星間ブリッジ 3 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ゲッサンでデビュー作を読んで、きゅっきゅぽん先生の絵柄が好きになりました。以降短編を追いかけていたのですが、日常に忙殺されて連載まではチェックできず。久しぶりの休みに、お気に入りの大きな書店へ。

対比色の使い方が見事な独特の水彩画は、先生のアイコンです。平積みされているコミックの表紙を見て、一目で「きゅっきゅぽん先生だ」とわかりました。

たちまち連載をチェックできていないことを思い出しました。相変わらず女の子の表情が可愛い…と思いながら、すぐにレジへと持ち込んだのです。

あらすじ

1936年の上海。日中間の関係悪化が進んでいるなかで、ハルは在中日本人として家族とともに暮らしていました。

そこでどこか寂しげな中国人の少年・シンと出会います。シンの父は絵画教室を営んでおり、ハルとシンは絵を通じて親交を深めます。

ところが、戦火はすぐそこまで忍び寄っていました。固い絆で結ばれつつあるハルとシンの運命はどうなってしまうのでしょうか。

感想

はつらつとした少女・ハルの魅力

物語の最初は、ハルの回想から始まります。生き生きとしたハルの表情にぐっと心を掴まれて、そのまま読み進めてしまいました。なまりの少ない博多弁で話す幼いハルの一挙一動は、可愛らしさと力強さを兼ね備えています。

好奇心旺盛でしっかりとした性格の幼いハルですが、すでに女性らしい柔和さや愛嬌を備えています。絵画教室へ通うことになった時のハルの心情表現に、ぱっと花が咲いたような明るさがありました。少女らしい新鮮な感情表現が際立ちます。

ハルはシンに対する感情が「恋心」だとは気づいていません。中国語の”兄弟”という言葉を一途に信じています。子供らしさと大和撫子の風格を同時に備えた、不思議な魅力のある主人公です。中国風の普段着に着替えたハルの姿には、思わずときめきます。

ハルとシンを巡る大人達の優しさ

ハルとシンを結びつけたのは、シンのお父さんの勇気ある行動でした。むっつりとして表情のないキャラクターとして登場しますが、実は様々な感情を抱いているキーパーソンです。ハルとシンの仲に戸惑う様子が、どこかコミカル。

ハルの両親も愛せる存在として登場します。ハルの交友関係を優しく見守る母と、娘のことがいつも心配な父。家族の絆という第2のテーマをしっかりと伝えてくれています。舞台装置として決して外せないのが、シン・ハル双方の家庭構成員です。

ボーイ・ミーツ・ガールものでは、しばしば大人が陰険なものとして取り扱われがちですが、この作品では一切ない要素です。子供同士の愛情を守れなかった大人の悔しさ・優しさのなかに、不純な気持ちを感じません。幼い恋の物語に没入できる構成になっています。

クラシカルな絵柄に「萌え」がある

きゅっきゅぽん先生と言えば、トーンは控えめ・繊細な線で描かれた可愛らしい絵柄が特徴です。80年代の少女漫画タッチや、当時まで現役だった大物漫画家のコミカルな表現を継承している、独特な画風の作家さんです。

先生の画風が時代設定にぴったり合うのはもちろんのこと、古さや読みづらさは一切感じません。現代風にマッシュアップしながら、20世紀のコミックの魅力を残しています。昭和初期の女の子や町並みを元気いっぱい・可愛く描かれていて、先生の魅力を堪能できます。

また、チャイナドレスを着た女性が何人も出てくるのですが、台詞がなくてもそれぞれに個性を感じます。ハルのお母さんがお店でドレスを着るシーンは、「ハルではなくお母さんが主人公でいいのかも」とすら思わせる美しさを感じました。この先生の画風がなくては実現しなかっであろう、印象に残るカットでした。

まとめ

日常の様々な人間関係に疲れると、恋愛と友情が入り混じった少年少女の愛に胸打たれるものがあります。自分にもこんな純粋な時代があったのかなと過去を振り返りつつ、「あの頃に戻って甘酸っぱい恋をしたい」と思ってしまいます。

昭和?平成の少女漫画には、ハッとさせられたり・萌えを感じたりすることも多かったのですが、当時の感動を思い出しました。時代に引き裂かれる少女の恋に深く感情移入し、現代にもやるせないことは多くあるということに気付かされます。

巻末は何やら不穏な状況で終わっていきましたが、ハルとシンの友情は男女の恋に変わるのか・それともすれ違ってしまうのか。早くも次の巻が気になります。きゅっきゅぽん先生の真骨頂がここに詰まっていると認識させられます。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆ ★8

記事担当:秋