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ヲタクに恋は難しい (1)

『ヲタクに恋は難しい』1巻はひょんなきっかけから付き合うことになったヲタクどうしの恋愛を描くラブコメディーです。イラストやマンガを投稿できるサイトで連載され、人気に火がついたことから書籍化されました。その人気はすさまじく、重版を重ね、オリジナルPVが作成されるなど話題にもなっています。

重度のゲーマーと隠れ腐女子が付き合ったは良いものの、お互いに恋愛に不慣れなことから様々な問題にぶつかるのが特徴で、見ていてじれったくなる場面が多いのが特徴です。また、ヲタク特有の事情などにも触れられるため、マンガ好きにとっても共感できる部分が多くなっています。

ポイントになるのが同人誌即売会など比較的ディープな内容にも踏み込んでいくことです。オタクではなく、ヲタク表記が使われるようにライトなマンガ好きなどは置いてきぼりになる可能性があります。知的好奇心が強い人にとって見れば非常に面白い情報が詰まっているものの、若干読み手を選ぶ点には注意が必要です。

あらすじ

男同士の恋愛などを好みながらも世間的には趣味を隠している隠れ腐女子の成海は、転職先で学生時代のオタク友達だった宏嵩と再開します。周囲に対してオタク趣味を隠しておきたい成海ですが、その理由は恋愛の邪魔になるからと言うもので、特にそれが気にならない宏嵩とふとしたきっかけから付き合うことになります。

一応社内でも腐女子を隠そうとする成海ですが、気がつけば先輩形もオタク仲間であることがわかり、職場の関係にも恵まれる形になります。しかし、恋愛よりも趣味を優先しがちなカップルなため、セクシー展開などには発展せずにどことなくしまらない感じで物語が進行していきます。

宏嵩は宏嵩で非常にマイペースなため、関係をすすめるフラグを無意識につぶしてしまうことが多く、結果としてコメディーにしかならない状態です。果たして二人の仲は本当に恋人と言えるまでに発展するのかどうかが1巻の内容になっています。

感想

見た目は良くても中身が残念な二人のラブコメディー

『ヲタクに恋は難しい』の登場人物は美男美女ぞろいです。主人公である成海と宏嵩のルックスがよいだけでなく、主要登場人物である先輩二人のカップルも見た目がよくなっています。マンガではありがちなこととは言え、うらやましい限りです。ただ、残念な部分が非常に多いのも特徴になっています。むしろ残念な二人の、残念なラブコメディーがメインのストーリーになるため、察しが悪かったり恋愛慣れしていないところがキャラクターの魅力にもなっているのです。

成美は美人ですが、仕事面での能力が低く、良く仕事を溜め込んでしまいます。趣味の活動をするにしても要領が悪いため、結局宏嵩にサポートしてもらう形になるケースが非常に多いのです。成海の趣味の活動は主に男性同士の恋愛を書く作品作りのため恥ずかしくて死にそうな目にもあうわけですが、間に合わなかった場合はもっと悲惨なことになるため涙を呑むことになるのです。しかも、男性と付き合った経験が少ないため常に臨戦態勢にはなれず、チャンスをフイにしてしまうこともあります。

宏嵩は宏嵩でマイペース過ぎて自分がチャンスを掴んでいること自体も気づかないタイプです。あくまで成海と一緒にいることを優先するものの、恋愛の進め方自体が良くわかっていないのです。肝心なことをいわないためすれ違いになってしまうことも多く、天然からラブコメ展開のきっかけを作る人物でもあります。とはいえ、仕事自体はできる人間であり、見せ場を作ることもあります。ただ不発になる回数があまりにも多いため、どうしても残念になってしまうのです。

ヲタクがニヤニヤしたり、共感できるネタが非常に多い

もともとイラストやマンガを投稿出きるサイトで連載されていたこともあり、非常にコアな層を狙ったネタが多くなっているのも特徴です。具体的にはゲーマーあるあるや同人作家あるあるなどが盛り込まれており、もともと二次創作界隈などになれていないと戸惑ってしまう用語や習慣も多いのです。宏嵩が現実で話す言葉よりも、スマホの無料通話アプリの方が饒舌に見えることなどもその一端です。コミュ症気味の人が多いオタク界隈ではよくあることなのです。

