Pocket
LINEで送る

柘榴ノ地獄 1 (裏少年サンデーコミックス)

もともと妖怪ものや和風ホラーが好きで、書店などでも頻繁にチェックするジャンルでした。『柘榴ノ地獄』は書店で見かけた表紙とタイトルのインパクトで手にとった作品になります。

熟れた柘榴の実は甘ずっぱく、日本でも愛された果物です。一方で、熟れると割れるという性質から縁起が悪い果物とされ、家に植えるのは良くないといわれてもいます。

『柘榴ノ地獄』は不吉に不吉を重ねるようなタイトルであり、どのような地獄を見せてくれるのかというのが気になった作品なのです。

あらすじ

宿場町に住む蟻助は身寄りがない子供で、本当の親も名前も知りません。怪力の持ち主である蟻助は運び屋として生計を立てていて、不思議な力で病を治すゆゆ子のところに病人を運ぶのがひそかな楽しみでした。

ゆゆ子と蟻助はふとしたきっかけから心を通わせるようになりますが、ゆゆ子の人を癒す力は自分の命を削るものでした。ゆゆ子はやがて奇病にかかり、帝の手のものにさらわれてしまいます。

ゆゆ子を助けるために瀕死の重傷追った蟻助は、生き残るために自ら脳を破壊し、狂人としての力を手に入れようとします。蟻助は記憶を失いながらも辛くも生き延び、思い出せぬ過去と向き合うことになるのです。

感想

グロ描写も多めの和風ダークホラー

『柘榴ノ地獄』はグロ描写も多めの和風ダークホラーになっています。人の命が非常に軽く、妖怪なども登場するため多くの命が失われます。シビアな世界の中で生きる蟻助とゆゆ子の絆がどうなっていくのか二人は生き延びていけるのかが一つの見所です。

駆け落ちのように逃げ出し、死に瀕した二人が助かる方法が、ゆゆ子が帝の手のものにさらわれることであり、蟻助は記憶を失うような危険な行為であることもポイントです。無力なものは無力のままであり、相応の対価を支払わなければ何も手に入らないという世界観を支えています。

弱いものがどう生き延びるのか、どのように成長していくかが物語の出発になっていて、今後の蟻助の成長に期待が集まります。自分自身の脳を破壊するような思いきった決断をする人物のため、その狂気じみた行動力が物語にどう影響していくか読めない部分にもなっています。

グロ描写と美人美少女のメリハリも特徴に

『柘榴ノ地獄』の舞台はちょんまげ姿の男たちが登場する時代で、蟻助を差別する関係上非常にむさくるしい男が多く登場します。男たちはあっさり殺されたり病気で死に掛けたりするのですが、そんな描写に胸が少しすっとする部分があるのも特徴です。

画面がむさくるしい男とグロシーンで埋まることも多い分、ヒロインのゆゆ子や、蟻助が花街で出会うコピ、紅雲太夫の美貌が引き立つ形になっています。蟻助も美少年として書かれていますが、キャラクターの書き分けがうまく、より華やいで見えるのです。

和風美人や和風美少女を書き分けるのは難しい部分もあり、そこだけでも十分に評価できる魅力になっています。それぞれが悲劇性を背負っているため、凄惨さが美しさを引き立てる要素になっているのも特徴で、不幸な美少女、美女好きにはかなりつぼに刺さる内容になっています。

敵が強大で先が読めないのもポイント

ゆゆ子をさらったのは帝の手のものであり、蟻助からすれば雲の上以前に高貴すぎて手が届かない存在です。蟻助は生き延びるために記憶を失っているためゆゆ子の名前なども覚えておらず、帝からは一方的に狙われる立場になります。

帝は強力な妖怪を使役していますが、蟻助には後ろ盾もなく、教養など武器になるものもない状態です。なぜ蟻助が狙われるようになったかも不明ですが、半ば命を狙われるような形になっていてどのように帝に対抗していくのか、ゆゆ子との記憶を取り戻していくのかも予想がつかない状態になっています。

蟻助の武器となりえるものは、ゆゆ子と過去に築いたつながりであり、ゆゆ子へプレゼントした柘榴の簪を額に突き刺して得た異形を見破る能力程度です。怪力程度で補えるレベルを超えているため、先が読めない面白さがあるのです。

まとめ

『柘榴ノ地獄』1巻は物語が進む背景を描写し、その物語が動き始めたところで次巻以降に続いています。弱いものはただ死ぬだけといった厳しさがあり、ゆるゆるな漫画に飽きた人をひきつける魅力があります。ただし、人が死ぬシーンだけでなく虫が大量に登場するなどグロシーンもあることから好みが分かれるのも事実です。

それでも先を読みたいと思うのは、世界の底辺で生きる蟻助が見つけた希望の存在であるゆゆ子との絆がどうなるか知りたいと思うからです。どうしてゆゆ子を好きになったのかがしっかりと描写されているため、せめて一つ位は報われて欲しいと思ってしまうのです。

1巻時点で蟻助は記憶を失っていて、記憶がどうつながっていくのかもわからない状態になっています。悲劇的な結末を予感させるような要素すらあります。それでも読みたいと思わせるストーリー性がある漫画はなかなか出合えないので、どうしても気になってしまいます。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆ ★8

月10冊程度、年間100冊超の漫画を読むフリーライター。非定期で友人と百合漫画を語る会を開きますが、ジャンルは不問で何でも読みます。

Pocket
LINEで送る