オリーブ!  Believe,"Olive"? (3) (まんがタイムKRコミックス)

文月ふうろさんの『オリーブ! Believe,”Olive”?』は、私が定期購読している「まんがタイムきらら」で連載されていた作品です。1巻と2巻も購入済みで、3巻の発売も心待ちにしていました。

女の子たちがイチャイチャする百合コメディとしても秀逸なのですが、序盤に張られた伏線が終盤にかけて解消されていくストーリーも見どころ。単行本で一気に読むことで、さらに面白さが増す作品です。

2巻があまりにも綺麗にまとまっていたため、「3巻まで続くと蛇足になるのでは…」という懸念もありました。しかし、そんな心配は杞憂に終わります。

あらすじ

高校1年生の月之宮スズが所属する手品部の先輩たちは、なんと本物の魔法使い。ですが、どれだけ非現実的な魔法を見せられても、スズは「タネがあるはず」と言って信じようとしません。

実はスズは、子どものころに魔法使いに会ったことがありました。魔法を信じたままでは彼女が人間社会に順応できなくなると考えた魔法使いたちによって、「魔法を信じない封印」をかけられてしまったのです。

しかし、魔法界の崩壊の危機に巻き込まれた際、「先輩たちと一緒に帰りたい」という想いが封印を打ち破ります。魔法を信じられるようになったことで、スズと先輩たちは初めて本当の仲間になれたのでしょう。

感想

スズの封印とともに解除された、作品のリミッター

あらすじにも書いた通り、スズにかけられた「魔法を信じない封印」は、2巻の終盤で解除されました。この封印があったため、仲良しであるはずのスズと手品部の先輩たちの間にも見えない壁が存在したのですが、3巻では心の底から打ち解けあっています。読んでいて恥ずかしくなるくらい、イチャつきまくりです。

特に顕著なのが、スズと、先輩のひとり・藤ヶ崎コニーの関係。今まで自分のことを「スズちゃん」と呼んでいたコニーに対し、呼び捨てにしてほしいとスズの方からおねだりをするようになります。そうして「スズ」と呼んだコニーと、呼ばれたスズの表情といったらもう……、ごちそうさまと言うほかありません。

また、ビジュアル面での進化も3巻のポイントのひとつ。スズたちの活躍によって魔法界の崩壊は免れたものの、その余波で人間界にも「空魚」などの魔法動物が現れるようになりました。満月の空を泳ぐ空魚たち。その幻想的な光景は、まさに魔法のようです。

物語の最終章を彩る、2人の新キャラクター

1巻と2巻を「第1章」とするなら、3巻は「第2章」、あるいは「最終章」と言えます。一度は区切りがついた作品を再開するにあたり、新キャラを投入するというのはよく見られる手法ですが、『オリーブ!』でも3巻から魅力的なキャラクターが新たに2人登場します。

1人目は、魔法世界の「カグヤノクニ」の首長・天神千歳。これまでも物語の要所で登場してはいたものの、人間界に起き始めた魔法の影響を調べるため、スズたちの高校の生徒として転校してきました。年齢の割にノリのいい性格ですが、禁呪に手を出した報いで不老不死になってしまったという過去もあわせ持ちます。

そして2人目は、アメリカからの留学生、リリィ・ナナ・クルス。彼女は、人間と魔法使い、日本人とアメリカ人という、二重の意味でのハーフです。お調子者で自分勝手な反面、スズとコニーのイチャつきを一歩引いて見ているときもある。きららの別作品に例えると、『ブレンド・S』の神崎ひでりのような子でしょうか。

未来に向かって歩き始める少女たち

3巻のテーマを一言で表すと、「未来」になると思います。2巻のように、世界がなくなってしまうといったハラハラした展開はない代わりに、来年に控えた先輩たちの受験、その先にある別れを意識させるシーンが描かれています。年ごろの女の子たちにとって、ある意味それは世界の危機よりも重要な問題かもしれません。

スズたち月之宮家は代々、人間界とカグヤノクニのバランスを保つ「守人」の役割を担ってきました。魔法を信じられるようになったスズもまた、将来は守人になることを決めます。使命感も当然あるのでしょうが、そうすれば先輩たちとずっと繋がっていられると考えていたのも本当のはず。

しかし、コニーが卒業後、アメリカの魔法大学に留学するつもりであることを知ってしまいます。4年経てば帰ってくると分かっていても、黙って笑顔で送り出せるほどスズもまだ大人ではありません。「時間を止める魔法は無いんですか?」というスズの言葉が、コニーにも、読者の胸にも刺さります。

まとめ

『オリーブ!』の作品全体のテーマでもある「信じることの大切さ」が、3巻ではより強調されていました。スズと仲良くなれたのだから、他の人間たちとも仲良くなれるはずと信じる魔法使いたち。卒業したらしばらくコニーと会えなくなるけれど、いつか帰ってくることを信じて守人の責務を全うしようと決意するスズ……。

現実の世界では、他の人を信じることができないばかりに、毎日多くの哀しい事件が発生しています。理想論だと分かっていても、みんながこの作品のキャラクターたちのようにお互いを信じ合えたらいいのにと、単行本を読み終えて感じたものです。

残念ながら3巻で完結となってしまいましたが、スズたち手品部の日常はこれからも続いていきます。特に、リリィも加えた最後の1年間は、今まで以上に賑やかになることでしょう。そんな光景を想像しつつ、筆を置きたいと思います。

オススメ度:★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:ましろ

4コマ好きのフリーライター。萌えかどうかを問わず、4コマなら何でも読みます。個人ブログ「まっしろライター」では、新刊コミックスの発売日前レビューも更新中。