となりのロボット

「となりのロボット」は、人間そっくりのロボットに恋をした少女と、少女を好きになったロボットとの心の交流を描いた百合漫画です。成長する女の子の心の変化と、ロボットでありながら女の子を愛想と精一杯愛そうとする不器用な姿がが心に刺さる作品となっています。

特徴的なのは、ロボットの心を数学的に表現していることです。人間の心を安易に持たせるのではなく、心の変化を数学的な処理やプログラムによってあらわそうとしているのです。その根本原理は人間とほぼ同じで、表現画が変わっていても愛情を示そうと努力しているのがしっかり伝わるのです。

女の子がロボットとの恋愛に限界を感じ、距離を置く展開が入っているのもポイントです。ロボットは最新の実験機になるため、常に多くの研究者がデータを収集しています。あくまで現実の延長として描かれており、それぞれの利害によって対立する姿も描くことでリアリティを高めています。

あらすじ

人型ロボットである『プラハ』は人と同じ外見を持ち、ほとんど人と同じことができるロボットです。実用のためのデータ収集と試験をかねて人間社会で生活している彼女は、あるひ「チカコ」という女の子と知り合います。チカコと会った際にヒロちゃんと呼ばれたことから、ヒロちゃん、チカちゃんと呼び合う中になり、少しずつ交流を重ねていきます。

プラハは歳をとらないため定期的に転校をして名前を変えるなど、様々な工夫をしていますが、チカコからすればずっとヒロちゃんという状態であり、お互い相性で呼び合う関係がきます。しかし、年齢を重ねたチカコはヒロに恋愛感情を抱くようになり、様々なアタックを仕掛けるようになるのです。

ヒロはテスト用のロボットであり、チカコのアタックに正直に答えられるほど高性能といえる状態ではありませんが、自分のできる範囲で対処しようと努力を始める形になります。一方で、研究をする人間からすれば、チカコの愛情にこたえようとするヒロの姿は異常な状態です。研究上のトラブルになりかねないことから研究者同士の意見も割れ、二人の関係にも影響を及ぼすようになるのです。

感想

百合SFの金字塔といえるような作品

異種族と人間の恋を描く作品は多くありますが、ロボットとの恋をテーマに置いた作品はまれです。ロボットになる前に人間だったなどの設定があることが多く、純粋にロボットとの愛を描いても脇役同士ということが珍しくないからです。完全な人型で心を持っている状態でなければ難しいというのが大方の見方であり、となりのロボットはその常識とも思える壁に挑んでいった作品なのです。現代科学の延長でロボットの姿を書いているのも特徴で、再現が不可能ではないと思わせる要素が多いのもポイントになっています。

ロボットと人間との恋愛でさえ難しいテーマであるのに、ロボットを女性型にし、チカコも女性にしてしまったのも特徴です。しかし、同性同士の恋愛にすることで性的なニュアンスをおさえ込むのに成功しているのもポイントで、性的な印象を薄れさせることでより登場人物の心理に迫ることに成功しています。一方で、女性は女性として触れ合いたい問い気持ちもあるため、それがトラブルの元になるなど巧妙にストーリーに織り込まれているため、不自然さを感じさせないのです。

チカコが成長するにつれ、自分の中のヒロへの想いが変わっていく姿も丁寧に書かれています。最初は優しいお姉さん程度だった間隔が、段々友人に近い感覚になり、好意が目覚め始めるのです。特にきっかけがあるわけではなく、流れの中で自然に書かれていて非常に好感が持てます。ヒロ自身のロボットのできる範囲で精一杯の愛情を帰そうとする姿も印象的で、近年まれに見る質の高い百合作品になっていて、金字塔レベルの丁寧な心理描写が魅力的な作品になっているのです。

女の子の成長と心情の変化が非常にわかりやすい

となりのロボットの魅力の一つが、繊細なイラストと丁寧な画面構成です。人の心情を丁寧に描いているだけでなく、それを効果的につ与えるための画面構成にも気を配っているのです。特に魅力的に移るのが、チカコの成長です。一番幼いころから時間が経過していき、最終話では約20年の年月が過ぎている状態になります。子供のころの天真爛漫さやいたずら好きな女子高生の状態など、それぞれ魅力的な瞬間を各話に配置しているのです。

