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深海魚のアンコさん(3) (メテオCOMICS)

まずは第3巻の表紙をご覧下さい。あれだけ尾びれを晒すのに抵抗していたアンコさんの変貌ぶりにやられてしまうでしょう。教室の端っこでアンコさんの尾びれに頭を乗せ「膝枕」ならぬ「尾びれ枕」を堪能する若狭が幸せそうです。

アンコさんと若狭の仲がますます良くなっていることが一目で分かるような表紙です。アンコさんの羞恥に満ちつつも許容している表情と若狭の安堵している表情が対照的な構図となっています。しかしこの…アンコさんかわいいですね。一通り堪能したら表紙裏を是非のぞいてみて下さい…!

第3巻の内容はアンコさんの沼津遠征を中心としてバラエティ豊かなものとなっています。セクシーシーンが多目なのでありがたいことこの上ありません。また番外編が2本と特別企画も2本ありお得な巻となっています。

あらすじ

地上で暮らす人魚は人魚薬によって尾びれを人間の足に変形させています。ですがビックリすることで足が尾びれになったりすることがあるのです。ではそのとき「パンツ」はどうなるのでしょうか…まさかノーパン…?そんな疑問に答えてくれる貴重な一本が掲載されていますぞ。

ある日アンコさんの幼馴染から連絡があり静岡県の沼津へと遊びにいくことになります。若狭、ベタ子、福田さんと共にアンコさんは幼馴染の「沖うるめ」さんを訪れるのですが…何とハンバーガーショップで働くことになるのです。

他にも色々なエピソードがあり、新任の美術教師による人魚愛に圧倒されたり動画投稿アイドルに力を貸したりとアンコさんに休む暇はありません。なお番外編ではサブキャラクターのストーリーが描かれ、特別企画として各キャラクターの簡単な解説をした「人魚図鑑」や連載前の読みきりも収録されています。

感想

ますます広がるアンコさんワールド

第2巻では山へ行き新しい人魚達と出会うことになったアンコさんですが、本作では沼津まで出かけています。最早学校を舞台とした萌え漫画という枠には収まりません。日常系漫画というと常に同じ面子で同じような事を続けるもので段々とダレていくのは様式美でもありますが、本作は常に新しい状況でイベントが起こる作りになっています。本作では沼津まで足を伸ばしているので読者は一体どんな展開になるのか予測がつかず物語に引き込まれるでしょう。

また新たなキャラクターもどんどん登場しますし、それぞれのキャラクターの特性もかぶることはありません。新任美術教師の「駿河深幸(するが みゆき)」さんやアイドルを目指す2人組女子高生ユニット「ダブル・ディーラー」の「右崎レイカ(うざき れいか)」さんと「左藤比目(さとう ひめ)」さんなど色々な人物が物語をより豊かなものにしてくれています。話が進むごとにキャラクター数が増えていくというのも本作の特徴です。

ただ舞台を拡大しキャラクター数を増加させていくということは話の濃度を薄めることにも繋がるものです。もちろんいつものメンバーだけで話を進めていくとマンネリの極地が待っているわけなので、バランスをどう取るかが難しいところと言えるでしょう。本作ではとにかく新鮮味を出すためか拡大路線に舵を取っているようです。そこで気になるのが以前に登場したキャラクターのその後ですが、これを番外編でカバーしているのは見事と言えます。短いストーリーですが鮫島さんや蒲谷木さんの生活を描いているのは読者にとって嬉しい点です。

全体的によりセクシーな場面が増加

基本的に『深海魚のアンコさん』はほんわかストーリーでサービスシーンもたまに見られる程度なのですが、第3巻ではなかなかたまらない描写が増えているように感じます。特に第18話「底から始まるアイドル活動」では読者の心の中に住む獣の叫び声を聞くことができるでしょう。女子高生とアイドルというワードに加え…全裸!という要素が加わるのです。ただ「全裸に萌えも何もないのでは」と疑問に思う諸兄もいらっしゃるでしょう。ですがこれ、ただの全裸ではありません。魚の生態の1つである「擬態」というギミックが加わることで味わい深い、コクと旨味のある萌えへと仕上がっております。

