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上野さんは不器用 1 (ヤングアニマルコミックス)

『上野さんは不器用』は漫画家tugeneko氏による作品です。同氏はこれまで『彼とカレット。』や『まほろばきっさ』という作品を手がけてきました。いずれも萌えギャグ漫画的な作品で、本作も同じジャンルに属しています。

作者はユニークな画風の持ち主で、現代的でデザインセンスの高い絵を描くことを得意としています。曲線や直線を多用し、写実的というよりは記号的な要素の多い表現を好んでいるようです。コマの構図と言い構成と言い只者ではない香りがします。

また、本作のキャラクターたちも独自性の溢れる人物となっていて、他の漫画ではそうそう目にすることはありません。それから途轍もなくエロい状況を描いたりするのですが、不思議と下品さが無かったりします。本作は色々な点でユニークな作品と言えるでしょう。

あらすじ

舞台はとある中学校。超天才少女の上野さんは科学部の部長であり様々なエロっぽい発明品を作っては男性部員の田中に試させようとします。なぜなら上野さんは田中にぞっこんラブでどうにかして田中の気を惹きたいわけです。

ですが田中はどうしようもないほど鈍感で上野さんの思いに全く気が付きません。その鈍感さは恋愛ゲームの主人公以上で、というかむしろ異常なほどと言え、仙人か枯れた老人のようなリアクションしかしてくれないのです。

女性部員の山下さんも上野さんの恋愛を応援しているのですがなかなか上手くいきません。数々の驚異的な発明を使った上野さんの努力は実るのか、田中の鉄のような心は動くのか、みどころ満載のラブコメディーの開幕じゃい!!

感想

画風がエロ成分を変質させて高度なエロになっている

上野さんはあの手この手で田中にエロい罠をしかけていきます。例えば第一話ですが、究極の携帯型濾過装置「ロッカくん」を発明し自分の尿を濾過した水を田中に飲ませようとするのです。第一話から攻めてるのですよ。いきなり中学生女子の尿を差し出されるという非常にド変態な導入なのですが、何ともさわやかチックに描かれています。それはとにもかくにも画風がスッキリとしたデザインであるからに他ありません。写実的でないので直接的なエロの香りがしないのです。

ですがだからといって全てのエロが中和されるわけではありません。上野さんはかわいいですし実際にお出しされているのは紛れもない女子の尿(濾過済み)なわけです。状況としてのエロ成分はかなり高いと言えます。もしこれを写実的に描いたなら普通にエロ漫画となってしまうでしょう。ところがtugeneko氏の画風はデザインチックなものなので一定の品を保っているように見えるわけです。そのため女性であっても楽しんで読むことができるでしょう。ではただのエロくない漫画なのかというと、そうではありません。

エロという概念は決して肉感的で直接的な表現だけによるものではありません。抽象的で精神的なエロというものも存在し、正に本作はこうした概念、形而上的なエロを描いた作品となります。いえもちろん全年齢向けギャグ漫画でありアダルト漫画ではないのですが、そのエロ度数はかなり高いものと言えるでしょう。作中で見られる上野さんの数々の赤面シーンや間接的なエロ表現は変態紳士諸氏の心をときめかせてくれるはずです。肉感的ではない描写だからこそできる新しい形のエロを感じることができる作品となっています。

つい「おい田中ァ!」と叫びたくなるほどの田中

上野さんの思い人である田中は美男子でも不細工でもないごく普通の田中です。普段の振る舞いも実に普通の田中なのですが、ただ異常なほど色恋沙汰や性に疎いという特徴をもちます。免疫が無いとかそういうことではなく、ただただ色恋に対しての感受性が壊滅しているのです。色恋アンテナがへし折れているのかもしれません。上野さんの尿(濾過済み)を飲むよう勧められたときには「タイムタイム!汚いですよそれホントに!本当に!!本当に汚い!!」ともの凄い拒絶をかますわけです。

