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ラブひな(1) (講談社コミックス)

1998年から週間少年マガジンで連載され、多くのマンガに影響を与えた萌え系マンガの金字塔「ラブひな」。ラブひなは典型的なハーレム系ラブコメディでありながら、「東大の合格を目指す」という珍しい最終目的を持った作品です。

単行本1巻では、主人公の浦島景太郎が、美少女たちの暮らす女子寮ひなた荘に引っ越してくるところから物語が始まります。祖母の経営する旅館でゆっくり受験勉強をしようと思っていた景太郎ですが、旅館は知らないうちに女子寮として改装されていたのです。

美少女たちのなかに、ひとりだけ男が混ざる…という今や珍しくも無い設定ですが、この設定をラブコメの定番として広めたのは、今思い返してもラブひなだったのではないでしょうか。今回はそんなラブコメの元祖的存在、ラブひなの記念すべき第1巻のレビューをさせていただきます。

あらすじ

子供の頃、名前も覚えていない幼馴染みの女の子と「大きくなったら一緒に東大に行こう」と約束し、それを守るために受験勉強を続ける主人公・浦島景太郎。

しかし景太郎の成績は振るわず、偏差値は48、二回も浪人生活を繰り返していた。そんなある日、景太郎は静かな環境で受験勉強を行うため、祖母の経営する旅館「ひなた荘」に引っ越してくる。ところが久しぶりに訪れたひなた荘に祖母の姿は無く、変わりに5人の美少女が住んでいた。

なんと、ひなた荘は数年前に女子寮として改装されていたのだった。落胆して出ていこうとする景太郎だったが、そこへ「管理人になるなら、ひなた荘の権利を全て譲る」とのFAXが届く。住む場所に困っていた景太郎はこれを快諾、管理人として女子寮に住み込み、東大合格を目指すのだった。

感想

ひたむきに東大合格を目指す景太郎に美少女たちは心打たれていく

最初に景太郎がひなた荘を訪れたとき、美少女たちは景太郎の存在を拒絶します。東大浪人生の景太郎を「現役東大生」だと勘違いしたために、一度は入寮を受け入れますが、その後勘違いであることが分かると再び拒絶。景太郎はひなた荘から追い出されてしまいます。ラブコメの主人公がヒロインたちから最初は嫌われるというのはよくある設定ですが、それにしても嫌われすぎです。

なにせ1話目のラストで、ヒロインたちから主人公の評価は「変態」「学歴詐称」「根暗」など散々なもので、肝心の寮も追い出されてしまうのですから。祖母からひなた荘の土地権利を受け継いだことでなんとかひなた荘に残留した景太郎ですが、その後もしばらくは嫌がらせを受けます。「こんな変態を女子寮に住ませるわけにはいかない」と、まぁごもっともな理由で景太郎追い出し計画を進めるひなた荘のヒロインたち。

しかし景太郎が本気で東大を目指していることや、その優しい性格にヒロインたちは惹かれていきます。特に、1話目では一番景太郎のことを毛嫌いしていたヒロイン・成瀬川なるは、悪態をつきながらも少しづつ景太郎と親密になっていきます。成瀬川もまた、東大合格を目指して勉強をに励んでいたからです。また、1巻では成瀬川以外にも、中学生の前原しのぶ、女流剣士の青山素子の2人の女の子が景太郎のことを受け入れ始めます。まだまだトラブルも多いのですが、ひたむきに東大合格を目指す景太郎に惹かれてゆくヒロインたちの心情にも注目です。

ダメダメな景太郎の成長ぶりを楽しみたい

ラブひなという作品は、ヒロインたちの可愛さもさることながら、主人公である景太郎の成長を眺めるのが楽しい作品です。東大合格を目指すなかで得た様々な体験を通し、景太郎はどんどん成長を遂げていくのですが、1巻では作中最も「ダメ」な状態の景太郎が見られます。RPGで言うならレベル1の状態の景太郎が、たくさんの女の子と触れ合う中で人間的にも成長し、モテモテになっていくまでの過程が楽しいです。1巻時点での景太郎の偏差値は48、志望校合格率はわずか2%…という、どう考えても東大合格にはほど遠い状態。

