ゾンビッチはビッチに含まれますか? 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスJOKER)

『ゾンビッチはビッチに含まれますか?』は、題名からもお分かりのように、おバカで(ちょっと)エッチなコメディ作品です。ラブコメということもできますが、本作はコメディ部分が非常にハジケており、どちらかというとギャグマンガ味の深い学園ものです。

この第1巻が発売されたときには、帯にこんなアオリ文が踊っていました。「女の子だってエッチなこと考えちゃうんだからねッ! で、でもそんなにエッチじゃない…ハズ…。」「ゾンビがビッチでゾンビッチ!!! なラブコメディ。」

いや、ゾンビがビッチでゾンビッチって、いったいどういう意味なんだよ! と思い手に取った私だったのですが、そこにあったのはホラーでも何でもなく、ただ、ちょっと悲しくてほろ苦い(そしておバカな)、少女の初恋の物語だったのでした。

あらすじ

帝東亜高校1年生の二階堂サキナは、片思い中の幼馴染・初野小春(コハル)に想いを伝えられないまま、トラックとの交通事故で死亡しました。しかし、事故の直前にコハルとのエッチな妄想をしていた彼女は、そのドキドキによって死後、心臓が鼓動を再開。

こうして、見た目は普通の女子高生と変わらないまま「生ける屍」と化してしまったサキナでしたが、でも、これだけなら恋の力で奇跡的な蘇生をした、というだけの話になるはずでした。しかし、彼女にはひとつだけ、周囲に知られてはいけない秘密ができてしまったのでした。

彼女の心臓はコハルとの情事によるドキドキで鼓動したため、サキナは、その後もエッチな妄想を定期的に行い、ドキドキを維持しなければ(心臓が止まり)身体が腐りはじめるという「ゾンビッチ」となってしまったのです。

感想

恋するゾンビガール、サキナの酷すぎる妄想

本作『ゾンビッチはビッチに含まれますか?』は第1巻から哀しきゾンビッチ、サキナの酷すぎる妄想が炸裂しています。本作は基本的にギャグマンガ・テイストです。そのためサキナも、ただふつうに妄想するだけではありません。サキナは生存本能によって、自分で望む望まざるにかかわらず、心臓の鼓動が弱ってくると、周囲の普通の状況や普通の言葉も、ありえないような間違い方で、エロいものとして認識してしまうようになるのです。

例えば、サキナに中間テストで敗北したクラスメイト(俺様系キャラ)が、今こそ「参考書」が必要だ、と言ったのをなぜか「乱交しよう」と聞き間違えたり、「英・国・数」すべてで屈服させてやる、を「A・扱く・吸う」すべてで屈服させてやる、だと勘違いしたりするという意味不明ぶりです。一人で勝手に勘違いを加速させて暴走していくツインテ「ゾンビッチ」であるサキナですが、周りから見ると単に赤くなったり戸惑ったりしているだけなので、とても可愛いのではないでしょうか。

本作は『ガンガンJOKER』で連載されていた全年齢向け作品であるため、それほどヤバい描写はありませんが、単なるラブコメだと思って手に取ると(そんな人がいたかはともかくとして)、サキナのエロ妄想シーンはかなり飛ばしているので驚いたり、逆にドキドキしていい買い物をしたなと思ったりと、さまざまな衝撃を受けるだろうと思います。しかし、どちらにしろ「まさかタイトル通りだったとは恐れ入った……」という読後感を抱くことは、おそらく間違いありません。

周囲の青春模様とサキナのギャップ

とにかく事あるごとにサキナのエロ妄想が暴走している本作なのですが、舞台設定は高校であり、エピソードの多くは高校生たちの日常です。主要な登場キャラとして、サキナの同級生や友人たちが何人か登場してきますが、エリート校的な様子なだけあってみんな性的なことには奥手です。奥手というか、ほぼ性的なことには無知(ちなみにみんな15、6歳なわけ)です。R-18な知識を普段から摂取し、意識しているのはその中でもサキナだけという状況です。

