くまみこ 1<くまみこ> (コミックフラッパー)

くまみこは萌え系のマンガ作品のなかでは少し異色な作品で、登場するヒロインは「雨宿まち」ただ一人です。萌え系マンガというと、少なくとも3人以上はヒロイン的な立ち位置のキャラクター登場するものをイメージしますが、くまみこはそうではありません。

1巻に登場するまち以外の女性キャラクターは小学生か、田舎に住むおばあさんくらいのものです。そのためこの作品の萌え系マンガとしての役割は、ほとんどまちが一人で担っています。くまみこという作品を端的に表すなら、田舎の村で巫女を務める少女「まち」と、田舎の村の守り神「ナツ」を見守るだけの日常系マンガです。

設定こそ特殊ですが、基本的には都会に憧れる少女のサクセス(?)ストーリーとして読み進めることができます。ゆるーい日常系作品がお好きな方にはおすすめのマンガですよ。

あらすじ

東北地方の熊出村には、古くから言い伝えがありました。その地方に住むクマは人間を襲わない代わりに、村の若い娘がクマと同居し巫女として仕えなくてはならないというものです。

子供たちには単なる言い伝えだと思われている「クマ井伝説」ですが、実は伝説は本当だったのです。その村の大人にとっては常識となっていることですが、村には今でも人語を話すクマのナツと、ナツに仕える巫女のまちが住んでいました。幼い頃からナツと共に暮らし、巫女というよりは兄弟のように仲良く過ごしてきたナツとまち。

そんなある日、もうすぐ高校生になるまちが「都会の高校に通いたい」と言い出します。しかし生まれてこのかた田舎で暮らしてきたまちに都会の生活は危ないと止めるナツ。こうして、どうしても都会に行きたいまちと、どうしても田舎に残ってほしいナツの駆け引きが始まったのでした。

感想

ミステリアスな設定に不似合いな程ほのぼのとしたストーリー

くまみこ1巻を読んでみての感想は、かなり特殊な日常系マンガだな、ということでした。読後感は「けいおん」や「よつばと」なんかに代表される日常系マンガを読み終えたあとのような感じなのですが、くまみこの場合は設定が少し特殊です。日常系マンガというと、登場人物のほとんどは何の変哲もない人間であるのが基本です。

実家がとんでもないお金持ちだったり、暗殺者の経験があったりしても、キャラクター自体は人間なのです。わざわざ「日常系」というくらいですから、日常的に存在する人間が物語の中心になるのは当然だといえるでしょう。ところがくまみこの軸になるキャラクター「ナツ」は、紛れもないクマです。しかも何故かペラペラと人語を話します。「喋るクマ」という非日常的な存在と、「中学生の巫女」という、いずれも非日常的な存在が織りなす特殊な日常系マンガがくまみこという作品なのです。

今後どのように展開していくのかはまだ定かではありませんが、1巻ではまちが「都会の高校に通いたい」ということを目標にストーリーが展開します。同年代も居ないような田舎に住んでいる少女が都会に憧れる、という話そのものは当たり前で日常的ですよね。そんな日本中どこにでもありふれているような当たり前のストーリーを、「クマ」と「巫女」が行うのが対照的で面白いところです。矛盾した表現になってしまうかもしれませんが、「非日常的な日常系」というのが、この作品の面白さだと感じました。

「守り神と巫女」というより「親子」のような関係性

一応設定上でまちとナツの関係は、「村の守り神」と「守り神に仕える巫女」です。しかし「都会に行きたい!」とごねるまちと、「都会は危ない!」と説得するナツの関係はどちらかと言えば思春期の娘と父親のようにも見えます。作中でまちとナツの完成を「兄弟のように育ってきた」と表現するシーンがあったのですが、きっと「いや親子だろ」とツッコんでしまった読者も多いのではないでしょうか。

