やがて君になる(3) (電撃コミックスNEXT)

「やがて君になる」3巻は電撃大王連載でGL(ガールズラブ)を扱う作品の3巻目になります。そして、人を好きになれない人と、自分を特別視しない人が好きな人という少し歪んだ恋のお話でもあります。

相手に好かれたいと言う気持ちがあるのに、両思いになれば相手の興味の対象ではなくなると言うジレンマが存在するのがポイントです。だからこそ、二人の距離と関係を複雑で、危ういからこそ引き込まれるのです。

3巻は拒絶の感情が色濃く出るシーンがあることと、主人公以外の女性カップルが登場するのが特徴です。「うまくいっている」同性カップルの登場で、物語にも厚みが出てきます。

あらすじ

主人公侑は、2巻で燈子の過去を知り、燈子がなぜ完璧な自分を演じようとしているのかを知り、そばで見守ることを決意します。しかし、それは侑自身を好きになってはいけないという呪いにも似た決意でもあるのです。

侑は燈子のそばにいることで、「他人が知らない燈子」の姿をどんどんと知っていきます。心惹かれる部分があるものの、時折見せる明確な燈子の拒絶のサインを察してしまい、自分の本心を飲みむことも増えていきます。

求められる心地よさと、自分を偽らざるを得ないの寂しさや痛みは徐々に侑を蝕んでいきます。自覚無く傷ついていく侑とは裏腹に燈子はより積極的になっていき、葛藤は大きくなっていくのです。

感想

完璧な生徒会長像と恋する乙女のギャップはますます激しくなる

燈子を好きにならないと誓った侑ですが、燈子の侑にしか見せない油断した姿や、恋する乙女の姿を可愛いと感じるようになってきます。11話では燈子がお互いの距離感を確かめようと侑を名前で呼び、自分のことも名前で呼ぶように求めるシーンがあり、そこでちょっとした事件が起こります。

ところが、いざ侑に名前を呼ばれてみると、照れてしまっていつもの自分を装えなくなってしまうのです。一瞬はつくろえるものの、何度も呼ばれるうちに表情が崩れてしまい、どうしてもテレが出てしまいます。自分から攻めてくるのにいざ攻められると弱い燈子のギャップに、侑は好意を抱くようになるのです。

名前を呼ばれたときの燈子の盛大な照れっぷりは非常に可愛らしく、一方で関係がばれる可能性があることから侑が人前で呼ぶのをやめようかと考えるほどです。恋する乙女が相手と距離をつめていくうれしさを感じている場面であり、普段の完璧な姿が目立つからこそギャップが心地よいのです。

副会長・沙弥香(さやか)の思いもアクセントになっている

3巻では生徒会副会長である沙弥香の秘めた気持ちにもスポットライトが当たります。沙弥香は燈子に恋をしているものの、女性同士の恋であることに加え、燈子が抱えているものを知っているからこそ気持ちを伝えられずにいます。だからこそ、程よい距離を保ち、支えるスタンスを崩さないようにしているのです。

しかし、11話で自分の身近に女性同士のカップルがいることに気づいてしまいます。12話ではその真相を確かめるために行動をし、見事に的中させます。しかし、相手が女性同士のカップルであることをあっさりと教えてくれたことに衝撃を受けるのです。

燈子の気持ちを考えているからこそ、踏み込めないのが沙弥香の立場です。そして、気がつけば相談相手になっていた人生の先輩は、そんな沙弥香に敬意を示し、一杯のコーヒーをおごります。気持ちを肯定された沙弥香がコーヒーを飲む表情には少しの誇らしさが滲みでていて、非常に印象的なシーンになっています。

気持ちが膨らむからこそ台詞と表情のギャップが刺さる

侑と燈子の距離は、近づいたり、離れたりを繰り返します。侑から距離をつめてしまえば燈子は離れてしまいます。燈子はそんな侑を試している部分もあり、侑自身も距離を探っている状態です。だからこそ、一線に近づきすぎたときの拒絶感が強く印象に残り、侑がためらい、傷つく原因にもなっていくのです。

15話は、自分は平気だと思っている侑の表情にほころびが出るシーンがあります。生徒会長との仲を誤解している槙と話す場面があり、侑は自分が人を好きになれない人間であることをを打ち明けるのです。そして、槙も自分が人を好きになれない人間であることを話します。

共通点があり、話題が合うかに見えるような二人ですが、二人が『外』を見る表情には明確な違いがあります。自分は寂しくないと言う侑の表情には明らかに寂しさが滲んでいるからです。台詞と表情のギャップが激しいからこそ、侑の内面が大きく変わっていることが良くわかるのです。

まとめ

3巻は侑と燈子の関係が変化していくだけでなく、周囲の人間たちの気持ちも前に進んでいくシーンが目立ちます。伏線の張り方も非常に見事で、4巻、あるいはその先に綺麗に収束していくのが分かってきます。物語の全体像がおぼろげながら掴めてくる巻でもあるのです。

ただ侑と燈子の関係で完結するわけではなく、人物が相互に影響を与え合っているため意外なつながりも増えていきます。つながりができるだけでなく、物語に必要不可欠なピースとしてはまっていくことも大きな特徴です。

侑と恋のライバル(?)沙弥香が共闘するシーンや、お互いに探りあいになるシーンも存在します。何かと見所が多いだけでなく、幕間のおまけなども充実しているのもポイントです。恋をしたことがあるなら思わず共感してしまうシーンも入っているため、フィクションではなく等身大の物語として読めるのも魅力になっています。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

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記事担当:しらたま。