第1巻のエピソードとしては、具体的には期末テストの対策として参考書を買いに行く、ひとりでおしゃれなカフェに入る、みんなで初詣に行く、幼馴染と買い物にいってデート(?)っぽい状況になる、といった青春度数の高すぎるチョイスです。しかし、読んでいる側としては、いつそれをサキナがブッ壊すのかとハラハラして仕方がありません。いつサキナが内心ものすごいエロ妄想をしているとバレるのか、ドキドキせずにはいられないのです。

特にエピソードが進んでくると、単に勘違いしてしまうというのでもなく、心臓を動かすために自分でエロ妄想のネタを探し始めるという始末なのです。しかも、それはサキナが片思いしているコハルとのショッピング・デートの最中だったりします。正直、読者としてもかなりドキドキする展開でした。といっても、サキナは好きな人といっしょに生きたいという非常に純情な理由でゾンビとなったため、応援しないわけにもいかないのがツラいところです。

ゾンビッチが「萌え」を浄化する構造性

さて、本作に登場するサキナ以外の同級生たちは、性的にはとても純真であると前節で書きましたが、健全に育ってきた彼ら彼女らは未だやや幼く、歳相応の邪さを知らない高校1年生として登場してきます。エリート校のような描写もあるため、不良のような早熟さとは無縁なのでしょう。そんな中、ゾンビッチと化したことで思春期まっしぐらなサキナは、(半ば生きるためにですが)R-18の書物さえ読み込んでおり性的な知識を増やしている、周囲からすると異質な少女です。

作中の学園空間は、このサキナのエロ妄想さえなければ他の青春もの以上に、爽やかで得難い青春のただ中にあります。ですが、その中でサキナはちょっとしたワードやしぐさにエロを見つけ、妄想の餌食にしてしまうのです。これは、萌えマンガを読んでいる私たち(?)18歳以上の男性読者の、ある種精神的な鏡ともなっています(エロ同人誌というある種の邪な文化もありますね……)。ですが本作では爽やかな青春ものをサキナが読者以上に性的な目で見ているせいで、逆に読者は「おいやめろ! 俺たちの青春を壊すんじゃない!」と、サキナから作品の青春さを守ろうとさえしてしまうのです。

つまり『ゾンビッチはビッチに含まれますか?』は、サキナが萌えに含まれる「性的さ」や「邪さ」をギャグ・シーンとして引き受けてくれることによって、本作を読む読者が、より「きれいな」萌えを感じることができるように設計されているのです。ですが、それを逆手に取ることも可能かもしれません。『ゾンビッチはビッチに含まれますか?』は、サキナのエロ妄想シーンにツッコみを入れながら楽しむのもひとつのたしなみ方なのですが、逆に、サキナに感情移入して一緒にエロ妄想に浸る楽しみ方もあるのではないでしょうか。

まとめ

『ゾンビッチはビッチに含まれますか?』は、このように幼馴染のコハルに想いを伝える前に死んでしまい、死ぬに死にきれずに「ゾンビッチ」となったツインテ女子高生サキナが、仲間たちとの日常と青春の中で、絶対にバレてはいけないエロ妄想をガンガンしていくというブッ飛んだコメディ・タッチの作品です。キャラ同士の掛け合いも楽しいですし、サキナの妄想で会話がちょっとズレながらもバレずに進んでいくハラハラ感がたまりません。

第1巻の段階では、サザエさん方式でいくらでもエピソードが続きそうに思えますが、最後の引きで謎の影が登場してきます。「この特有の体温…間違いない」「見つけたわゾンビッチ」とその影は言います。基本的に連作短編やオムニバスでどこからでも読める第1巻でしたが、実は次巻からは長編ストーリーマンガになるのかも、と思わせるような終わり方になっています。なお第1巻には、連載化される前の読み切り版が2作品も併録されていて、お得感があります。

内容のことを色々と書いてきましたが、絵がとても綺麗です。表紙イラストや各話の扉絵を見ると、まさに正統派萌えマンガと言えるのではないでしょうか。萌えマンガの新たな地平に踏み出したい方、ふつうのギャグマンガには飽きてしまった方、そして何より美少女のエッチな妄想にハラハラしたい方にオススメしたい第1巻です。そんなわけで、今回はゾンビッチ第1巻のレビューをさせていただきました。未読の方はぜひ読んでみてください!

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

記事担当:Kon Posao