チカコの身長や髪形の変化を楽しめるのもポイントで、それぞれの愛情表現の方法にほほえましさを覚えるシーンもあります。チカコからすればヒロはロボットの幼馴染であり、最も心の許せる存在なのです。一方で、恋愛対象として認識し、様々な行動をとるにつれ、ロボットとしての愛情表現に戸惑うことが増えるようになります。見た目は人間であっても様々な行動の加減はプログラムや計算で成り立っています。人間と同じ愛情の返し方はできないため、そのギャップに悩んでいく形になるのです。

気持ちの変化が大きい分、感情変化が豊富で、様々な表情を見せてくれるのもポイントです。ヒロがロボットであり、感情を表現できない分、ヒロインであるチカコが人間の感情や表情、人間らしい魅力を表現する体現者になっているのです。表情の書き分けがうまいだけでなく、そこにいたる流れも非常に丁寧に描写されています。一人の女性の成長物語としてみる事も可能で、年齢ごとの魅力を1冊で把握できるようになっているのです。女性目線から女性の魅力を丹念に描いるのがポイントと言えます。

ロボットとしての愛情表現を丁寧に描いた作品

となりのロボットのもう一つの軸は、ロボットの愛情表現です。人間のような機能を与えて感情や表情の変化をさせるのは、非常に簡単な手法です。しかし、あくまで現実技術の延長として描かれているため、現代技術で再現ができない事は極力排除するように作られているのです。もちろん、それでもオーバーテクノロジー名部分はありますが、あくまで科学と言う地盤を大切にしていて、AIが愛情を表現するのであればどうなるのかを丹念に描いているのです。

AIが物事を表現するためには、プログラムが必要になります。しかし、機械学習など、成長するAIが誕生しているように、ヒロも状況に応じて学習していくのが特徴です。しかし、愛情を数字化することは難しく、人間が教える事も困難です。そんな中、ヒロはチカコから向けられた好意を受け入れるために何をすれば良いのか、必死に探っていくことになるのです。あまりに処理情報が多すぎてオーバーヒートしてしまったり、バッテリーが切れるなど、失敗を重ねる人間らしさも垣間見えるのも特徴となっています。

ポイントになるのが、表現は違うもののヒロのプログラムの深いところにチカコが存在することです。なぜそこまで高い優先順位になるかは不明で、あくまでヒロが学習した結果として表現されるのです。ヒロを管理する科学者たちも優先事項として特に設定していないため、ヒロがチカコとの交流ではぐくんだ、感情に近い大切なものになっているのです。ロボットは人間とは違うものの、学習によって優先順位や様々な価値の上下を決めていきます。ロボットにはロボットの大切さの表現があり、感情でなく数式的な愛情で表現をするとい難しい描写を自然に登場させているのです。

まとめ

となりのロボットは人間との心情と、ロボットの学習という二つの面で恋愛感情を描いた作品です。人間は経験によって成長する生き物であり、形は違うもののAIが学習を重ねて成長をするのも基本は同じです。それぞれの形で愛情を育む形を対比させながら両立させるという稀有な作品で、女性心理の描写として非常にレベルが高くなっているのです。百合漫画が好きなら文句なしでおすすめで、百合萌えの心をくすぐる作品になっているのです。

チカコの成長が描かれた作品のため、幼女から、成長した大人の女性まで様々な姿を見れるのもポイントです。同じ人物で多彩な面が見れるのも萌えポイントの一つです。子供のころはリボンをしていたのが、成長するにつれリボンをしなくなるなど、ファッション面の変化も楽しむことができます。ヒロはボーイッシュな外観で外見に変化がないものの、顔立ちがきれいで中世的な魅力もあります。服装によっても大きく印象が変わるため、服のデザインやバランスもあわせて楽しめるポイントです。

ロボットやプログラムに対する考察も多く入っていて、SF好きでも納得できる内容になっています。ヒロは人型であり、ほぼ人と同じことができますが制限も多いのです。その制限を持った状態で、いかに精一杯気持ちを表現しようとするかという行動が、胸を打つ百合漫画にもなっています。ギャグ的な描写多少あるものの、ストーリー性が高く、純愛方面の萌え漫画を求める人にはおすすめの作品です。1巻だけの完結ではあるものの、非常に濃密な時間を味わえるのです。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:しらたま。