お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!! (1) (アクションコミックス)

アニメ化時に妹・奈緒の兄への異常な愛情が話題になった「おにいちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!」の第一巻です。公式略称は「兄好」ですが、「おちんこ」と呼ぶ人も多いようです(僕はおちんこと呼んでいます)。僕はこの漫画を初めて読んだ時、「兄の性的嗜好を都合のよいようにコントロールする妹」という部分に衝撃を受けました。

エロ本やエロファイルを検閲して、操作して、兄が自分のような女の子に性的に興奮するように工作をしているんです。そのことでもう心を掴まれてしまったわけですが、変態コメディ部分に隠れて、物語の筋立てもかなりしっかりしているのです。

特に第一話、第二話の物語の状況設定は素晴らしいの一言です。エロコメとしても、元々エロ漫画も描かれていた先生で、かわいさとエロさが上手く両立しています。これだけ簡潔な線からエロさを引き出せるのは凄いと思います。さてさて、この兄と妹の少し歪んだ物語は一体どこに辿り着くのでしょうか?

あらすじ

高梨奈緒は兄修輔が自分に邪な感情を寄せていることを喜ぶ変態妹だった。修輔の留守の間に部屋を掃除することになった奈緒は、大量のH本と共に小さい頃のアルバムを発見してしまう。しかし、自分が修輔と一緒に写っている写真が一枚もないことに気付く。両親に問い詰めると、奈緒は事故で無くなった両親の友人の娘だということが明らかになる。修輔とは血が繋がっていないと知った奈緒は意外な反応を見せる。(第一話)(第二話)

友達二人と修輔と一緒に海に行くことになった奈緒。友達二人の胸に目がいってしまう修輔に対し、奈緒はむくれてしまうのだが……。(第三話)ある日奈緒のクラスに土浦彩葉という少女が転校してくる。修輔の帰り道で待ち伏せしていた彩葉は修輔の唇を奪ってしまう。(第四話)

帰宅した修輔の様子があまりにもおかしいことを心配する奈緒。修輔の心は、自分からエロ本を捨てるまでに悪化していた。(第五話)おかしくなった修輔を元に戻そうと、色々と試してみる奈緒だったが効果は見られない。それを見た彩葉は笑みを浮かべるのだった。(第六話)

感想

妹モノで義理は邪道だと言うが、おちんこには必然性がある! 

萌え業界では十年程前から妹ブームが続いていて、その勢いは終わりそうにありません。そして、妹モノ好きの間で論争が絶えないのは「妹は実妹であるべきか、義理であるべきか」というものです。義理派は結婚できるメリットを説きますし、実妹派はその背徳感こそ妹モノの醍醐味なのだと声高らかに叫びます。本作おちんこにおいて、妹の奈緒は義理です。でもご都合主義の義理じゃないんです。義理の妹であるという設定を使って、最高にラブコメが捗るように計算し尽くされた義理なのです。

あだち充の「みゆき」から連綿と連なる義理の妹物語の系譜の正統継承者なんですよ。まぁ、かなり現代オタク的な作品でもあるので邪道継承者とも言えるのかもしれません。マニアックにエロい描写が多いですからね。第二話で奈緒は自分が修輔の実の妹ではないということを両親から聞いてしまいます。そのことを知らないのは家族の中で奈緒だけだったんですね。修輔は奈緒の本当の兄になるために今まで必死にそのことを隠してきたのでした。

ここで奈緒はあるお願いを両親にします。自分が修輔の実の妹であると知ったことを修輔には秘密にしておいて欲しい、というものでした。なんかややこしい感じになってきましたね。でも、この設定が超いいんですよ。おちんこで一番の妹モノにおけるオリジナリティですね。難しい言葉で言うと「メタゲーム」とか言うやつですね。奈緒のここでの選択が素敵なラブコメディを生むのですが、同時に多くのライバル達に付け入る隙を与えることにもなってしまいます。

修輔と奈緒の少し歪んだ素敵な関係性 

何だろう? 導入のストーリーを話していたら、おちんこが物凄く素晴らしい作品のように思えてきましたよ。もちろん面白い作品なのですが、教科書に載るような漫画ではないです。断言します。妹の奈緒の愛情表現はあまりにも歪んでいますし、修輔のエロに対する耐久性のなさも相当なものです。第一話から奈緒は修輔を誘惑しまくっています。わざと抱き付いたり、パンツを見せたり、パンツを覗かせたり、お風呂に突撃したり、裸で抱き付いたり……。