そんな景太郎の合格を左右することになるのが、ヒロインのひとり成瀬川の存在です。3話目で発覚するのですが、実は成瀬川は東大模試で全国トップを取っている秀才だったのです。少しづつ打ち解けていくなかで、成瀬川に勉強を見てもらうことになった景太郎は、それをきっかけに学力も急上昇していきます。とはいえ、この1巻での景太郎はまだまだダメダメの状態です。女子寮に住んでいるとは言っても、これまで女性と接した経験がほとんどない景太郎はトラブルばかり起こしてしまいます。

ここから景太郎がどのように成長していくのか、読者は親のような気持ちで見守ることになります。このような設定の萌え系マンガには、よくヒロインばかりが可愛くて主人公のキャラが立っていないという現象が見られます。しかしこのラブひなという作品において、主人公である景太郎の存在は必要不可欠です。「主人公が景太郎だからこそ成り立つ」という、よく練られたストーリーも必見です。

女子寮に温泉がついているという設定

ひなた荘が単なる女子寮ではなく「元旅館」だったという設定は、ストーリーにもしっかりと活かされています。元々は旅館だったひなた荘には、一見女子寮には不似合いなほど大きな露天風呂がついているのです。温泉なので、ヒロインたちが共同で入浴するシーンが自然に挟まれます。無理やりエッチなシーンを挟むのではなく、実に自然にお色気を挟むあたりが作者の赤松健先生の力量といったところでしょうか。

このようなキャラクターの見せ方は、その後も「ゆらぎ荘の幽奈さん」や「ニセコイ」など、有名なラブコメ作品に大きな影響を与えていると思います。「ゆらぎ荘の幽奈さん」なんかは特に、ほぼ「現代版のラブひな」という感じがあります。ラブひなは1998年から2001年まで連載されていた作品ですが、今読んでも古臭さを感じさせません。それは当時としては斬新だった設定の目新しさだったり、今でも多くの作品に受け継がれているラブコメのひな型としてのポテンシャルがそう思わせるのかもしれません。

まぁ、景太郎の趣味が「一人プリクラ」だったりと、ところどころに時代を感じさせる描写はあるのですが。それはそれでまた郷愁を感じさせるというか、舞台が元温泉旅館なだけに、古臭い「プリクラ」という設定が功を奏している感じもします。ちなみに少しネタバレになってしまいますが、1話目のラストで景太郎と成瀬川が二人で撮影したプリクラは今後の大切な伏線になります。このシーンが2巻以降のあるエピソードで活きてきますので、覚えておくと良いかと思います。

まとめ

多くのラブコメ系作品、萌え系作品に多大な影響を与え、今なおラブコメの金字塔として語り継がれるラブひな。連載当時に読んでいた方が今あらためて読み返しても古臭さを感じることは無いかと思いますし、まだ読んだことが無いという方には是非読んでいただきたい作品です。ちなみに私は中学3年生のころ友人から今回レビューした単行本1巻を借りてラブひなを読み始めたのですが、一発でその世界観に心奪われ、その日のうちには全巻買いそろえてしまいました。

今思い返せば、それまでスポーツ少年だった私にとって、あれが萌え系マンガのデビュー、もといオタクデビューだったように思います。ラブひなの単行本1巻には、成瀬川なる、前原しのぶ、青山素子、紺野みつね、カオラ・スゥの5人のヒロインが登場します。そのうち1巻に収録されているエピソードで素性が掘り下げられるのは成瀬川なる、前原しのぶ、青山素子の3人です。さすがに、ひなた荘にやってきたばかりの景太郎に3人ともが恋をするわけではありませんが、その片鱗はチラリと見え隠れしています。

景太郎の成長と、ヒロインたちの揺れ動く心が楽しめるラブひな1巻、かなりおすすめです。このレビューを書くにあたってあらためて1巻を読み返してみたのですが、やはり今読んでもかなり完成度の高い作品だと感じました。日常系のゆったりとした雰囲気とはまた違い、少年誌に掲載されているマンガらしくテンポよくスピーディにストーリーが展開していくのでサクサク読めます。気になる方は、まずは1巻だけでも読んでみて下さいね!

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8

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