第1話ではまちが幼い頃の描写があり、そのエピソードでもまちとナツの関係性を垣間見ることができます。当時のナツは人語を喋れるといっても体は普通のクマなので、冬になると冬眠していました。しかし幼いまちがナツの冬眠を嫌がり、ナツが冬眠に行こうとするたびに大泣きするのでナツは冬眠をやめてしまいました。この感じ、出張に行く父親を泣きながら引き留める子供と、根負けして転職してしまった父親のようにも見えませんか?くまみこ1巻は基本的にまちとナツの会話を中心に進んでいくのですが、その会話のほとんどがこうした「親子」のような会話です。

ナツがまちの都会行きに反対するのも、ただ心配しているだけでなく「まちが自分の元から離れていくのが寂しい」という感情が見てとれます。これも成長した娘を見て寂しくなった父親の心境とソックリです。個人的に、娘のいる身としてはナツがまちを引き留める気持ちはスゴク分かります。クマに「父親として」感情移入してしまうというのもおかしな話ですが、いつのまにかまちとナツを親子として読んでしまっている自分がいました。

まちがヒートテックを買いに行くエピソードがおすすめ

くまみこ1巻で最も完成度が高いと感じたエピソードが第4話「試練」と第5話「険しき道」です。この2話は前編・後編に分かれており、まちが一人でユニクロに行ってヒートテックを買うというお話です。ユニクロでヒートテックを買うことの何が難しいのか都会の人にはわからないかもしれませんが、田舎暮らしの人間にとっては文字通り「試練」なんですよね。

私も田舎で生まれ育ち、洋服屋に恐怖感を感じるタイプの人間なのですごく共感してしまいました。「ユニクロに着ていく服が無い」だとか、「SSSSS」と羅列されたサイズシールを貼ったままヒートテックを着てしまうあたりだとか、ユニクロあるあるすぎました。のんびりしたエピソードが中心で、ふふっと笑ってしまう感じのギャグが多いくまみこですが、ヒートテックのエピソードだけは読みながら爆笑してしまいました。これから1巻を読む方、特に田舎暮らしの方にはぜひ読んでほしいエピソードです。

ちなみにまちがわざわざヒートテックを買いにいくという「試練」にチャレンジしたのは、ナツに命じられたためでした。ナツは、「ユニクロで買い物すら出来ない人間が都会で暮らすことはできない」とごもっともな事を考えており、まちが本当に都会で暮らすというならユニクロに行ってくるよう試練を与えたのです。なんやかんや言ってもまちの一人立ちを支援するあたり、やっぱりナツの立ち振る舞いは「父親」のようだと感じます。果たしてヒートテックを暖房器具だと勘違いしているまちはユニクロにたどり着けるのか。ギャグマンガとしての完成度が高いこの第4話~第5話の流れは必見です。

まとめ

2016年にアニメ化されたことで話題になっていたくまみこですが、個人的にはマンガ版のほうが絵に温かみがあっておすすめです。私はアニメ版もマンガ版も両方見てみましたが、マンガ版の絵柄のほうがまちもナツも可愛いと思いました。都会に憧れるまちは、様々なイベントを通して少しづつ成長していきます。ただ、成長スピードはかなーりゆったりで、第1巻終了時点ではまだまだ都会に移住なんて程遠い状態です。強いて言えば、本気を出せばユニクロに行ける、くらいの成長は見せてくれます。

今のところサクセスストーリーというほどには大成功を収めていませんし、ラブストーリーやらバトルストーリーというほどの出来事も起こりません。くまみこのジャンルは、日常系マンガと萌え系マンガの中間といったところでしょうか。ヒロインに値するキャラクターは1巻の時点ではまち一人だけですが、それでもまちが可愛いので立派な萌え系マンガとして読めます。

ある意味、まちを引き留めようと必死なナツのほうが萌え系のような感じもしますが…どちらに萌えるかは読者次第ということで。ストーリー的には小難しいことを考えずに読める日常系の要素が強いので、読んでいて癒されます。「けいおん」なんかの萌え系マンガが好きな方は、きっとくまみこも違和感なく読めるのではないでしょうか。というわけで、今回はくまみこ第1巻のレビューをさせていただきました。萌え系マンガがお好きな方必読の一冊ですので、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8