よくよく考えると、この時の奈緒は自分は修輔の本当の妹だと思っているのですよ。それでいてのこの行動。やっぱり変態です。そして、奈緒の極めつけは兄の性的嗜好を操作しようとしているところなんですよね。H本は妹モノ以外は全部捨てようとしたり、修輔の枕の下に自分の全裸の写真を入れたり、修輔のPC内の秘蔵コレクションの巨乳を全部貧乳加工しようとしたり(奈緒は貧乳なのです)……。タイトルとは真っ向から対立しますが、これらの奈緒の行動は全部、修輔のことが好き過ぎるあまりにものなのですよね。

一方の修輔は修輔で歪んでいます。奈緒の体やパンツが気になって気になって仕方ないのですが、奈緒の本当の兄になると決心した手前、あからさまに態度に出すわけにはいきません。でも、耐えることができないから、バレないようにこっそりと見てしまう。もちろん、奈緒にはバレバレでニヤニヤしているわけなのですが。二人だけの関係をずっと見ていたいなとも思ったのですが、二人だけで放っておいたらかなり早い段階でくっついてしまいそうですよね。だから、早々に二人の関係に割って入る女の子が現れるわけです。

早速ライバルの彩葉が登場。この娘やってくれるぜ! 

登場したのは土浦彩葉という女の子です。なんかちょっとお嬢様っぽいキャラデザの女の子ですね。普通のラブコメだったらツンデレタイプに多いキャラデザでしょう。最初に登場する恋のライバルキャラというのはそんなに強くないことが多いのですが、おちんこでは違います。髪型が変わっていて、随分と大人になっていて修輔も気付かなかったのですが、彩葉は修輔の幼馴染の女の子でした。幼馴染――この言葉を聞いて、敗北確定ヒロインだと感じた人は、ラブコメに詳しい人です。ラブコメにおいて幼馴染は最弱です。ドラクエで最初に出てくるスライムみたいなものです。

ところがね、この彩葉さんは強いんですわ。帰り道の石段で待ち伏せをして、いきなりキスですからね。つうか、これ、ディープじゃないですか。しかも思いっきりち〇こ蹴りながら唇に吸い付いています。いきなり攻め過ぎです。情熱的過ぎです、彩葉さん。逃げるように家に帰ってきた修輔なんか、貞操を散らされた乙女みたいになっていますよ。完全に男女が逆です。ただ、そうなってしまったのも過去に修輔が犯してしまった過ちが原因のようなのですが。

第五話の最終ページでは、彩葉は「よかった・・・ちゃんと効果出てるんだ・・・・・・」とうっすら笑みを浮かべています。どうやら結構な食わせもののようです。あのキスも好き過ぎて……というだけではなく、練りに練った戦略っぽいですね。あのねぇ、女の子が戦略を持って男の子を落としにかかると物凄く簡単なんですよ。それが美少女となれば、赤子の手をひねるようにたやすいでしょう。彩葉の攻勢に対し、奈緒がどんな対抗手段に出るかに注目したいですね。

まとめ

アニメを見た時は、ギャグが面白いエロコメというイメージが強かったのですが、よくよく漫画を読み返すと物凄く考えられて作られていますね。奈緒と修輔の関係性なんか、真面目に書いたら純文学の恋愛小説とかになってしまいそうですよ。もちろん、下品であるからこそのおちんこで、だからこそ面白くて誰でも楽しめる漫画なのですが。奈緒と修輔の関係性はこれから巻を重ねるごとに効いてきます。後からじわじわと効いてくる遅効性のスパイスみたいなものですね。

本巻での即効性のスパイスは、奈緒と修輔の変態コメディでしょう。修輔の趣味嗜好と、その願いを叶えてあげる奈緒の姿は絵でみて気持ちいいですからね。えー、スク水ニーソとか。変態度で言えば、修輔のそれは思春期の男の子そのもので、ちょっとばかしその度が過ぎているという感じです。真に闇が深いのは奈緒のほうです。歪んでいてやっばいわぁ、と思いながらも奈緒のことを不快に感じないのは、その芯のところに「お兄ちゃんが大好き」というのがあるからだと思います。

世の中には「射精管理」という言葉がありますが、奈緒は直接修輔の射精管理をする類の妹ではありません。奈緒は、兄の性的嗜好を改変することによって、間接的に射精管理を行うという新しいタイプの妹なのです。作者の草野紅壱先生はこの作品が一般誌長編デビュー作らしいのですが、この設定を思いついた時「勝ったな」と思ったでしょうね。この作品はエンタメとしても優れているんですよ。彩葉というライバルが現れて速攻強力な行動を起こしたでしょう? こんなんどうしたらいいかわからないですもん。奈緒は絶体絶命のピンチに追いやられているんです。第二巻で奈緒の逆襲を見ることができるのか期待ですね。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:カオス