とびきりかわいい美少女である上野さんのおしっこ(濾過済み)に何らの反応を示さず「おしっこ=汚い」という常識的な考えの下で飲むことを拒否するという田中はもしかしたら普通の人なのかもしれません。確かにおしっこは汚いものですし。ですが田中は他の話でも上野さんの色仕掛けもとい変態仕掛けに動じません。スカートの中を真っ暗な状態にする発明「クマタンダー2号」の性能を証明するために田中にスカートの中を覗いてもらうときにも田中は動じないのです。

他にも田中は上野さんのケツを思いっきり叩いたり(何度も)太ももをしごいたり全身を嗅いだりするわけですが、全く何の反応も示しません。健全な男子であれば上野さんの誘惑はもう…興奮のるつぼと化すわけですが、田中は平気な顔で口をふにゃっとさせて「?」とさせるばかりです。そしてそんな田中の反応こそがこの作品をこの作品たらしめていると言えます。ド変態行為を行う上野さんに対して性のエネルギーが0の田中という構図は強烈な対比を生むことに成功し、読者は腹が痛くなるほど笑うことになるのです。

なんとも読みやすいデザインの構成

本作は変態の上野さんと普通の田中という対比が目立つ作品ですが、重要な点として構成の素晴らしさを挙げることができます。カメラワークと言い換えても良いでしょう。遠景、近景、俯瞰、ズーム、と読者が飽きないように視点が目まぐるしく変わり、かつ読みやすいように作られています。萌え漫画というと対話が多くなるため左右に人物を配置して同じような始点で物語が進行することも少なくないのですが、本作ではよくカメラワークが練られているのです。

例えば第二話冒頭の4コマは秀逸です。まず薬瓶のズームから始まり次に上野さんのケツのアップ、次に「ちょっとスカート覗いてるんじゃないでしょうね!」と叫ぶ上野さんの全景、そしてラストに無関心な田中と突っ込む上野さん、という構成になっています。4コマ漫画を1ページで表現したようなコマ割りとなっていますが見事としか言えません。上野さんの全景を描くときには縦長のコマにし、オチるコマは大きめとなっています。これはプロの仕業としか言いようがありません。というかプロでした。

また衝撃的な展開が起こる場合のことも良く考えられています。漫画はページを開きながら読むメディアなので同時に2ページが目に映っているので、右ページを読んでいる最中に左ページに何か起こっていたら分かってしまうものです。ですが本作ではそうした展開の多くが次のめくった先のページで描写されていることが多くなっています。ネタバレになるのでここで言うことはできませんが、ページをめくると田中の数々の奇行が繰り広げられているわけです。題材もよければ構成もよい、なんとも良くできた漫画と言えます。

まとめ

『上野さんは不器用』は恋する天才美少女である上野さんと恋愛感情が消滅している以外は普通な田中のラブコメディーです。次々に繰り出される上野さんのド変態ぶりは変態紳士に喜びをもたらすでしょう。そして田中の壊れっぷりに思わず「田中ァ!!」と叫びたくなるはずです。肉感的な描写は少ないものの間接的、精神的なエロ描写が多いので高次元のエロさを体験できる作品とも言えます。そのため品が良いので多くの方に勧められる作品に仕上がっているのです。

また、上野さんの仲間である女性部員の山下さんも魅力的です。一見おとなしい読書キャラクター的な存在なのですが、100円をくれれば濾過した尿も飲みますし大抵のことはしてくれます。またいざというときには強力に上野さんを守護するガーディアンとなり田中を威嚇したりするワイルドな一面も見せてくれるでしょう。また上野さんと田中を客観的に見ることができる第三者という立ち位置から的確なツッコミを入れてくれる貴重な人材でもあったりします。

果たして上野さんの恋は実るのか、田中に人間らしい恋愛感情は残っているのか、どう展開していくのかこれからが楽しみな作品です。キャラクターの設定はもちろんのこと、画風やコマの構成、カメラワークなど漫画作品としての見所も多数あります。完成度の高い漫画なので萌え漫画ファンならずとも読むべき一本と言えるでしょう。なお次の巻では新しくなかなかエロいキャラクターも登場するので楽しみにしていて下さい。まずはとにかくこの第1巻から『上野さんは不器用』ワールドを堪能していきましょう。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:くもすい

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