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アフターアワーズ(3) (ビッグコミックス)

この作品を知ったのは、とある騒動がきっかけでした。この作品の作者が「1巻があと5000部売れたら2巻をすぐ出せます」と裏事情をぶっちゃけたのです。

これについてネットでは批判の声が多かったですが、一方で、漫画の評価と売り上げが比例していない現状を嘆く声も大きく、同情する意見もありました。この騒動を知り内容が気になったため読み始めました。

肝心の内容ですが、”クラブミュージックをテーマにした大人の女性同士の恋愛”という百合漫画としてはトリッキーな設定です。結局全3巻で終わってしまったのでこれが最終巻です。

あらすじ

ついにレイヴ当日! しかし案の定、「とんとん拍子で大成功!!」 とはいきません。なんとケイのレコードが置き引きにあってしまいます。

幸いレコードは戻ってきたものの、数枚が破損している状態。「こんだけ無事なら十分よ」と気丈に振舞うケイ。皮肉なことにこの判断が更なるトラブルを引き起こします……。

果たしてレイヴは成功するのか……? そしてエミとケイの恋の行方は……? 異色の社会人百合漫画ついに完結です。

感想

初めてのレイヴでエミが見せた成長

何といっても最初の見どころはケイが主催するレイブシーンでしょう。つい最近までド素人だったエミは勿論、主催する立場ということでケイにとっても緊張のイベントです。開始前の準備シーンは文化祭の前のようで見ていてワクワクします。

ケイが主催するレイヴを中心メンバーとしてサポートするうちに、エミは人間としてまたVJとしても成長します。レイヴの最中ケイがとあるハプニングに見舞われるのですが、それに対するエミの行動はまさにパートナーという感じで頼もしいです。

読者としてもハラハラした分、エミがカッコよく見えました。エミの成長が実感できるシーンです。今までの頼りないエミが懐かしくもあり寂しくもありますが、やっとやりたいことを見つけてスタートを切ったんだなと感じました。

エミとケイの甘酸っぱいやりとり

この巻でもエミとケイのイチャイチャが楽しめます。すでにエミは彼氏と別れケイとは正式に恋人同士という関係です。そのせいか2人の会話も以前よりなんだか艶っぽく感じます。同じ言葉でも、友達に向けたものと恋人に向けたものでは意味が全然違いますからね。

特にお正月の2人のデートシーンは見どころです。女性同士、大人同士な上に既に一線を越えている2人ですが、まるで中学生カップルの初デートのような初々しさです。2人とも無邪気で可愛くて幸せそうで癒されます。

2人とも立派な大人ではありますが、エミの無邪気さとケイのいたずらっぽい笑顔は少女のよう。エミの無垢で純真な性格がケイの表情を和らげ、ケイの男勝りで子供っぽい所がエミの母性を引き出しているように感じます。

突き付けられる現実……エミとケイが出した答えは……?

詳しいネタバレは避けますが、この巻の中盤でエミはケイと連絡が取れなくなります。当然エミはケイを探しに出ます。そして物語の最終章に突入していくわけですが、ケイが失踪した理由が現実的で不条理でやるせないのです。

これまでエミは仲間に恵まれ、タイミングに恵まれ、苦労しながらも成長してたくさんのものを得ることができました。振り返るとうまくいきすぎているくらいの楽しい日々だったでしょう。ずっとこんな日々が続いていく……と思わせるような、どこか夢の中のようなふわふわした世界に、急に現実の冷たさが切りかかってきます。

この出来事によって、派手でかっこいいケイの人間らしい部分が垣間見えます。そして2人は大きな選択を迫られることになります。唐突な展開ではありますが、そこがまたリアルです。2人の選んだ道も納得できる選択です。

まとめ

この漫画の魅力の一つは、エミの抱えている悩みへの共感です。自分の好きなことがはっきりしていて実際に行動を起こしているケイと、自分のやりたいことが分からずあまつさえ職にもあぶれているエミ。ケイのそばにいて劣等感や自己嫌悪に苛まれる気持ちには非常に共感できます。

24歳という微妙な年齢も相まって切迫感や焦りもあるのだと思います。24歳なんて立派な大人だけど、「自分が本当にやりたいことってなんだろう……」と不意に考えてしまう年齢でもあります。同世代の方は勿論もっと年上の方でも響くでしょう。”四十にして惑わず”なんて孔子みたいなおっさんそうそういませんからね。

正直に言うと、これから面白くなるところと期待していたので終了してしまうのは残念です。しかし終盤の展開は現実にありそうな話なので、終わり方としては納得できます。エミとケイ、そしてクラブミュージックとの運命的な出会いを見ると「悩んでもいい、でもチャンスには恐れず飛びつこう」という勇気が湧いてきます。

オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆ ★6

記事担当:洞窟の魔人

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