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亜人ちゃんは語りたい(5) (ヤンマガKCスペシャル)

普通の人とは少しだけ違う性質を持った亜人(デミ)ちゃんたちが、柴崎高等学校に通い始めて早数ヶ月。季節は春から夏へと移り変わろうとしていました。ただでさえ夏の陽差しは厳しいというのに、熱に弱い雪女や、太陽の光が苦手なバンパイアにはたまりません。

本人たちも大変ですが、彼女たちの性質を知る教師や家族の悩みも尽きません。「亜人ちゃんは語りたい」第5巻では、厳しい夏を乗り越えるために奮闘する亜人ちゃんたちを中心に、周囲を取り巻く人々にもスポットを当てています。

雪女としての能力を向上させることで暑さを乗り切ろうとする雪、冷房の効いた理科準備室に籠もろうとするひかり、夏になると何故かシャツの上にベストを着る京子、プールサイドで高橋先生に迫る早紀絵の他に、新キャラクターが登場。ますます目が離せません。

あらすじ

暑さが苦手な早乙女雪は、迫り来る夏を目前にして、一つの答えに行き着きました。雪女には微弱ながらも冷気を発するという性質があります。雪は自分の性質を向上させることで、夏を快適に過ごせるようになるのではないかと考えたのです。

そして、夏到来。暑いのなら水浴びをして涼もうということで、土曜日の午後にプールを貸し切ってレッツ・スイミング。この課外授業、夏が苦手なひかりと雪のためという側面も、もちろんありましたが、実は高橋の狙いは他にあったのです。

同じ頃。武蔵野理科大学に通う女学生が、深く悩んでいました。人間に幸せを運んでくれるという伝承を持つ亜人が、前触れもなくいきなり自分の家に棲み着いてしまったからです。共同生活自体は楽しいものの、学生の身には辛い現実が立ちはだかっていて……。

感想

初心に返った雪女さんは、恥ずかしがりやです

身体から冷気を発する、汗や涙が凍る。そんな子が側にいてくれたら、暑い夏も快適に過ごせそうです。ところが当の本人は、そうも言っていられない。今回のエピソードは、そんな雪女ちゃんの苦悩からスタートします。前回の検証で、雪女の性質が他人を傷付けるようなものではないと理解できた雪が、今度は自分の能力を向上させた上で、思うがままにコントロールできるようになりたいと考えます。中学生までは涼しい雪国で暮らしていたがために、そういった考えが浮かばなかったのだろうかと思わせる話です。

そこで雪は高橋先生に相談を持ちかける訳ですが、ここで再び高橋の悪いクセが前面に出てきてしまいます。学者気質の教師に、専門分野の話を振ったらこうなりますという状況。端から見ているぶんには笑えるのですが、当事者としてはたまったものではないでしょう。予期せず恥ずかしい思いをする羽目になった雪と、思考の淵にどっぷりと浸かり込んでしまったせいで、生徒が恥ずかしがっているのに全く気付けない高橋とのやりとりに、思わずクスリとさせられます。

そうこうしているうちに、いよいよ夏がやって来ました。日差しの中での授業に、早速バテバテになるひかりと雪。デュラハンの京子は夏に弱いなどといった弱点はないようですが、そんなことよりも注目すべきは彼女たちの体操着姿! まさかのブルマ、ブルマです! すぐに着替えてしまうので一瞬の輝きでしたが、制服以外の可愛い亜人ちゃんたちが見られたことは、大変喜ばしいことであると愚考するのもであります。さらに、京子が夏なのにベストを着ている理由もクるものがありました。そうですね、スイカだと大変ですよね。普段から頭を持ち歩いているだけあって、鍛えられているせいなんでしょうか。素晴らしい成長具合であります。

夏といえばプール、プールといえば当然水着!

ついに来ました、待望の水着回! 競泳水着、スクール水着、ビキニワンピ。みんな違って、みんなカワイイ。誰がどの水着を着ているのかは本誌をご覧いただくとして、ばっちり学園モノのお約束を守ってくれた作者様に敬礼! と、おふざけはさておき。強い日差しが苦手なはずのバンパイア・ひかりの希望により、授業のない土曜日に水遊びをすることになった亜人たち。今回は監督の高橋先生と三人娘に加え、サキュバスの佐藤先生もプールサイドに集います。

早紀恵をプールに誘ったのは、高橋でした。サキュバスの性質上、水着で泳いだりできないのではと気付いた彼は、学校のプールを短時間貸し切りにすることで、彼女が水辺で楽しめるように配慮していたのです。そんな高橋の気遣いを知り、改めて彼に惚れ直した早紀恵は、監督を彼女に任せて立ち去ろうとした高橋を「高橋先生には、催淫が効きにくいようだから大丈夫」だと言って引き留めます。当然、早紀恵は高橋にも催淫の効果があるとわかっていての行動です。今更誤魔化していたとは言えずに焦る高橋、迫る早紀恵。生徒をほったらかしにして何をしているんでしょう、この人たちは。

