とりきっさ! 7 (リュウコミックス)

同人時代からノブヨシ侍先生の可愛らしい絵には興味を持っていましたが、商業誌で連載しておられるのは知りませんでした。

漫画好きの古い友人に「雑誌で先生が連載している」と聞いて、ひとまず掲載誌のコミックリュウを購入したのです。

一読してみたところ、他のほんわか・ギャグベースの作品とは異なる、先生ならではの魅力が満載。さっそく最新刊を購入することにしました。

あらすじ

しがないサラリーマンのヒロカズと、獣人である”トリビト”のスズ・リン姉妹は、カフェ「とりきっさ」で様々な出会いをします。

トリビト姉妹の思わぬ過去や家族との再会を交えて、いよいよ物語は「人間とトリビトは共存できるか」という課題へ。

ヒロカズとトリビト姉妹は様々な策を講じ、島で今後とも平和にカフェを営み・両種族の架け橋となる方法を模索します。

感想

トリビト姉妹がとにかく可愛らしい

獣人とひとくちに行っても、完全に人間の姿をしているか・部分的に動物的要素があるかのいずれかです。この作品における「トリビト」は人間の姿をしており、感情の発露や本能を刺激されるようなことがあると、鳥の姿に戻ってしまいます。

メインヒロインであるリンは、ヒロカズに淡い恋心を抱いています。カフェのため、何よりヒロカズのために一途に努力する少女ですが、ドジで獣人の本能には勝てない少女。鳥の姿で感情を発露する姿がとてもキュートです。

リンの妹・スズも、姉の影に隠れがちではあるものの、努力家で優しい女の子です。感情表現豊かなところはやはり姉妹。ドタバタ劇のなかで描かれるトリビト姉妹の表情には、物語の本筋よりも強く引きこまれる要素を感じます。

スズ&リンの思わぬ家族との再会劇

「スズとリンは、どうして2人でヒロカズの元にいるのか」という謎の核心をつく出来事が起きます。それは、突然の姉妹の母の来訪。とりきっさメンバーの3人(1人と2羽)は非常に困惑しますが、読者としては非常に興味深く感じました。

姉妹の性格は母譲りであり、ドジっ娘属性の強いお母さんトリビト。しかし、家族がバラバラになった背景として、面白くもどこか哀しい物語が脇役たちによって語られます。父母の強さや家族の強さを感じる、印象的なエピソードです。

2羽の過去を知ったヒロカズも、トリビト姉妹を末永く守ると決意します。スズ&リンの父に「娘さんをください」と言ってしまうシーンは、思わず笑ってしまいます。この言葉には男女関係を超越した愛情が込められているのですが、いよいよ物語も佳境なのだと胸が熱くなるシーンです。

ほんわかとした雰囲気の中にある「ヒロカズの葛藤」

ヒロカズは兼業サラリーマン。会社員生活にも気を配る必要があります。その上、人間にその正体をひた隠す「トリビト」を雇っている身としては、毎日がドキドキ・ハラハラ。カフェのドタバタ劇の余波で上司に怒られてしまうというシーンには、感情移入してしまいます。

ところが、ヒロカズの二重生活にも転機が訪れます。それは直属の上司との関係がカフェを巡って変わっていく…というものですが、ヒロカズの努力が実っていく過程には、読者も一緒に喜びを噛みしめることができます。

ヒロカズの直属の上司も、とてもお茶目な性格をしています。スズ&リン姉妹の奮闘もあって、トリビトの存在を知らないままヒロカズたちの世界に魅せられていく様子が、コミカルかつ微笑ましく描かれています。こんな上司がいたらなあと思ってしまうキャラクターです。

まとめ

トリビトと人間をめぐる「異種族間交流」がテーマですが、現実の生活に照らし合わせられることが多数出てきました。シリアスな物語をここまで軽妙に描くことができるのは、先生の腕あってこそだなと思います。他の作品も気になりました。

主人公ヒロカズ自身の孤独が描かれる場面にも、社会人として私が普段感じている様々なストレス要因が隠れています。とはいえ、トリビトと人間の両者と広く交わっていくアグレッシブさは、ヒロカズを主人公たらしめているもの。勇気とは何か?を教えられました。

これまで獣人もののコミックはあまり読まなかったのですが、こんなにホンワカとさせられる漫画もあるのか…と感動しました。残念ながら一旦物語は幕切れとなるそうですが、先生独特の可愛らしいケモノ少女を引き続き見守りたいものです。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆ ★8

記事担当:秋