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スロウスタート (1) (まんがタイムKRコミックス)

「スロウスタート」は体調の問題から高校を受験することができず、一年遅れで高校生活を始めた一之瀬花名を主人公とした「人とは違うテンポ」の物語です。

出だしが遅れていることで、普通でないという不安や自信を持てない状況と折り合いをつけつくらす主人公が印象的です。ちょっとした失敗や挫折、人と違う不安を抱えながらも、友人関係に恵まれてゆっくりと進んでいく姿を描いているのが特徴です。

分類としては日常系の4コマで、全体的にふわっとした感覚で明確なオチなどがなく、ゆるゆると進行していきます。絵柄のかわいらしさもさることながら、脱力するようなギャグが多めになっているため気を抜いて読めて癒される4コマになっています。

あらすじ

主人公の一之瀬花名は高校受験時にインフルエンザにかかってしまい、高校浪人という珍しい体験をしてしまいます。1度受験ができなかったことがトラウマになっており、ほぼ1年間引きこもり生活をした後に高校生活を始めたのです。

自分に自信がなくなってしまったものの、周囲の友人関係に恵まれながら、少しずつ前に進んでいきます。ただし、受験の件はトラウマで自分の年齢が周りよりも1歳上というのもコンプレックスの種です。

結局そういった事情を打ち明けられないまま、ゆるゆると高校生活は過ぎていくのです。取り立ててドラマはなく、女子高生たちのにぎやかで穏やかで、少しおかしな日常を切り取った4コマ漫画で、それぞれのキャラがマイペースなのも特徴になっています。

感想

人を傷つけようとする人のいないやさしい世界

主人公の花名を中心にお話は進んでいきますが、基本的に他愛のない日常を描くものでドラマ性などは薄くなっています。ギャグ要素もあるものの、一拍おいて「あれ?」と思うようなほわっとしたものが多く、全体的に毒やとげが少ないのが特徴となっています。一応毒舌な女教師も登場するのですが、主人公の友人が猛アタックをかけていてクールなのがよいと評価される具合です。人を傷つけようという悪意を持った人物が登場しないため、物語自体がとてもやさしい空気に包まれているのです。

ギャグの切れなどもない分物足りなく感じる人もいるかもしれませんが、独特の中毒性があるのが特徴です。キャラクター全員がマイペースで、それぞれを振り回したり振り回されたりもしますが、みなおおらかに受け入れているのも魅力です。おおらか過ぎて底が見えないキャラクターも多くなっています。ぶつかり合いがほとんどないため、ストレスがかからないのです。絵柄自体もかわいらしく、非常にロリ度が高い内容になっています。

高校生という設定ではありますが、もう少し年齢が下に見える人もいるかもしれません。お色気担当キャラもいますがそこまで露骨ではなく、胸が大きいことが強調されている程度です。あまり露骨過ぎるエロが苦手という人にもオススメで、ソフトな萌え要素が多めになっています。1巻は登場人物はクラスメートとの交流が中心で、非常にこじんまりとまとまっています。話が広がり過ぎない安心感もポイントといえます。

花名の傷つきやすさや自信のなさに共感

花名は高校浪人を経験しており、1年間を無駄にしたという意識が非常に強いキャラになっています。ことあるごとに落ち込んだり、ちょっとしたきっかけで泣いてしまったりと浮き沈みが激しい部分があります。人との交流から遠ざかっていたこともあり、コミュ障の気もあります。人は誰でも程度の差はあれど、自分と他人の差が気になってしまうものです。コンプレックスを抱えている人も多く、花名の「他人との違い」に関する思いは非常に共感を呼びやすいのです。

ちょっとした事で落ち込む姿に自分を重ねてしまったり、悪いことを考える姿を笑えない人も多いはずです。劣等感だけでなく、自分のプライドや見栄が原因で人に言えない秘密を抱えた状態になっているため、いつ自分が浪人した経験があることを友人たちに告白するのかも見所になっています。1巻時点ではこころの距離を近づけることが基本の流れになっていることと、友人たちが細かいことを気にしないマイペース人類が集まっているため、自分の秘密を打ち明けるまでにいたっていないのです。

読者としては花名の成長を見守る心境になることが多いはずで、ゆっくりではあるものの前を向こうとする姿に感じるものがあるはずです。ただし、たまに努力をサボったり、あっさり挫折したりもします。がんばってもなかなか長続きしない飽きっぽさや体力のなさも花名の個性です。外出用の服の少なさなどにも共感できるようになったら、少し自分のことを見直した方がよいかもしれませんね。

ほんのり香る百合の要素をどう受け止めるのかもポイント

主要な登場人物が全て女性で、男性は花名の父親くらいしか出てこないのもポイントです。父親自体もあまり出番は少なく、基本的に女子同士の会話で構成されているのも本作の特徴です。あからさまなギャグ要素を抜き出した百合要素と、ほんのりとした百合要素が混じっているため、男女の恋愛を中心に読みたい人はちょっと物足りなさを感じる可能性があります。

主人公に好きな人がいるわけではなく、女をたらしこむのが特異な女ジゴロの友人と、その友人にすっかりなついてしまっている幼馴染が百合要素の中心です。主人公に関しては恋愛云々よりも自分のことに一杯一杯ですし、他のキャラたちの関係も一名を除いて恋愛よりも好意といった感情表現に抑えられています。女ジゴロがクール系の毒舌教師を口説いたりもしてるのですが、これを本気と見るかもポイントになります。もともと作者の篤見唯子先生は同人界隈で有名で、百合要素の強い作品も数多く発表してしまいます。

作者の趣味といえばそれまでですが、そういったカラーがあるのは抑えておきたいポイントです。もっともレーベルが「まんがタイムKRコミックス」なので、逆にしっくり来る人も多いはずです。媒体的に若い女の子しか出てこない作品が多く、アニメ化された作品なども数多く連載されているからです。男を見ること自体がストレスになるという人にもオススメで、恋愛のドラマ性を重視していないのも面白いポイントになっています。

まとめ

「スロウスタート」は主人公の立場などに特異な部分はあるものの、ドラマ性は薄く、かわいい女の子同士のゆるいやり取りを楽しむがメインの4コマ漫画になっています。男性キャラや不要な毒舌に、複雑な背景などはなく、キャラはぶつかり合うよりもお互いを受け入れてたまにあさっての方向に走っていきます。頭を使う要素が完全に切り落とされているため、何も考えずに読めるのがポイントです。何も考えずに読めるからこそ、時折くる花名の感情の起伏が胸に迫りやすくなっているのです。

そして、すぐに心が折れたり、挫折したりするのもお約束の展開となります。それを支える周りのキャラたちの暖かさも魅力になっています。とにかく癒されたい人にオススメで、むさくるしい男など見たくないという人には最適です。恋愛要素はほのかな百合程度で、冗談で言っているのか本気なのかわからないのが基本になります。花名以外は極端にポジティブなキャラクターが多く、めげないキャラクターが中心なのでそのバイタリティにも感心させられます。

母性が強いお姉さんキャラや年齢異常に幼く見えるロリキャラも出てきます。萌え要素としていつもタイツをはいている子がたまたま素足になるシーンなど、フェチ心をくすぐる健康的なシーンも存在します。かわいい物好きの気持ちをくすぐる構図も多く、計算された魅力を感じるのもポイントです。見えそうで見えないアングルも良く使われるため、足フェチ気味な人にもオススメです。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

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