オタクではなく、ヲタク表記なのも作品のディープさを示す記号の一つです。なにせ成美はデートの予定よりもイベントの予定を優先してスケジュールを立てる人間です。イベントが先にあり、その隙間にデートをねじ込むのです。準備が間に合わなくなるなら恋人の手も借りるほどです。ちなみに、基本的に恋人の手を借りることに躊躇する成海ですが、宏嵩が有能すぎて手厚いサポートに感謝するケースが多々あります。宏嵩はマイペース名だけで非常に愛情深いキャラでもあるのです。

では、宏嵩に問題がないかといえば、気がつけば携帯ゲーム機を出してゲームを始めるだけでなく、成海に協力プレイをせがむ事も多い重度のゲームオタクです。時間がない状況であればタイムアタック感覚でゲームを進めてしまい、それを成功させてしまうのが有能さの表れともいえます。しかし、その有能さを恋愛面で生かせよと言いたくもなります。また、宏嵩自体はゲーマーでほとんどイベントに参加した経験がなく、それによって生じる成美との価値観のギャップも見所になっています。

実は先輩たちもオタクという職場環境

主役カップル以外にもオタクカップルが登場するのも本作の特徴です。特に成海と宏嵩の先輩達もオタクカップルで、1巻はこの二組のカップル以外の登場人物はモブ以外ほとんど出ないことになります。先輩カップルは片方が男装系のコスプレイヤーで、片方がメジャーな作品を中心にライトに楽しむヲタクとはいえない程度の二人になります。コスプレイヤーと言えば露出が激しく目立つキャラをしている印象がある人も多くなっていますが、実際は女性でありながら男性キャラを演じる人の比率が非常に多く、現実味を増す要素の一つにもなっています。

先輩二人の仲は表面上非常に悪く、実は内面では仲がよいという形で描かれています。喧嘩しつつも仲がよいという典型を抑えているため、成海と宏嵩のカップルとは違った恋愛模様を楽しめます。とくに幕間に入る番外編では気遣いが見える部分が多く、web連載だけで読むのと単行本で読むのでは大きくイメージが変わる可能性があります。後輩二人のカップルからすれば色々とうらやましくなるような二人になっているのです。また、酒を飲んだときの性格のギャップが激しいのもポイントです。

主要人物3人が重度なオタクで、オタクといえるか微妙な位置にいるライト層が1人と言う、職場環境的にうらやましくなる部分もあります。オタクをオープンに出きる職場と層でない職場は分かれるため、安心して趣味の話ができると言う意味では非常に恵まれた環境です。ただし、お互いに好むジャンルが違うからこそ意見が対立することもあるのもポイントです。先輩二人は特に意見がぶつかりがちなため、読者からすればまたかと言った感じになる事もしばしばあるのもご愛嬌です。

まとめ

『オタクに恋は難しい』はマンガ好きを中心にオタク層の共感を呼び、累計300万部を突破するヒット作に成長しています。巻数も順調に重ねていて、その人気ぶりが良くわかります。ギャグだけでなくしっかりとラブの要素を入れているのもポイントで、特に成海の感情や表情の変化は見所の一つになっています。何かしらオチがつくのはラブコメなので仕方ないものの、羞恥や戸惑いを表に出すことが多く、男同士の妄想エロは好きだでも純情な感覚は残しているのです。

宏嵩は女性オタクの理想の一部を形にしたような部分があり、特にイベント関連で有能さを発揮します。その分恋愛面が残念なギャップを前面に出したキャラであり、ある程度であってもマネできればモテに繋がる可能性もあります。しかし、残念さがそれを上回ってしまうと出会いもことごとく潰してしまうことも良くわかります。空気や雰囲気より趣味優先なオタクの本性的な悲しさも作品に折りこめられているのです。だからこそ共感を呼ぶと言う話もあります。

同人誌即売会などディープなイベントの前後についての描写もあるため、それこそそういった界隈になじんでいる人からすれば非常に楽しめる作品でもあります。一方で、ライト層になると用語がわからないことが多くなるため、ある程度用語を調べた方が楽しめるようになります。調べる用語がなければ、すでに立派なオタクといえる可能性が高くなるのです。細かいネタなども豊富に織り込まれているため、ネット上の造語などに詳しければさらに楽しめるはずです。また、ネットスラングで好意を伝えようとする場面もあるからこそ、さらに残念さが引き立つのです。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

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