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ロマンチック-山本崇一朗(裏)短編集- (少年サンデーコミックス)

2018年冬にBS11等でテレビアニメ放送の「からかい上手の高木さん」の作家である、山本宗一郎さんの短編集が2冊発売されました。「恋文」と「ロマンチック」です。

「恋文」は、ゲッサン他で発表したヒロインたちを集めた作品です。ピンクの背景に、学ランの少年とセーラー服の少女と恋文が描かれたデッサンで、可愛い表紙です。

「ロマンチック」は、未公開作品を含む秘蔵の読み切りを集めた作品で、月がでていて、裏というだけあって、怪しい表紙です。漫画の画質もリアルで、「からかい上手の高木さん」からは、想像できませんでした。

あらすじ

その日はきれいな満月でした。仕事が上手くいっていない上に、彼氏にはツボを8個売りつけられ、その彼に逃げられた女性が、自殺しようとします。

ところが、二階に住んでいる青年に、「今日自殺しようとすると苦しんで苦しんで、結局、生き残ってしまうからやめといた方がいいね」と言われます。

彼は、毎日やってきて、同じことを言います。しかも、彼は、悪魔を呼びだしたいといいだします。(ロマンチックより)短編6話とおまけが2話です。

感想

日常の中にある非日常が面白いです

物語の登場人物は、何処にでもいる一般的な人達です。美人でも不美人でもない女性だったり、ちょっと太めの青年だったり、大根と大山くんが嫌いなセーラー服の少女だったり、兄に嫉妬する弟だったり、他の作品なら、脇役のようなキャラクター達です。

けれども、彼らの日常は、個性的です。女性は、自殺志願者だったり、青年は頭の上から女の子が落ちてきたり、少女の嫌いな大山君は大根ドロボーの犯人だったり、弟と兄は、双子で、テストで替え玉しようとしたり、誰もが経験する確率は、かなり低いです。

彼らの行動は、非日常的なのですが、それは、それなりに理由があったりします。それが、作品の面白さに繋がっているようです。主人公たちの性格も、人間味があり、どことなく憎めません。そんな素朴なところが魅力的だと思われます。

日常の生活の中の滑稽さが面白いです

一方、共感できる作品もあって、「この夏」や、「ボクらの友情戦記」は、少年・少女なら誰でも、よく似た経験があるのではないでしょうか。異性にモテようと、嫌いなことを克服しようとしたり、友情だとかいいつつ、自分勝手だったり・・・。

その落ちも、なんとなくお約束で、それでも笑えます。水戸黄門を連想させられます。2作品とも小学生が主人公で、(女の子もそうですが、)男の子って、調子いいなぁっという感じです。彼らの背負うランドセルも懐かしいです。

風景も、そんなにオシャレではなく、田舎道が多いです。山本宗一郎さんは、香川県の小豆島出身だそうです。この物語の主人公達の住んでいる町は、彼の育った町がモデルになっているのでしょうか。(女性や青年の話の舞台は、街っぽいです。)

力のある作品ばかりなので面白いです

この短編集の作品は、山本宗一郎さんの思い出の作品ばかりです。「ロマンチック」は、はじめてネームが通った作品で、「スズキと大山」は、ゲッサン新人賞に出した作品です。最初の作品らしいしっかり感のある構成で、感心します。

また、「歯は上に投げるもの」は、第33回 イキマン 受賞作品で、「この夏」は、第59回 ちばてつや賞ヤング部門 大賞作品。「ボクらの友情戦記」は、第27回 GET THE SUN新人賞 佳作作品で、受賞作品という、つわものぞろいです。

山本宗一郎さん本人が描いたことを忘れるくらいの作品もあり、昔からの読者であれば、懐かしいものばかりです。名前をかえて「からかい上手の高木さん」に流用しているキャラクターもいたりします。マニアには収集したい一冊です。

まとめ

彼らを動かすのは、淡い恋心です。また、友情だったりします。そして、それらが、心にすっと入ってきます。誰でも持っているトキメキだからでしょうか。いつの間にか恋していたり、なんとなく友情が深まったり、感情の表現の、淡泊ところが、山本宗一郎さんの作品の特徴に見られます。

「ロマンチック」短編集は、画風もストーリーも少年漫画らしい作品です。故に、今の作品しか知らない人は、ビックリするかもしれません。どちらかというと、男くさいです。それでも、読み進めていくと、不思議な味わいがありました。

以外な展開が売りの作品だと、繰り返し読んでも、意外性に欠けて、面白さが落ちることがあります。けれど、この作品達は、最初に読んだ時に気が付かないことに出会ったりして、繰り返し読んでも面白さが増します。まるで「するめ」のような作品集です。

オススメ度:★★★★★★★☆☆☆ ★7

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