アイドルユニットのダブル・ディーラーのメンバーはどちらも底生魚に分類される魚をルーツとしてもっています。右崎レイカさんはカレイを、左藤比目さんはヒラメがルーツなのです。そしてカレイもヒラメも擬態が得意で、周囲の環境に溶け込むことができます。あることがきっかけで右崎さんはアイドルとしての自身を失い公園の砂場に擬態するのですが、それを見破る場面、これがえらいことになっています。スーパーセクシーなのです。

擬態は自身の細胞を回りの風景の色に溶け込ますことですよね。つまり服を着ていては擬態できないということです。つまり宇崎さんは…全裸で砂場に擬態しているのです!見破られたと分かった宇崎さんが顔を上げてこちらを見るときの浮かび上がるような体の稜線はセクシーそのものと言えます。そうした擬態能力に目をつけた若狭が2人にとんでもないことを提案し、2人もそれを受け入れることになるのです。アイドルと言えばライブ、ライブと擬態…一体何が起こるのかはご自身の目でお確かめ下さい。全裸という直接的表現を間接的表現にするという逆説的な効果により萌えポイントが1兆倍になっています。

アンコさんの成長が確認できるストーリー

引っ込み思案で恥ずかしがり屋さんなのがアンコさんのアイデンティティだったのですが、ストーリーが進むにつれ段々と他人を受け入れ自分を表現するようになってきました。第2巻の第12話「マーメイド・ナイト」では1人風呂場で謎の歌を歌っていたアンコさんでしたが、本当に歌が好きなようで本巻でも土手に誰もいないことを確認してから大声で気持ちよく歌い上げています。そして最終的には大勢の人の前で歌うことになるのですが、当初のアンコさん像からは考えられない成長ぶりです。

人前に出て自分を表現するということはそうそうできることではありません。まさかの風呂場での歌が伏線になっていたとは誰も気付くことはできなかったでしょう。また、幼馴染と沼津で出会うときにはバイトを経験し、初対面のお客さんの前で尾びれを披露するという行動も取っています。アンコさんはいつの間にか精神的に成長していたのです。それは読者にとって寂しくもあり嬉しくもありといったところかもしれません。日常的な漫画ですがキャラクターの成長も垣間見れるのは1つの魅力と言えるでしょう。

ただ成長したのは精神だけだったりもします。第21話「人魚の身体測定」では学校で身体測定が行われる様が描かれているのですが、アンコさんはぺたんこ、つまり貧乳です。そのため結構気分が沈んでいたりします。この「胸が小さいことを気にしている貧乳少女」というのは萌えの設定として鉄板と言えるでしょう。この恥じらいというのは言わずもがな貧乳を前提としていなければ成立しません。未来永劫この設定が受け継がれるよう祈祷しておきましょう。美少女の胸よ小さくあれ!

まとめ

アンコさんの世界がますます広がるのが第3巻です。もう学校生活を描いた漫画というよりアンコさんという存在を中心とした漫画という方が正しいかもしれません。魅力的なキャラクターも続々登場し、全体のキャラクター数は結構な数に上るようになりました。次々に新しい舞台で活躍するアンコさんの成長ぶりは目覚しく、人前で色々な表現をこなす姿は可憐で美しいものです。まるでわが娘の成長を見守っているような感覚に陥るかもしれません。

娘と言っておいてなんですが、セクシーシーンも増えるようになりました。特にアイドルの2人がもつ能力「擬態」を生かしたギミックは素晴らしい…実に素晴らしいとしかいえません。まさかカレイやヒラメにこれほどのポテンシャルがあったのか、と驚くばかりです。それから表紙や健康診断におけるアンコさんと若狭の関係が深まっている様子はとても良いですね。百合と友情に違いはあるのか、果たして境界は存在するのか、そんな問いを読者へと投げかけてくれます。

それから番外編と特別企画で過去に登場したキャラクターの話を描いてくれたことは読者冥利に尽きます。特に鮫島センパイの話や新規カットはファンにとってたまらんものと言えるでしょう。キャラクター数が多くなりつつある本作ですが、こうした形で各キャラクターを掘り下げてくれるとより愛着が沸くものです。また魚図鑑を模した人魚図鑑という試みも人魚と言う設定を生かした上手い企画と言えます。第3巻を読めばよりアンコさんの世界が好きになるでしょう。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8

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