ピーター・グリルと賢者の時間 : 1 (アクションコミックス)

『ピーター・グリルと賢者の時間』は書店で見かけてタイトル買いした本になります。賢者の時間と聞いて連想するもの、それは男性に訪れる賢者タイムだからです。

賢者タイムとは男性が性的なアレやコレをした後に不意に訪れる冷静な瞬間のことです。まさか、そんな危険球を投げてくる本があるわけが……いや、ありました。

冷静に解説などを読んでみると本当に賢者タイムを指す内容だったため思わず購入し、今に至ります。どこまでギリギリの内容になるのかという興味があったのは隠すまでもありません。

あらすじ

ピーター・グリルは同じギルドの先輩と結ばれるために、武闘大会で優勝し世界一強い男になります。世界一になれば先輩の父親も結婚を認めてくれるはずでした。

しかし、世界一の強者になったことで、ピーターは様々な種族の人間から子種を狙われることになるのです。武闘会は武力を諸国に示すだけでなく、優秀な血筋をアピールする意味合いもあったのです。

かくして異種族から体を狙われ、関係を持つことになったピーターは、賢者タイムの中で考えることになります。「どうしてこうなった」と。ピーターは憧れの先輩と本当にハッピーエンドを迎えられるのでしょうか。

感想

史上最強の男が巻き込まれる子作りコメディー

『ピーター・グリルと賢者の時間』の最大の特徴は、最強ゆえに争いの種になってしまうというシチュエーションコメディーであることです。しかも奪い合うのはピーターの子種になっているため、完全にギャルゲーかアダルトゲームのシチュエーションになってしまっています。ライトノベルでも良く見る展開です。

ポイントになるのが、実際に一線を越えてしまうことです。一線どころか、二線も三線も越えてしまいます。ピーターは強い男の子種が欲しいというシンプルな原理に突き動かされた女性たちに猛アタックを受けてしまい、結局は弱みを握られまくってしまうからです。

一線を越えなければ賢者の時間も訪れないわけですが、状況的に押し切られてしまうのもわかるような状態になっているのが物悲しいところです。男の悲しい性、あるいは非常になりきれなければこういった結果になるよなぁと同情してしまう部分も多いのです。

内容が内容なのにギャグに全振りする潔さ

扱う題材が題材なだけに、読者の多くが期待するのがウッフンでアッハンなシーンのはずです。しかし、『ピーター・グリルと賢者の時間』はそのエロい妄想を全力で切り捨てています。エロ目的で購入しようとすると、全力でフェイントをかけられます。エロさよりもKENZENさが目立つ構成になっているためです。

性的な描写はほとんどなく、ざっくりと省略されているのが理由です。事が起きる前と事後の描写派っても、真ん中の最中がすっぽり抜けています。しかも事後にピーターは完全に賢者の時間に突入してしまうため、余韻も何も残らないのです。

結果的に目立つのは、女性キャラの健康的なお色気などです。しかし、性的な描写を抑える関係上乳首などの描写まで削られています。ボディーにメリハリのあるキャラはうまく胸を隠すなど工夫がされているため、タイトルで釣られた読者を全力で罠にかける攻めの姿勢が面白い作品になっています。

股間にエンチャントなどパワーワードが満載

『ピーター・グリルと賢者の時間』がエロくならない理由の一つが、言葉遊びの巧みさです。股間にエンチャントなどパワーワードが頻出するため、笑ってしまってエロどころの話では無いのです。エンチャントは『付与』の意味がありますが、タイトルがタイトルだけに何をエンチャントされるかも容易に想像がついてしまいます。

エンチャントされることによって起きる問題もしっかりと書かれています。なぜなら、男性は勃起がおさまらない状態で6時間以上経過してしまうと組織が壊死して使い物にならなくなってしまうからです。わりとしゃれにならない状態になります。ピーターのナニがどうなるかも注目のポイントです。

様々な作品のパロディーやオマージュもちりばめられているため、笑いどころやツッコミどころが絶えないのも作品の特徴です。ピーターが所属するギルド名が『ヤケッパチ』だったり、町の名前が『パンナコッタ』だったり『カルボナーラ』だったりします。誰が名前をつけたのかと問いたくなります。

まとめ

『ピーター・グリルと賢者の時間』はタイトルで釣られた人間を全力で笑い殺しにかかるギャグ作品でした。シチュエーション的にもギャグですが、まさかエロを完全に捨ててくるとは誰も思わないはずです。女性キャラのエロい発言もありますが、後ろめたさがないため色気がすっぽり抜けてコメディーになっています。

後ろ暗いところや駆け引きがあるからこそ艶が出るのかと思わず別な面で賢者タイムに突入しそうな勢いですが、基本的にそんな哲学的な話ではなく、素直に笑える漫画になっています。ただし、ピーターに同情してしまう男性はある意味辛い思いをするかもしれません。

余りにギャグのキレが良かったので、作家応援もかねて紙と電子の両方でそろえて読み比べることにしました。お財布は軽くなりましたが、布教のための対価と思えば安いものです。新年早々笑わせてもらいました。腹筋にダメージを与えたい方には是非おすすめです。

オススメ度:★★★★★★★★★★ ★10

月10冊程度、年間100冊超の漫画を読むフリーライター。非定期で友人と百合漫画を語る会を開きますが、ジャンルは不問で何でも読みます。