深海魚のアンコさん(4) (メテオCOMICS)

ついに最終巻となりました。『深海魚のアンコさん』は全4巻なのです。メインキャラクターの4人に加えたくさんの人魚が登場し、これからってときに終わってしまいました。仕方無いことですししょうがありません。時代の流れとは厳しいものです。

ただこの第4巻、かなり重要なキャラクターが登場する充実した巻でもあります。最終巻にも関わらず多彩な人魚達が登場するので楽しみながら読むことができるでしょう。いつもと変わらず色々なことに巻き込まれながらアンコさんの日常が過ぎていきます。

その通り、アンコさんの生活は漫画が終わっても続いていくのです!漫画の連載が終わったからといってアンコさんワールドは不滅、決して消えることはありません。読者の心の中でそれぞれのアンコさんとその仲間達は息づいているのです。

あらすじ

ある日、アンコさんはど派手なギャル風人魚に絡まれることになります。ところがよくよく事情を考えて見ると絡まれたのではなく財布を届けられただけでした。そこからギャル風人魚の「扶坂華美(ふさか はなみ)」さんとのストーリーが始まります。

別の話では何とアンコさんの妹「堤灯(つつみ あかり)」ちゃんが登場します。小学3年生というロリ好きにとってストライクど真ん中なキャラクターで、大人びた言動をして若狭が翻弄されるわけです。もちろん読者も翻弄されてメロメロになってしまうでしょう。

そして最終話、若狭はアンコさんに関する衝撃の事実を耳にしてしまいます。どうもアンコさんは引っ越してしまうようなのです。果たしてこのままアンコさんはどこかへ行くことになるのか、友人みんなで海に旅行をする中で意気消沈している若狭はアンコさんに事情を聞くことになります…。

感想

まだまだ登場する新キャラクター

第4巻は『深海魚のアンコさん』の最終巻となりますが、まだまだ新しいキャラクターが登場します。先述した扶坂さんはミノカサゴをルーツにもつ人魚で、とっても派手な格好をしていて言動もギャルそのものです。堂々としたその姿は次第にアンコさんにも影響を与えるようになり「もっと堂々としていいんだ!」という自信を与えるようになります。ストーリーの後半では外来魚をルーツにもつ凶悪な面構えのガングロ人魚3人組に絡まれることになるのですが、アンコさんは勇気を振り絞って立ち上がるのです。ギャルの持つ特有の明るさが良く表現されている爽やかなストーリーとなっています。

第23話の「詣でる」ではお客の少ない神社へ赴くことになります。その神社の巫女さんとして働いているのがアカナマダをルーツにもつ人魚「赤生田 すみ(あこうだ すみ)」さんです。神社を賑やかにしようと若狭やアンコさんを含めたいつものメンバーが協力するようになるのですが、そんな皆に影響された赤生田さんが自分の出した「墨」を若狭に提供します。墨を活用しイカ墨焼きそばを作り販売することでより神社は繁盛するのですが、この「墨」がどこから出ているかを想像するとなかなか変態的でよろしい。実に、実によろしいのです…。

また、第25話「マイリトルビッグシスター」ではアンコさんの妹である灯ちゃんが登場し、いつものメンバーを振り回すことになります。そしてこの灯ちゃんはロリ好きな諸兄にとって急所を攻めてくるような言動をビシバシ繰り出してきて下さるのです。若狭というキャラクターに読者自身を投影することで幸せを噛み締めることができるでしょう。第4巻という最後の最後に灯ちゃんに会えて良かった、と思えるはずです。ちなみに本作に初めて登場するロリキャラだったりします。

軽々と変態の領域にするりと入り込める

赤生田さんの「墨」について語らなければなりません。まず人魚の体液を混ぜて焼きそばを作り食べる、というだけでも十分に変態的なのですが、この「墨」がどこから出ているかを知れば私達は次のステージへと歩みを進めることができます。是非アカナマダの墨がどこから排出されるのかを知って頂きたい…調べましたね?知りましたね?そういうことです。神社の人たちは赤生田さんのピーから出てくる墨を絡めた焼そばを食べ、赤生田さんは冷や汗をかき赤面しながらその光景を見ています。この状況が変態じゃなかったら何なんだって話ですよ。最高じゃないですか。

