスな空気を吹き飛ばしたのが、突然帰国したイリヤの母・アイリスフィールでした。今度は母娘でお風呂です。魔法少女モノであるはずなのに、こうしてあちこちにサービスシーンが散りばめられているのも「プリズマ☆イリヤ」の特徴かもしれませんね。微妙に百合っぽくなってしまうのは、お兄ちゃんのシロウとその友人くらいしか男性キャラクターが出てこないからでしょうか。そういえば、イリヤのお父さんも海外で仕事をしているらしいです。何かを守るために両親揃って働いているようですが、このあたりも物語の鍵になりそうです。

いっぽうその頃。美遊は凜とルヴィアを振り切り、たった一人でクラスカード最後の一枚と戦っていました。慎重な彼女とは思えぬ程無謀な行為に、サファイアも必死で止めようとしますが、美遊は何としてでも単独で全てを終わらせようとしていました。蒼の魔法少女が対峙するは、鋼のような肉体を誇るバーサーカー。Fate/stay nightをご存じの方にはお馴染みの超強敵です。原典未プレイ・アニメ未視聴でも読める本作ですが、知っていると、このバトルがどれほど危険なものであるのかご理解いただけるかと思います。それだけに、美遊の戦いには心底痺れました。

まとめ

「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」第2巻は、開幕からマジカルというよりも鉄錆の匂いがしそうなハードバトルですが、要所要所で日常回を挟んだ構成となっており、変な緊張感を強いられることなく、わくわくしながら読み進めることができます。微妙にイリヤと美遊の間に百合百合しい描写が出てきているような気もしますが、直接的な何かをしている訳ではないので余程百合モノを苦手としている方でない限りは問題ないでしょう。

そして、本巻をもって「プリズマ☆イリヤ」第1部は完結します。まだまだ謎が残っているのに、もっと彼女たちを見ていたいのに。と、お考えの貴方はご安心を。本作は「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ2wei!」(ツヴァイ)と名を変え、さらに先へと続いております。第2期開幕で魔法少女衣装もリニューアル。平穏な日常生活を取り戻したはずのイリヤたちは、またしてもトラブルに巻き込まれて……? 続きは、どうぞ直接本をお手に取って確かめてみてください。

なお「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」は既にTVアニメが第3期まで公開され、2017年・夏に劇場版映画の公開が決定しています。また、ノベライズ化も行われておりますが、本作はアニメや小説のコミカライズ版ではありません。こちらが原作ですので、誤解のなきようお願い申し上げます。アニメから入った方にも、そうでない方にもお勧めできる一冊ですので、是非1巻から通してお読みになってみてくださいね。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9