DINERダイナー 1 (ヤングジャンプコミックス)

グルメ系の漫画は一通りチェックする習慣がついているのですが、書店で気になった本の一つが『DINERダイナー』です。

殺し屋専門のダイニングというコンセプトが引っ掛かったのもあるのですが、タイトルが何を意味するのか気になったというのもあります。

タイトルについてしばらく考えてから気づいたのが、英語の『die』です。die=死。ディナーの意味を掛けているのは明らかです。死者が働くのか、死を料理するのか、ネーミングの意図を知りたくなったのです。

あらすじ

オオバカナコは自分の名前にコンプレックスを持ちながら、自堕落な日々を過ごしていました。ある日出来心から闇サイトのアルバイトに手を出したことをきっかけに、命を商品として売られることになってしまいます。

カナコの命を購入したのは殺し屋専門ダイニング『キャンティーン』のシェフ・ボンベロでした。殺し屋相手だからこそちょっとしたミスで命がなくなる、そんなダイニングのウェイトレスとしてカナコは買われたのです。

あくまで人間として生きたいと願うカナコは度々ボンベロとも客ともトラブルを起こしながら、つながった命を守るために奮闘するのです。

感想

命の価値が非常に軽い裏社会が舞台

『DINERダイナー』は命の価値が非常に軽い裏社会が舞台です。実際にそんなに殺人者がいれば警察などの介入がありそうなものですが、法律や警察といった存在が基本登場しないのがポイントです。あくまで闇の中で完結するため、カナコは日常的に人が死ぬ世界から抜け出せない状態になるのです。

命の軽さはカナコの扱いにも現れています。最初闇サイトのバイトで犯罪組織に捕まったカナコは、全裸にされた上で人身売買にかけられます。しかもカナコは顔を殴られたことが原因か売れ残ってしまい、山奥に埋められて処分されそうになります。臓器売買などにも価値が認められていないと暗に示唆されているのです。

カナコが生き埋めにされかけるシーンは、この漫画がリアルを追及する漫画ではなく、フィクションとして別の何かを見せることが目的だとわかるシーンでもあります。そして、人を娯楽のためだけに殺す人間がいるということもうまく表現されているのです。

反抗的なカナコの態度に先が読めなくなっていく

面白いと思ったのが、カナコが積極的にボンベロに逆らうシーンがあることです。普通であれば、自分がいつ死んでもおかしくないような状況におかれれば反抗心もなくなりそうなものです。しかし、カナコの場合はあくまで人間としての扱い求め、自分を買ったボンベロにも反抗していくのです。

重要なのは、カナコはトラウマになるような事件があってから自堕落な生活に沈んでいったことです。自分の人生に不満があり、決断にも後悔があります。だからこそ、後悔を抱えたまま死ぬよりは言いたいことは言って生きたいという方向にシフトしていくのです。

カナコはボンベロだけでなく、店の客として訪れた殺し屋にも反抗していきます。反抗したら即殺されそうなものですが、それでも命をつないでいくのが本作の見所の一つです。また、理不尽な命令には逆らうものの、スカート丈の短いウェイトレス服はしっかり着るなどわきまえるところはわきまえているのもポイントです。

ボンベロとカナコの力関係も見所の一つ

ボンベロはカナコをいつでもかえが効く『物』として扱います。あくまで所有物であり、必要であれば殺しても言いというスタンスです。行動にも容赦なく、必要であればカナコを殺してしまうような恐ろしさがあるのです。

一方で、カナコでボンベロの弱みを握ることにも成功します。交渉の中でボンベロはあくまで雇われシェフであり、オーナーが別にいると言うこともわかります。店の命運を左右するような『あるもの』を握ったことでカナコはほんの少しの余裕を取り戻します。

ただし、それを手放したらどうなるかがわからないのもポイントです。ボンベロが人間としてカナコを評価するような素振りがないため、優位が崩れたら一瞬で命を失う可能性すらあります。主要な登場人物間で命の奪いになるかもしれないスリルがこの作品の魅力にもなっているのです。

まとめ

「命をいただく」という仏教の考え方がありますが、『DINERダイナー」はその考え方を極端に誇張したもののように思えます。一方で、人間の尊厳や生など密度の濃い情報がつめられているのもポイントになっています。命の扱いは軽いもの、それが物語の本質と直結しているとは思えないのです。

人としての生き方やプライドを守るためにカナコが奮闘するのもポイントです。カナコがどんな理由にせよ生き延び続けるということは、そういった気持ちを踏みにじる意志がないことを証明しているようにも読めます。エロ・グロ・バイオレンスの要素が揃っているものの、しっかりとした芯がある気がするのです。

作者が描きたいものが本当は何か先を読んでみないとわからないので、先が気になる作品でもあります。カナコが一度死にかけているだけにタイトルも捉え方一つで意味が大きく変わります。単純なバイオレンス&料理漫画ではなく、様々な要素の読み解きの楽しさが味わえる漫画になっているのです。

オススメ度:★★★★★★★★★☆ ★9

月10冊程度、年間100冊超の漫画を読むフリーライター。非定期で友人と百合漫画を語る会を開きますが、ジャンルは不問で何でも読みます。