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ケイくんとアヤメさんがルームシェア(2) (アクションコミックス)

本巻は2巻ですが早くも『ケイくんとアヤメさんがルームシェア』の最終巻となります。良質な作品なのですが2巻で終了してしまうというところに漫画界の厳しさを感じます。だからといって無理矢理エンディングを迎える訳ではありません。物語は綺麗に収束していきます。

2巻では新しい登場人物としてアヤメのライバルでありご近所さんの『西青山(にしあおやま)かずほ』が登場し、より一層作品世界は深いものとなります。かずほさんには社会人として困った特性があるのですが、それも1つの魅力だったりするのです。

微妙な関係のケイくんとアヤメさんが最終的にどのようになるのか、本巻では色々と急展開が待ち受けています。中学生になったケイくんの思春期特有の悩みと、成長したケイくんを見るアヤメさんの視線…読者はどう展開していくのか目が離せなくなるでしょう。

あらすじ

中学生になり思春期を迎えたケイくん。中学校では思春期真っ盛りな男子達がエロな話題で盛り上がっています。またアヤメさんの同僚も同居しているケイくんが中学生になったということを聞きつけ「中学生男子なんてアレですよ。カタマリですよ」と謎の忠言をする始末。

そんなことがあり互いを意識し始めるも、互いにそうした心の動きを悟られたくないので何とかごまかし続けます。ですがあるときアヤメさんがアメリカ支社へ出張することになりました。寂しさの募るケイくんとアヤメさんの心中は複雑になっていきます。

メインストーリー以外にもケイくんの女装姿がふんだんに盛り込まれ、新キャラクターの「西青山(にしあおやま)かずほ」も登場し、ケイくんの同級生である屋島さんとその下僕の宮本くんも急接近することになる最終巻。物語は段々と着地点へと収束していくことになります。

感想

年齢差の縮まらないカップルの恋愛と結婚

ケイくんは13歳の中学生になりアヤメさんは30歳のOLとなりました。年を経ても両者の年齢差が縮まることは決してありません。常に17歳という年齢差は開いたままです。ですがケイくんは思春期を迎えたことでより性について関心をもつようになり、アヤメさんも中学生男子という存在を意識し始め、互いに恋心が芽生えるようになってしまいます。特に第1巻ではケイくんが奔放なアヤメさんの振舞いに一方的な恥ずかしさを感じていただけですが、本巻ではアヤメさんもケイくんを意識し始めるのです。

それまで17歳という年齢差から本格的な恋愛関係になることを想像すらしていなかった両者でしたが、ここに来てより具体的に想像するようになります。アヤメさんにいたっては、ケイくんがあと5年で18歳になり結婚可能な年齢になることを空想したりする状態です。また、それまでケイくんに全裸を見られても「ラッキースケベだねっ」ぐらいにしか捉えていなかったのですが、急に恥らうようになってしまいました。裸を見られて普通に恥らうアヤメさんを見てケイくんも照れてしまうといういじらしい雰囲気が漂うようになります。

ですがこうした年齢差と言うのは確かに大人になるにつれ違和感も無くなっていくものです。例えば17歳の人が0歳の人と結婚するのは奇妙ですが、60歳の人が74歳の人と結婚したからといって不思議なことはありません。ケイくんとアヤメさんは同じように年齢を重ねていき年齢差が縮まることはありませんが、それでも違和感は次第に消えていくのです。果たして両者の終着点はどこへと行き着くのか、それは読んでからのお楽しみとなります。

新キャラクター「西青山かずほ」から見える作品観

第2巻ではアヤメさんのライバルでありご近所さんのかずほさんが登場します。最初はご近所さんとして出会い、後に仕事上のライバルとしても出会うことになるのですが、互いに仕事中と普段の姿がまるっきり異なるためライバルだとバレずにご近所付き合いが始まるのです。そしてこのかずほさんは実は「腐女子」というボーイズラブ趣味のあるキャラクターだったりします。そして彼女にとってこのアパートはケイくんという美少年はもちろん、既に近所に住んでいるイケメンでありアヤメさんの同僚でもあるセイジがいる環境は天国なのです。