次!灯ちゃんが暴走してます。若狭の助力を求めようとするときに短いスカートをの裾を持ち上げてちらつかせながら「(協力してくれたら)尾びれみせてあげる」なんて言われたらそりゃ協力するしか無いでしょう。顔を赤らめながら誘惑するその姿は正に魔性の女!最早子供などではありませぬ。あな恐ろしや有難や…。そしてストーリー後半にもまた今度はもっと強烈な誘惑をしてきます。めっちゃいけない子なんですよ灯ちゃん。実に…実にありがたい。読者は知らぬまにドンペリを空け乾杯している自分に気が付くでしょう。

このように本作は一見ほんわか日常漫画のようでいて随所に変態的なストーリーが組み込まれています。「それってどういうこと?」という疑問には「最高ってことだ!」という答えが相応しいでしょう。もちろん直接的なエロ表現は一切無く、やはりパンチラ1つ存在しません。ですがそのような表現が無くとも変態性はいくらでも描く事ができることを本作は証明しているのです。やはりエロスというのは精神的な要素が強く肉体は余り関係が無いのだろうか…とそんなことを考えさせてもくれます。もしピー好きなら赤生田さんを、ロリ好きなら灯ちゃんの姿を拝み倒しておきましょう。

アンコさんの物語を締めくくる暖かなラストシーン

本作はアンコさんの成長物語でもあります。本巻ではギャルに影響され堂々とした姿を見せてくれますし、神社でも誘引突起を生かして活躍する姿を見ることができるでしょう。また妹である灯ちゃんの前では自然とお姉さんとして振る舞いますし、家に友達が来て少しワクワクしてたりもします。アンコさんは友人に囲まれてこれからも楽しい学校生活を送ることができるでしょう。そんな中で迎える衝撃の最終話、一体どうなるのか読者はやきもきしますが暖かいラストシーンで本作は締めくくられます。

本作の裏主人公、もしくはストーリーのキーパーソンとして若狭はこれまで大変な活躍を見せてきました。もし若狭がいなければアンコさんが行動をしなかったであろう場面は豊富にあるので、本作にとっての最重要人物と言えるかもしれません。そんな若狭もアンコさんと付き合ってきて深い愛を育んできました。それは言葉では表現できないほどのものなのでしょう。それが同性に対する友情なのか異性に対する愛情なのかは本人も分かっていないのかもしれません。ただ言えることは「この2人はこれからも一生付き合っていくんだろうな!」ということだけです。

アンコさんの世界はこれで一旦終わりです。もちろんそれは書籍としての世界が終了したというだけに過ぎません。いつまでも私達の心の中にアンコさんは生きていますし、決してどこかへ行ったりすることは無いのです。こうしたほんわかした漫画を読了すると読者は冷たい荒野やツンドラに放り出されて心に穴が空いたような気持ちになるものですが、本作の裏表紙のカバーを外してみてください。それを見れば「ああまだアンコさんの世界は続いているんだな」と確信できるはずです。

まとめ

世にはたくさんの萌え漫画や日常漫画が登場するようになりました。その中でユニークな輝きを放っている作品が本作『深海魚のアンコさん』なのです。人魚が人間社会に溶け込んでいるという設定もさることながら、それを違和感無く作品世界として成立させている構成は見事と言えるでしょう。またできるだけ合理的に説明がつくようにストーリーが作られている点も魅力です。また、それはキャラクター達がそれぞれ独立して自分の考えの下で行動しているように表現されているからに他ならないでしょう。

キャラクターに理性があることでその行動も合理性を求めるようになるのです。決して「萌え漫画にありがちな舞台」や「日常漫画にありがちな展開」を優先して描いていません。登場キャラクターである彼女達ならどう考えどう行動しようとするか、ということを優先しているように感じられます。特にそれがひしひしと感じられるのが若狭の行動です。人魚、もといアンコさんに対する献身的な言動は若狭にしか実現できないことばかりと言えるでしょう。彼女達は紛れもない一つの存在なのです。

一つの世界が終わりを迎えたとき、読者の心には彼女達の思い出が残るのみです。ですが「例えばアンコさんがこういうことに出くわしたらどうなるかな」とか「若狭が喜ぶことは何だろう」と考えることは自由で誰にも邪魔されることはありません。これからの物語が紡がれるとしたら、それは読者の心の中で紡がれることになるのです。全4巻というコンパクトな作品ですが、読み終わったあとには充実したアンコさんワールドが心の中に築かれているのを感じるでしょう。最早私達の心の中に彼女達は住んでいるのです。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8