第4巻で重めの展開が続いていただけに、この巻でのこうしたお馬鹿なやり取りには、ほっと一息つけました。佐藤先生の残念ぶりも健在で、一安心です。そんな中、ついに早紀恵がTVで見た特集を言い訳にして、大胆な攻勢に出ます。しかし、相手が悪過ぎました。生徒と教師の間柄なら線引きしているのもわかりますが、早紀恵はそうではありません。やっぱり、高橋先生は女心がわかっていない。その上ニブい。そんな事実を改めて突き付けられました。

まさかの新亜人ちゃん? 超常があたりまえの存在

第5巻後半から、新キャラクターの女子大学生・陽子と、彼女が住むアパートに突然現れた座敷童子の「ざしこ」を中心に物語が進んでいきます。いきなり舞台が変わってしまったせいで驚きましたが、陽子が通っているのは以前登場した武蔵野理科大学。登場人物の中にも既知のキャラクターがいる上に、陽子は誰かと良く似ています。きっと、今後の柴崎高校に絡んでくるのでしょうね。教師と生徒が顔を合わせにくい夏休み対策かな? などと穿った推測を立ててしまいましたが、それはさておき。

座敷童子のざしこは、ここまで登場した亜人ちゃんの中でも際だった特徴を持つ存在です。まず、家の中から出られません。無理矢理連れ出そうとすると、ざしこ本人の意志とは無関係に、即座に室内へ戻ってしまいます。第4巻でデュラハンの首と胴体がワームホールで繋がっているという説が出ていましたが、ざしこの瞬間移動も似たようなものなのでしょうか。おまけに、家主以外には姿も見えず、声も聞こえません。他の娘たちと違い、ファンタジーに寄り過ぎている気がします。もしや、座敷童子は亜人とは異なる存在なのでしょうか。

さて、そんな座敷童子に関する伝承は、宿った家に幸福をもたらすというものでした。ごく一般的な認識では、運の巡りが良くなるとか、家族が無病息災で暮らせるなどといったところでしょうか。しかし、陽子はざしこと暮らす中で、具体的な「幸福」を感じたことがありません。他人に見えないだけで、食事その他諸々の生活費がかかるからです。社会人ならまだしも、一人暮らしの学生に子供を養えというのは酷な話です。けれど、そんな生活の中で、陽子は確実に良い方向へ変わっていました。作者様は、このあたりの見せ方が本当に上手です。座敷童子がもたらす幸福とは何なのか、綺麗にまとめられていたと思います。

まとめ

教師としての悩みを解決し、一歩前進した高橋先生。宇垣の狙い通りに一皮ムケながらも、相変わらず残念な佐藤先生。そんな教師たちや家族に見守られながら、夏を満喫する亜人ちゃんたち。座敷童子のざしこを通して、幸福とは何かを見つめ直した陽子。「亜人ちゃんは語りたい」第5巻は、新しい環境に戸惑いながらも明るく、楽しく前へ進んでいく、ハートフル学園コメディでした。要所要所にサービスシーンも加わり、どきどきわくわくしながら楽しめます。

今回の見どころは、なんといっても亜人ちゃんたちの体操着と水着でしょう。現実では絶滅危惧種となったブルマーに、お色気ムンムンな佐藤先生のビキニ姿。生徒たちのほうはともかく、早紀恵のアレに抵抗できる高橋先生は、実は聖人か何かなのではないでしょうか。さすがに「一緒に水遊び」は危険だと感じたのか一歩引いていましたが、それはそれで残念だと感じてしまうのは何故なのでしょう。高橋先生、あなたももう少し女の子たちとキャッキャウフフしてくれていいんですよ……? ガタイが良すぎるせいで、絵面が犯罪になりますけれども。

物語当初からの登場人物もそうですが、新たに加わった陽子と座敷童子のざしこの二人が、今後どうやってストーリーに関わってくるのか気になるところです。中でも陽子は、顔の造りといい、後半で明かされた名字といい、重要な位置づけになりそうな気配がむんむんと漂っています。これで全然関係の無いキャラクターだったりしたら、それはそれで驚きですが。そして、最後にちょっとだけ登場する宇垣・クルツの亜人課刑事コンビ。クルツの天然ボケっぷりが際だっていますが、もしかすると、彼は見た目相応の年齢だったりするのかもしれませんね。これらを含め、次の巻が楽しみになる一冊でした。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

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