セイジはナルシストを突き詰めた社会人で、他人も自分もとにかく褒めちぎる性格の良い人です。そして腐女子のかずほさんは仕事中はエリートそのもののように振る舞い腐女子の片鱗さえみせずオンオフをきっちり分けています。この両者はいずれも自分の性癖と折り合いを上手くつけて社会に適応しているキャラクターと言えるでしょう。周囲から変人と蔑視されかねない性癖を有していても充実した人生を送ることができる、ということを示す象徴なのかもしれません。

本作の登場人物はいずれも少し世間からはズレているキャラクターで構成されています。しっかりもの過ぎるケイくんや少し暗い過去をもつアヤメさん、ナルシストで奇異な言動をするのに他人のために真剣になれるセイジ、腐女子をコンプレックスとしてもつかずほさんなど、誰も手放しで人生を謳歌できる性格ではありません。それを懸命に生きることでどうにかしようとしている姿に読者は心を打たれるわけです。特にかずほは素直なキャラクターなので、登場人物の葛藤を象徴するようなキャラクターと言えるでしょう。

ストーリー漫画を4コマ漫画の形式で表現した作品

『ケイくんとアヤメさんがルームシェア』はあくまで4コマ萌え漫画という体裁を保った作品ですが、それと同時にストーリー漫画でもあります。時間経過により登場人物の状況も心情も変化し終着点へと物語は歩みを止めません。4コマ漫画では永遠に続く日常を舞台設定とすることが多いものですが、本作は永遠性の無い不可逆性の日常を舞台とした作品となっています。本来ストーリー漫画であるべき舞台設定を4コマ漫画という形式で表現した作品なのです。

こうした試みにより通常のストーリー漫画よりもテンポの良い作品として仕上がっています。きちんとそれぞれの4コマでオチがつけられているため気が付くと1話を読み終わっているという感覚に陥るのです。ただそれはストーリーを深く掘り下げることができないという意味にも繋がります。コマ数の制約やコマ幅の制約により表現方法に制約が課せられてしまうわけです。ですがそれこそが本作が本作であるゆえん、特徴と言えます。テンポの良いストーリー漫画として楽しめる良作です。

『ケイくんとアヤメさんがルームシェア』は意欲的で面白い作品です。通常の4コマ萌え漫画よりもキャラクターに深みがあり、かつ時間の進行により登場人物の成長も楽しむことができます。年齢差やコンプレックス、それぞれの葛藤が行き着く先は開放感のあるほのぼのとしたものとなるでしょう。気軽に読むことができ恋愛や友情を上手く描ききった作品です。普通の4コマ萌え漫画になにか物足りないものを感じているならこの作品を読んでみて下さい。きっと気に入るはずです。

まとめ

著者のボマーン氏は『蒸し暑いからぬぐー』というなかなかエッチな1枚絵漫画の作者として有名になりましたが、経歴の長い漫画家さんです。2017年には自分のTwitterやPixivで発表していた『悪のボスと猫。』という作品が話題となり書籍化されることにもなりました。そんなボマーン氏の4コマ作家としての意欲作が本作と言えるでしょう。純粋な4コマ漫画にストーリー漫画性をもたせたらどうなるか、という興味深い作品です。

またエンディングの収まりの良さはとても心地良いものです。詳しくはネタバレになってしまうので述べられませんが、読後感は良いものとなるでしょう。ここまで綺麗にエンディングを迎えることができるというのはなかなかできることではありません。違和感の無いエンディングというのはそれだけでも気分が良くなるものです。近年のストーリー漫画では作品がオチないまま終わりを迎えるということも珍しく無いので、現在の読者にとってはむしろ新鮮な展開に映るかもしれません。

ケイくんとアヤメさんはもちろん、セイジやかずほさん、それから屋島さんとその下僕の宮本くんはどうなるのか、気になる方はぜひ読んでみて下さい。どの登場人物も最後は笑顔になってエンディングを迎えます。不可逆性は世界を永遠なものではなくしてしまいますが、決してそれは不幸な事ではありません。登場人物が成長するからこそ得られる幸せと言うものもあるのです。そうしたことを教えてくれる作品が本作となります。永遠では無い4コマ萌え漫画の世界をぜひ味わってみて下さい。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

記事担当:くもすい

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